第521話 占い師との面談④(メルキオール)
「……世界……平和……? ですか……?」
「はい! 世界平和です!」
数々の相談(依頼)を受けて来たであろう占い師のリードでさえ、クロイドの ”世界平和” という言葉に困惑しているのか、自分に言い聞かせるかのように何度もブツブツと「世界平和?」と呟いている。
それもそうだろう、先日までは自分の利益になる事しか頭になかったカエル顔の男が、突然世界の平和を願いだし、占って欲しいと言いだしたのだ、どう考えても可笑しいと思うのは当然だった。
クロイドの護衛役であり仲間である俺でさえ、浮かべている笑顔がどうにも引きつるのを感じたが、リードの混乱はそれ以上のようだった。
そんな狼狽中のリードを気にすることも無く、クロイドは遠慮なくまた爆弾を落とした。
「占い師様ー、世界平和を是非占ってくださいませ! 我々が(主であるララが)望む世界平和がいつ訪れるのか、私が一番気になることはそこなのです!」
「……我々が望む……世界平和……?」
「はい! その通りです!」
「フフフ……アハハ……アーハハハハッ! クロイド、お前は中々面白い事を言うねー」
クロイドの言葉を聞き、リードがこれまでにないほど嬉しそうに笑いだした。
そう、リードはクロイドが言う、”世界平和” を自分達がこの世界を統べる事だと、自分の都合が良いように、勝手に勘違いしてくれたようだった。
クロイドが今望む世界平和は、ララ様が望む ”皆が幸せな世界” という事だろう。
だが、リードはその事には気付きはしなかった。
自分たちの望む世界を熱望するクロイド……そう勘違いし、楽しそうに笑うリードを見て、俺は心底ホッとしていた。
「アハハハハ、ええ、良いでしょう。クロイド、貴方の願い、この私が占って差し上げましょう……フフフ……」
「占い師様! 有難うございます! とても嬉しいです!」
クロイドの言葉が相当面白かったのか、笑いが収まらないリードは「クックック……」と言いながら、水晶に手をかざした。
偽占い師かと思ったが、リードは一応占いの真似事はする様だ。
そしてリードが笑ったまま水晶に手をかざした途端、水晶の中は夜空のように、綺麗な星が花咲いたかのようになり、金色の光が輝いた。
それを見たクロイドが「わー、綺麗ですねー!」と驚き、初めて見たかのような事を言う。
どうやら今まで占いに来た事があるクロイドでさえ、水晶のそんな現象に驚いたようだ。
つまり今まではこんな状態にはならなかったという事だろう。
先程まで笑っていたはずのリードは無表情になり、目には疑問を浮かべ、クロイドを見つめていた。
「……クロイド、お前……本物のクロイドなのですか……?」
「へっ? ええ、勿論です! どっからどう見ても本物のクロイド・ロッグですよー?」
「……そうですね……それ程醜い顔が2つも3つもあるはずが無い……その顔はお前とケレイブだけで十分ですものね……」
「??? 占い師様? 世界平和の為には、私が弟と似ている方が良いと占いに出たのですか?」
「……いや、違う……だが、これは……」
一体リードが見つめる水晶には何が映っているのだろうか? 占いのことなど何も知らない俺には全く分からない。
だが、その水晶の輝きが美しいという事だけは分かる。
この世界の宇宙が水晶に閉じ込められているような、星空を水晶の中に詰め込んだかのような、そんな神秘的なものを俺でも感じた。
リードが水晶を手に抱え、覗き込む。
その美しさにうっとりとしているのか、それとも怯えているのか、リードの水晶を持つ手が震えているようにも見えた。
「リード、何をやっているんだ……」
「プリンス様!」
カーテンの奥から出てきたのは、”プリンス様” と呼ばれる黒髪の青年だった。
俺はその青年を見てギョッとする。
そう、ララ様の兄であるノア様に瓜二つと言える顔立ちだったからだ。
髪色や肌の色は違うけれど、色違いの同じ人間。
そう言えるほど、ノア様とこのプリンス様と言われる青年はよく似ていた。
ただノア様がまだ子供の姿であるのに対し、この青年は既に大人で、リアム様と同じぐらいの年齢に見える。
それに暗がりだからだろうか、顔色が余り良くないようにも見えた。
そしてカーテンの奥からはその青年だけでなく、複数の男と、女が出てきた。
一人はコナーと呼ばれるチェーニ一族の者であることは分かる。
見た目は執事そのものだが、体に纏う魔力がプリンス様を除けば圧倒的だ。
コナーの無表情の顔が、尚更冷酷さを表している様だった。
コナーはチェーニ一族を体現している、俺はそんな風に感じた。
そして若い女は、ガリーナ・テネブラエだろう……
濃い紺色の髪……それにアダルヘルム様から聞いていた容姿がガリーナだと思えた。
こちらもロイドの婚約者だったとは思えないほど冷え切った顔をしている。
感情を出さないのではなく、感情が無い……そう言える表情だ。
そして他にはセオ様と同じ年ぐらいの男と、俺達を迎えに来た男。
そして残りの二人は、俺達を迎えに来た男と奴隷市で一緒に居たやつだろう。
男女一人一人だ。
まさかこんなにも大勢がこの場に来ているとは思わなかった。
それ程クロイドは重要視されていたのか?
いや、きっとレチェンテ国の王都が重要なのだろう。
何と言ってもレチェンテ国の王都にはチュトラリー家の屋敷も、そしてララ様の居るスター商会も、そしてディープウッズ家と関わりのある者達も多くいる場所だ。
以前のブルージェ領のように操ることが出来たら……きっとそう思っているのだろう。
その為には裏ギルドは大事だったのだ。
こいつらはクロイドに興味があるとかではなく。
自分たちの利益の為。
そう、ただそれだけだったのだ。
そして……
プリンス様と呼ばれた青年を、守る様に立っているこの者達は、皆チェーニ一族なのはその髪色で分かる。
アグアニエベ国の王子と言われている、プリンス様こと、ウイルバート・チュトラリー。
やはりチェーニ一族はアグアニエベ国にあるのだろうと、俺は急なウイルバート・チュトラリーの登場に警戒しながらも、頭の隅でぼんやりとそんな事を考えていた。
☆☆☆
こんばんは、白猫なおです。(=^・^=)
やっとプリンス様の登場です!ウイルバート・チュトラリーはノアと顔立ちはそっくりですが、髪色は黒で肌は少し褐色です。ただし、ララの魔力のせいで体調が悪いです。まあ、自業自得ですよねー。
コナーは仕事中(潜入捜査?)の方が笑顔だと思います。まあ、作り笑いですが、今は表情筋を使う気も起きない様です。
そしてガリーナ。本来はリードと似た欲深いタイプですが、ロイドの件でかなりウイルバート・チュトラリーにお仕置きされて大人しい状態です。
そして他4名のチェーニ一族。迎えに来た男がソードという名前、そしてセオと同じ年齢ぐらいの若い男はイーサン。そして残りの男女はシュレックとグレアです。今後名前が出るか分かりませんがかなり前から決まっていた名前なのでここで出します。いつか本編で出せると良いなー。シュレックとグレアは名前の出番が無いかも。(;'∀')えへへ。
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