06 チェイス.

「あったあったっ」


 いた。両肩に小麦粉抱えてるひと。


「ごめんなさい待って。それ。それ待って。あっ」


 ドリフトの慣性に耐えきれなくて、男の人が入ってる箱、吹っ飛んじゃった。


 それよりも。


「その小麦粉。小麦粉じゃなかったから。ちょっとください。後でちゃんと新しいやつ受取所に運んでおきます。ごめんなさい。それ。牛ちゃんと豚ちゃんに食べさせる、だめ」


 息切れでうまく喋れない。


 でも伝わったらしく、荷台に小麦粉、じゃなかった新素材を置いてもらえた。


「ありがとうございます。ごめんなさい。次はちゃんと確認しますので」


 やさしい人なので、いえいえ、違いが分かって良かったですという言葉をいただけました。


 パトカーのサイレン。


「あれ、やばいかなこれ」


 箱から男の人が飛び出して荷台に飛び乗る。


「やばいです。見つかりました。たぶん、新素材の中身が小麦粉だと分かってあなたの倉庫に」


「うわあたいへん。ちょこっとだけ急いでいますので。それでは失礼します」

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