Happy End+

QAZ

▶LOAD:梵くんの心臓

 わたしの右手にはそよぎくんの心臓が握られていた。大好きなそよぎくん。幼馴染で、わたしの恋人だったそよぎくん。世界を破滅に導こうとしたそよぎくん。

 暗黒の日々の始まりの日、わたしは親を喰い殺されて命辛辛逃げ延びた。この街をなんとか出て、遠くの田舎まで一時は逃げ隠れ…それもヤツらに追い立てられて、仲間たちも皆喰われていった。そんな日々の中で、不思議な力を持つ仲間たちに助けられ、私自身も少しずつ強くなり、人々を助け歩く長い旅路の末、多くの犠牲を払いながら彼の下に辿り着いたのだった。

 そして今、彼は目の前で倒れて、黒い炎に包まれて消えて行く。ああ…これで…これでほんとうに終わりなんだ…。全てが終わる…この物語のエンディングが始まるのね…。最後の燃え滓が宙に飛んで消えた後、静寂だけが残されて、わたしは強烈な脱力感に襲われる。これで、わたしの物語は終わったんだ。世界は、を迎えたんだ。わたしも床に倒れこむ。疲れ切っていて、瞼を閉じると景色が暗転する。薄れゆく意識の中、ふいに、頭の中に何かの声が流れ込んできた。



…よく頑張りましたね。これで世界に永遠の平和が訪れることでしょう。あなたも、さぞかし疲れたでしょう。今はしばし休み、平和な世界に帰るのです…。


…めでたし、めでたし。

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