ぐだぐだ
連載再開します。
カクヨムコンに合わせて星を入れていただき、ありがとうございましたm(_ _)m
・・・・・・・
『海に行きませんか? 調べてみたら、割と近いですよ』
日曜日の朝、七時。起床と共にスマホを見ると、何やら大量のメッセージが溜まっていた。僕以外の四人が様々なやり取りをしていたのだが、未読の最初は灯からのそんなメッセージだった。
海というのが今までの生活でほぼ無縁だったため、当たり前のように出てきたワードに戸惑う。
「海……ってどこだ?」
僕の行動範囲は狭い。買い物も遊びも近場で済ませるし、あえて自分から遠出することはほとんどない。海と言われても、どこのことを指すとか、どうやっていくとかが全く浮かばない。
ともあれ、続きを見ていく。
翼『いいですね! 灯さんが次に来るときには夏も終わってますし、今日のうちに行っておきましょう!』
怜『泳ぐの? 水着なの? 持ってないよ?』
葵『わたしも水着は持ってないよ。中学のスクール水着しかない。プールとか海とか行かないし』
灯『葵さんはスク水ということですね?』
葵『違いますから。っていうかわたしの部屋を漁ろうとしないでください』
怜『葵、律儀に状況報告ありがとう』
翼『水着買ってから行きますか? あたしもないですよ』
灯『言い出しておきながら、私も持ってません。家にはありますが。水着なしで、単純に海辺の散歩でもいいと思いますよ? シーズンは過ぎてますし』
翼『光輝さんを悩殺するチャンスを逃すわけにはいきません。散歩にしても水着は必要です。もっと積極的に光輝さんを野獣にして、あたし達に手を出してもらわなければ』
灯『四人分を満足させるのですから、性欲は旺盛のほうがいいですよね』
葵『二人は話をやらしい方にもっていきすぎ。光輝も見てるんだから自重して』
翼『むしろ光輝さんが見てないと書く意味がありません』
灯『翼さんに同意です』
葵『いい加減にしなさい』
灯『あ、ひどい。私だけ頭をはたかれました。近くにいるからって、手を出すのはいけません。光輝君、女同士だからって暴力はよくないですよね?』
翼『友達同士でいちいち暴力云々はあまり言いたくないですけどね』
灯『光輝くーん。まだ寝てますかー?』
葵『まだ六時半だし、寝てるでしょ。皆が起きてる方が変』
翼「休日でも一回早朝に起きるので」
怜『わかる。ところで、関係ないけど、今度葵の家でお泊まり会とかしたい』
翼『それもいいですね! 光輝さんは直接参加できないでしょうけど、ビデオ通話で参加してもらいましょう!』
怜『光輝に見られてるとちょっと恥ずかしいかも』
灯『十一時以降は男子禁制とかにします? 女子会ノリは、それはそれで楽しいです』
翼『それもいいですね! 女子女子したやらしいトークをたくさんしましょう!』
葵『わたしの部屋を猥談広場にしないでよ。花梨もいるんだから。集まるのはいいけどさ』
翼『妹さんにも正しい性教育をすべきだと思います(真顔)』
葵『性教育になんかならないでしょうが。真顔でもダメ』
灯『将来的にはラブホ代わりに使う部屋なんですから、猥談広場くらい良いではありませんか』
葵『ラブホ代わりはひどい』
灯『今、葵さんに頭を叩かれました。結構強めでした』
翼『葵さん、怒ってるようですけど、光輝さんと付き合い始めたら、自室ではエッチしないんですか? 灯さんの言ってることは間違いではないと思いますよ?』
葵『間違ってなくてもなんか嫌』
翼『愛の営みを行う部屋、と言えば良いですか?』
葵『そういうの恥ずかしいからもうやめてよ……』
灯『葵さんが赤面してて可愛いです』
葵『いちいち書かなくていいから!』
翼『どう表現したところで、年頃の男女はやることをやるものです。受け入れてしまえばすっきりしますよ?』
葵『二人はあけっぴろげすぎるんだよ』
怜『えっと、なんというか、翼の言いたいこともわかるんだけど、泊まるときにはお手柔らかにお願いしたいかも』
延々続くやり取りを見ているだけで、朝から楽しい気分になってくる。少々過激な部分もあるのだが、あまり深くは考えずにいよう。朝からあまり興奮するものではないと思う。
光輝『おはよう。朝から賑やかでいいな。ラジオ配信とかしたら、絶対面白いだろうなって思う。今後を楽しみにしてる。海に行く……のかな? 話がだいぶ変わっているようだけど。
僕から楽しみだと言うと意味深というか、やましさを隠しきれないところがあるんだけれど、提案してくれてありがとう。海なんて家族としか行ったことないし、皆と行けるのはすごく嬉しいよ』
翼『光輝さぁん! ようやく起きましたね! ささ、目覚めのキッスをあたしにくださいな! あたし達なら空間くらいは軽く飛び越えられますよ!』
灯『おはようございます。ゆっくり寝られました? 海、楽しみましょうね』
怜『目覚めのキスもいいし、目覚めのハグとかもしたい。というか。
朝目が覚めたときに光輝の寝顔が隣にあってほしい。それだけで私はその日一日を幸せ一杯にすごせる。
どうして光輝とは離ればなれなのかな? 光輝がいることが私にとってはあまりに自然で、隣にいてくれないことに違和感が募るよ。
特別なことをしてほしいわけじゃないの。ただ傍にいてほしい。無防備な寝顔を見せてくれたらいいなと思う。私も、光輝になら、素の笑顔も、能天気な無表情も、幼稚な寝顔も、全部さらけ出せる。
恥ずかしいけど、その恥ずかしささえも愛おしいよ』
葵『待って、怜、それ絶対に今書いた文量
じゃないよね? いつも書いてる詞か何か?』
怜『詞を意識して書いてる日記を抜粋した』
葵『怜、普段は比較的おとなしいかもだけど、手紙とか書かせたら大変なことになりそう』
怜『あ、それ、いい。手紙もいいけど、交換日記、したい。光輝、ダメかな?』
翼『待ってください! それを二人きりでやるなんてずるいです! あたしもやります!』
灯『光輝君も私達と遊んでるだけではいけませんから、単純に手紙を書いて渡す方が良いのではないでしょうか? お返事は短めにいただくとして』
翼『それでもいいです』
怜『残念。交換日記は密かな憧れ』
葵『怜はレトロな趣味だね。けど、手紙とか交換日記は妙に憧れる』
なんというか、五人でやり取りをするとどんどん話が別の方向に進んでいく。なんの話をしていたのかわからない。
ただ話すのが目的で、何か決めたり情報交換をしたいわけではない。そういうやつなんだろう。
僕は眺めているだけでも楽しい。こんな風に、ずっと一緒にやっていけたらいいなと、思ってしまってはいる。
「……誰も手放したくはないよなぁ」
本音は、そう。
それができるのか? 本当にしていいのか? というのは、まだわからないのだけれど。
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