三人寄らなくても文殊の知恵3




五月二十五日、日曜日。正午。

「おはようございまーす」

いつもと同じように挨拶し、私は朱雀店の引き戸を開ける。

「おはよう雅美ちゃん」

相変わらず来客用のソファーでくつろいでいる店長が挨拶を返す。普段は朝から出勤している私だが、どうせお客さんも来ないだろうし今日は昼からでいいと言われていた。

「瀬川君はまだなんですか?」

「もう来てるよ。呼んでくれば?」

なんで私が……と思いつつも、瀬川君の部屋へ向かうことにする。ところが私が店の裏に通じる通路へ入ろうとしたその時、目の前に瀬川君が姿を現した。あやうく正面衝突しそうになる。

「あ、今呼びに行こうと思ってたんだ」

一歩下がってそう言うと、瀬川君はなぜか不思議そうな顔をした。笑って私達を見ていた店長が、こちらに声をかける。

「二人揃ったし、もう行く?」

「そうします。店長ちゃんと店にいてくださいね」

私は鞄を肩にかけ直し、店長に釘をさす。瀬川君がちゃんと着いてきていることを確認して引き戸の前まで移動した。

「行ってらっしゃーい」

引き戸を開くと店長の声が飛んできた。ここからでは見えないが、テレビのチャンネルをパチパチ変えているのも聞き逃さない。どうやら怠ける気満々のようだ。

「行ってきまーす」

店を出て背後の瀬川君を振り返る。

「じゃあ、行こっか」

瀬川君は無言で小さく頷いた。



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