第6話:天罰
下界を見ていたロキは思いっきり不機嫌になった。
醜い双子が、不遜にもロキの聖女になると宣言したのだ。
自ら聖女になると口にするとは、思い上がりもはなはだしい。
その言葉は、ロキが馬鹿で双子が聖女を陥れたことにも気が付いていないと言っているも同然で、いや、そもそも天罰が下されている時点で、見抜かれている。
それでも聖女になれると言い切るのは、よほど自分の容姿が聖女以上で、聖女を殺しても許されるという自信があるのだ。
「その言葉忘れるなよ、思い知らせてくれる」
ロキの怒りは天を衝くほどで、抑えきれずに周囲を火炎が渦巻いていた。
聖女オリビアを焼き殺しそうになってしまい、急いで遠くへ移動させたくらいだ。
ロキの怒りに気が付かない愚か者達は、急ぎ処刑台と祭壇を整えて、王族の処刑と聖女選別の儀式を行おうとした。
だが既に飲み水すら手に入りにくくなっていた民は、蓄えを全て使って黒油で濁った水を買うか、その黒水を手に入れるためにコサック侯爵家の奴隷になるしかなかった。
「全ての元凶は王家にある。
だから私は救国のために泣く泣く主家である王族を処刑するのだ」
王族は全員吊るし首にされた。
双子はもっと残虐な処刑をして民を満足させようと言ったが、コサック侯爵は民の雰囲気を察してそれはやらなかった。
王族を処刑を見に集まった人間は、国民のごくわずかしかいなかった。
多くの民が、黒油の火で溶かした汚れた水を飲んで、激しい嘔吐と下痢に襲われ、半死半生で寝込んでいたのだ。
国民の激しい怒りは、王家だけでなくコサック侯爵家にも向けられていた。
「「皆私達を崇めよ、私達が聖女となってお前達を救ってやる」」
そんな国民の雰囲気に気が付かず、双子の悪女は自信満々に宣言した。
自分達が神に選ばれることを全く疑っていなかった。
愚かとしか言えない馬鹿げた話だった。
「「ぎゃああああああ」」
ロキはようやくその怒りをぶつけることができた。
双子の悪女を醜悪な怪物に変化させたのだ。
アメーバーのような不定形で、グニャグニャと身体を収縮させるだけの、見るもおぞましい姿の化け物だった。
化け物となっても、記憶は失われなかったが、恐ろしい飢餓感に苛まれ、本能で父親を捕まえ身体に取り込み、徐々に酸で溶かして吸収する。
「「「「「うわぁああああ、化け物だぁああああ」」」」」
集まっていた民は恐怖に逃げ出した。
余りの恐ろしさに本能的に逃げ出してしまった。
だが、その心にロキの言葉が伝えられた。
「その化け物を斃せ、身体を斬って喰らえ、喰らって殺せば許してやる」
邪悪なロキの人間同士を喰らい合わせる遊びだった。
人間と元人間が生き残るために殺し合って喰らう。
これほど見ていて楽しいショーはない。
そしてこれがお気に入りの聖女を苦しめた人間への罰だった。
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