音
暑い夏の昼間のことである。
その時期は梅雨入りしたばかりで雨だった。
二階の大きい部屋の奥の物置の押し入れが雨漏りをしているらしく、ぴちょんぴちょんと水音が聞こえる。
慌てて、荷物を全部出して見てみると、なるほど大きな染みが広がっていた。
どうにもそれが顔に見えて気味が悪いため、あまりそこには近付かなくなった。
梅雨が明けてから、そこの荷物を直そうと久しぶりに見に行った。
乱雑な荷物をのけて、二段になっている押し入れを覗く。
顔が見えた。
「ひぇっ」
はっきりくっきり私を見ている。
そろっと後ずさってから深呼吸する。
ごとん。
ナニカが落ちてきた音。
嫌な予感を押し殺して、恐る恐る覗く。
二段の上の段のとこに生首があった。
そして喋った。
「ヤァ」
やあ、じゃねーよ。
なんかイラついたので、手近にあったぬいぐるみを投げつける。
ぼすん、と音がして、生首が変な声を出した。
「ぐぇっ」
気付くともう生首はいなかった。
よほどぬいぐるみ攻撃が響いたのだろう。
それにしてもカエルみたいな声だったなぁ、と押し入れを覗く。
天井の染みは跡形もなく消えていた。
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