#35 ネタばらし
窓の外に浮かぶ大量のUFO群を目の当たりにした土岐が、口もとを押さえて息を漏らす。呆然と立ち尽くしたまま、じっと会社上空を凝視していると、
「――――――って、あれっ? 」
土岐は目をこすった手を窓辺にかけ、胡乱げな表情で夜空を睨みつけた。小さくて判別しにくいが、UFOの編隊は細かなドット絵――ユーフォー・アタックに登場する敵キャラと、よく似た造形をしているように見えたからだ。
「え、ちょっ……なんだってんだい、これ!?
窓を指さし、ぎこちなくふり返った土岐に、
「その通りです。プロジェクトマッピングの原理で、この会議室の窓ガラスにデモ映像を投射してみました。けっこうキレイに映るから、初見だと本物っぽく見えてビックリするでしょう?」
創平はゆったりとした足取りで土岐の隣に歩み寄ると、上機嫌な面持ちで素直に頷いた。
「これ、技術的にはけっこう簡単なんですよ。あらかじめ作っておいたデモを、
「えっ!? それ全部、創平くんが1人でやったのかい?」
「だったら良かったんですけどね。さすがに無理なので、久利生さんにも手伝ってもらいました。だけど、そのお陰でこれくらいなら専門職じゃなくても実現できるってことが、ちゃんと実証できましたよね」
淡々と説明し終わったタイミングで、夜空に浮かぶように投射していたUFOの編隊が、ふっと消失する。
「あれっ、消えちゃったけど……?」
「今のは起動用のデモ映像ですから。本番はこれからです」
創平の言葉に合わせて、妙に硬質な
(ん? これって……起動音? …………って、おいおいおいおい!)
土岐が思わず顔を綻ばせる。向かって右側の窓ガラスから左方向へ抜けるように、ゲーム起動時に表示されるトウア社の企業ロゴが表示されたからだ。
創平が土岐の肩をつつき、窓ガラスから離れるよう視線で促す。土岐が素直に数歩後ずさると、
「では、ご質問をうけたプロダクトアイデアについて、守破離の型を用いて説明していきたいと思います。まずは――『守』の部分」
投射された画像が切り替わって、白黒のドット絵だけで構築されたステージ画面が表示される。敵UFOの編隊から放たれる弾を、左右にしか動けない自機が自陣のトーチカで防ぎつつ、単発のビームで次々に破壊していくお馴染みの光景だ。
「あ、懐かし。これってオリジナルの1面じゃん……って、お、ぉお~~~!」
突如、ステージ画面が大音響とともにホワイトアウトし、多種多少のスクリプト(見る人が見れば意味のない構文だと分かったハズだ)がゲーム画面を浸食していくような演出が入る。
そして、
――The King o
テキストが表示された時間は数秒ほどだったが、そこに込められたメッセージは鮮烈だった。心を揺さぶられた土岐が、我知らず両手を握りしめたとき、
「まず最初に、
メッセージテキストがゆっくりと消えていき、四つ打ちのドラム音に併せて底上げされるように、新たなステージ画面が2人の眼前に形成・展開されていく。
もともとは真上からの
変化は見た目だけに止まらない。
同じステージ画面のフィールド上に複数の自機が表示されていて、飛来するUFOに向かって各々がビームを打ちだし、撃破する様子が映しだされているではないか。
「え、すっご……わ、なにこれ? マルチプレイなの?」
「はい。ここからが『破』になるんですけど、本作は複数人――今回は16人を想定していますが、みんなでひとつの画面を共有して、迫りくるUFOを撃退するような遊びを考えています」
創平がわざわざ
「それって、つまり……バトルロワイアル系のシューティングみたいなもん?」
「そうです、そうです。ただ、競う対象は生存順位ではなくて、得点になりますけどね。初代ユーフォー・アタックだって、いちばん白熱した競争要素はハイスコアだったでしょ?」
創平が解説している合間にも、画面は目まぐるしく変化していく。白黒のモノトーンだった画面が一変し、敵UFOの軌跡や爆発エフェクトがネオン菅の放電スペクトルに似た色調で演出され、色鮮やかな幾何学模様を夜空に描きあげていった。
(わ、綺麗。まるで打ち上げ花火みたい――)
土岐は相好を崩しながら、夢中になってその光景を眺めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます