どうしてなんですか3
「お疲れ様でーす」
「おつかれ〜」
午後九時半、今日もお客さんが来ないままバイトが終わった。暇なおかげで課題も全部やりきる事ができた。店長もなんだかんだと言いながら半分以上手伝ってくれた。口では突き放しておきながら結局手伝ってくれるのは、なんだろうか、ツンデレなのだろうか。
店長に間延びした挨拶をして、引き戸を開ける。と、ビュウと冷たい風が吹き込んできた。顔を上げて驚く。
「あ」
「こんばんは」
道の向かい側に瀬川君が立っていた。寒そうにマフラーをぐるぐる巻にしている。彼の声は聞き取れなかったが、おそらく「こんばんは」と言ったのだろう。
私は引き戸を閉めると、瀬川君のところへ駆け寄った。
「どうしたの?こんな時間に」
「まぁ、ちょっと……。今日は店長ずっと店にいたの?」
「うん、今日は一日中いた」
瀬川君は「そっか……」と呟いてしばらく考え込んだ。そしてパッと顔を上げる。
「荒木さん、今日切り裂きジャックがまた人を殺したのは知ってる?」
「えっ、そうなの?」
瀬川君はこくりと頷いた。そんなニュース今日はやっていなかったが。課題や店長との雑談に夢中になって見過ごしただろうか。
「多分明日の朝ニュースで言われると思うけど」
「そうなんだ」
そこで沈黙が訪れる。先に口を開いたのは瀬川君だった。一瞬店の方へ視線を向けてから喋り出す。
「実は、今日ジェラート・トライフルさんの所に行ってたんだ」
「ジェラートさんの所に?何で?」
切り裂きジャックが関係してるって考えは私だけだと思ってたのに。しかし瀬川君は予想外の事を言った。
「轟木さんはトライフルさんの友達らしいから」
「え、そうなのっ!?」
確かに同じクラスとは聞いていたけれど、まさか友達とは。何故瀬川君はそれを黙ってたのだろうか。教えてくれてもいいものを。
「あまりにも情報が集まらないから、今日トライフルさんに直接話を聞いてきたんだ。とりあえず、その事を話そうと思うんだけど……ここじゃなんだから、どこかに入る?」
確かに、ずっと外にいるのは寒いし、すぐ側に店長がいると思うとあまり大きな声は出せない。私は瀬川君の言葉に頷いた。
「うん、そうしよう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます