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 昔、男がおりました。会わないとも言わなかったが会おうともしない女の許に歌を送りました。


  秋の野にささわけし朝の袖よりも あはでる夜ぞひぢまさりける

  (秋の野の笹をかき分けて 朝露に濡れる袖よりも あなたに会わず寝る夜は より一層袖を濡らします)


 色恋を好む女から


  見るめなき我か身をうらと知らねばや かれなで海人あまあしたゆ

  (海松布みるめのない入り江と知らずに行く漁夫のように 相見ることのない私をつれないものと知らないのでしょうか 離れることなく足が怠くなるまで来られる)



【二十五段】

 昔、男ありけり。逢わじともいはざりける女の、さすがなりけるが許にいひ遣りける。

  秋の野にささわけし朝の袖よりも あはでる夜ぞひぢまさりける

 色好なる女、返し

  見るめなき我か身をうらと知らねばや かれなで海人あまあしたゆ

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