ヤキモチ


―――



「なぁ~?」

「………」

「辻村?」

「………」

「はぁ~……俺帰るわ。」

 突然ソファーから立ち上がる仲本を、俺は慌てて引き留めた。


「ちょっ……待って!」

「んだよ。」

「……ごめん。」

 仲本の袖を掴みながら上目遣いで見上げると、ため息を一つついてまたソファーに座った。


「何でそんなに機嫌悪いんだよ?」

「今日の雑誌の取材……」

「今日?」

「ほら、記者さんが……」

「あぁ、あの女の記者か。美人だったよな~」

 今日の雑誌の記者を思いだして仲本が表情を崩す。と同時に俺の顔がまた曇った。


「仲本、選ばれてた……」

「あ?」

「………」

 その時の事を思い出し、俺はますます顔を歪めた。


 もし彼氏にするなら誰を選ぶか?という俺達からの逆質問に、その記者は仲本を選んだ。テープも回ってるし他のスタッフやマネージャーもいたからかろうじて押さえたものの、心の中はパニックだった。


 そりゃ、仲本は格好良いし優しいし気配りも出来るし。良いとこだらけだけど……


 やっぱりショックだった。自分以外の誰かが、仲本を選ぶ所を見たくなかった……


「辻村?」

 仲本が名前を呼んできたのでゆっくり顔を上げると、こっちを見て微笑んでいた。


「俺が選ぶのは、お前だけだよ。」

「……っ!」

 優しい顔でそう言われ、俺は顔を赤くした。


「それでいいんじゃねぇの?」

 そっと仲本の手が自分の頬を撫でる。俺もその手に手を重ねた。


「……だね。」

「あぁ。」


 ゆっくり二人の顔が近付いて、やがて影は重なった……



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