trading ability game(トレーディング アビリティ ゲーム)

梨聖 晞咲斗

異能者達の団欒

異能の始まり…ボールを拾ってしまった。


これはある時俺が拾ったアビリティボールにより始まった、能力の奪い合いのゲームである。


「た、大変だ…早く救急車を。」


偶然通りかかった道で事故が起きていた。どうやら道に飛び出した少女を救おうと飛び出した男性が引かれてしまったらしい。


「だ、大丈夫ですか…。」


車を運転していた男性が降りてきて話しかけていた。僕はその様子を見ていた人達に紛れて見ていただけだった。


「事故か…。ん?」


事故現場近くの歩道に透明なボールが落ちていた。大きさはゴルフボールぐらいの大きさだ。


「あの人の落し物か?よし、拾って届けるか。」


俺はその透明なボールを拾った。そしてボールを見てみた。


「すごく透明なボールだな…」


そのボールはものすごく透明でまるでボールが無いかのようにボールの先が見えていた。


「こんなボールもあるのか…おっと、持ち主に返さないと。ってあれ?」


持ち主だろう事故に遭った男性は既に救急車に乗せられて運ばれていた。


「まぁ、仕方ないか。このボールどうしようかな。」


俺はボールを手に取ったまま考えていた。捨てても良かったが、透明感が半端なく、捨てるのは勿体なく感じた。だからと言って持ち帰っても使い道がない。交番に届けてもただのボールだから捨てられるんじゃないか?持ち主が連れていかれた病院も分からないし…そんな事を考えていた時だった。突然ボールが消え始めていた。


「こ、これどうなっているんだ…ボールが消えた?」


手に持っていたボールは完全に消えてしまった。


「まあ消えたもんは仕方ない。そろそろ時間だし行くか。」


俺は友達と遊ぶ約束をしていたので消えたボールのことは気にせず集合場所へと向かった。このボールが後々起こる事の発端になるとはその時は思いもしなかった。


友達と遊び終えて帰り道。突然後ろから話しかけられた。


「ねぇねぇお兄さん?」

「ん?」


振り向くと高校生ぐらいの見知らない女性がいた。


「朝、事故現場でなんか拾わなかった?」

「事故現場?あ、あの人身事故の事ですか?」

「そう、でどうなの?」

「ボールを拾ったけど消えたよ。ってか君なんで俺があの事故現場にいた事知っているの?君あの現場にいなかったよね?」


俺は事故現場にいた人達を見たりしていたがこの女子高生はいなかった。なのになんであの事故を知っていたんだろう。


「ボールを拾ったんだ。ねぇ近くのカフェにちょっと一緒に来て。」

「はい?なんで君と俺が?」

「いいから。」

「お、おい。」


俺は何故か女子高生にカフェに連れていかれた。


「で、なんなんだ?」

「女子高生と話できるとか滅多にないと思うけどその反応は?」

「茶化すな。で、俺はなんで見知らぬ女子高生にカフェに連れてこられたんだ?」

「あなたが拾ったボール。すぐ消えたんでしょう。」

「あぁ消えたけど?」

「そのあと何か無かったかな?」


何かなかったかと言われてもな。友達とバッティングセンターに寄って連続でホームランを打った事ぐらいか。流石に20球全てホームランは自分でもびっくりしたけど。


「バッティングセンターで全てホームランにしたことか。」

「なるほどね。あなたのアビリティボールは体力強化かな?」

「アビリティ?何の話だ。教えろよ。」

「どうしようかな…アビリティボールというのはね。人に能力をくれる7色あるボールの事で色んな能力を秘めているんだよ。体力系が赤色、集中力系が青、瞬発力系が黄色、包容力系が緑、洞察力系が紫、そして黒が精神力系なんだ。あれ?私なんで話しているんだろう?」

「んで、あそこにボールが落ちていたのは何故なんだ?」

「それを言う義理は…アビリティボールはね、持ち主が亡くなったり、能力者同士の争いで負けたりすると体から出てしまうんだよ。あと、自分から出すことも出来るの。それを受け取ればその能力を得られるんだよ。普通人はひとつしかボールを受け取れないんだけど、交換ができるんだよね。あそこに落ちていたのは交通事故で亡くなった人が持っていたからかな?…なんでまた私は?」

「じゃあ最後に、7色と言ったが、あと1色はもしかして透明だったりするのか?」

「なんでそれを知っているの?あと1色は謎とされているのに?」

「そりゃあ俺が拾った色が透明だったからだよ。」

「お兄さん、それ本当?正直それマジレアなんだけど。だから私さっきから話しているのか。」

「透明はなんなんだ?」

「…透明は正直、私にも分からない。ただ特殊な力が宿るとされているんだよ。」

「特殊な力か。前の持ち主は何をしていたのか知っているのか?」

「…詳しくは知らないけど、今日見つけた時は人を助けたりしていたかな。後はなんか大当たりしていた。」

「人を助ける?もしかしてだが、そのアビリティボールは受け取った人によって能力が変わったりするのか?」


俺の想像が正しければ、前の持ち主の能力は未来視って所だろう。だとすると俺の能力とは違う事になる。


「…そうらしいよ。私も黒いアビリティボールを友達から貰った時、友達とは違う能力を得たからね。」

「その能力とは?」

「…友達は精神力系の年齢詐欺で大人になりすまして色んなことしていたけど、私に宿ったのは精神系の魅力強化だったから。」


なるほど、だからさっきから普通の女子高生なのに魅力的に見えてしまっている訳か。いや、美しくない訳でもないが、俺自身年下に興味が無い。


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