第5話
俺の人生は中学1年生の時に全てが狂った。
原因は両親の他界だった。
俺と母と父の3人家族だったが、両親は仕事から帰ってくる途中交通事故で死んだ。
夜中にピンポンの音がなり、「夢似さんのお宅でよろしいでしょうか?」と、警察が数人来た。俺は状況が理解出来なかったが一言だけポツリと……
「夢似さんのご夫婦は交通事故のため亡くなられました。」と……
俺は絶望し目の前は真っ暗、音さえも耳には何も入ってこなかった。その日は寝ることするもできなくなり朝になってから俺は、家にある金を全て持って逃げ出した。
その日からだろうか。学校では陽キャという類いに入っておりバカばっかりやっていたが、その日からは喋ることすらも嫌になってしまった。
スマホのマップを使い自転車で隣街まで6時間かけ母方の祖母の家に行った。祖母や祖父、母の兄弟なども知っていて俺が家にあがった瞬間祖母たちは泣き出してしまった。
それにつられ俺も悲しくなり泣き出してしまった。
長い時間泣きっぱなしだったが、それから話をして俺は前の中学ではなく祖母の家から近い中学に転校することになった。
家から徒歩で約30分ぐらいの所だった。俺は親のためにも、そして、祖母たちのためにも立派な人にならないと思った。
しかし新しい学校での生活にはあまり慣れる事ができず、友達ができることができなかった。
クラスの奴らは俺がなぜこの中学にきたのかを知っていたようで、よく噂をしていた。俺はボッチとやらになったのだ。
しかし自分で強くなると決めたのだからボッチだろうがしっかりやっていこうと思った。
だが、俺は勉強が苦手でついて行くこともできず周りの人から置いていかれた。
そのせいでテストが帰ってくるたび先生に「もう少し頑張りなさい」と言われたり俺のテストを盗み見た生徒たちが「あいつ頭悪〜」「やばくねー?」などと笑い声が聞こえたり学年全体にバラしたりされ、軽くいじめのようなこともされるようになった。
それでも、俺は頑張ろうと誓った。あんなやつらのことなんて無視すればいい、そう考えていたからだった。
しかし家に帰れば娘を亡くしたショックで祖母が鬱病になってしまい俺が支えてやる日々だった。
そんな生活が2年ほど続き俺も高校受験に向けて10月くらいから勉強を始めた。
こんな頭脳ではどこにも行くことはできなかったため金を払えば誰でも入れるような私立の高校に行くことにした。
俺は無事に受かり残りわずかな中学校生活を普通に送るはずだった……が2月の終わりごろ、祖父が亡くなった。祖母は鬱病が更に悪化したせいで病院に入院することになった。そのせいで、俺の精神もだんだんと削られていった。そこで、俺は気づいたんだ。
「俺がいると周りの人に迷惑がかかるのではないか?」そう考えているうちに病んでしまったのだろう。自殺を考えるようになった。
ーーーーーーーーーー
「先生、これが俺の過去ですよ。俺がこの世界に生きていても意味はないし、周りの人が不幸になるだけですよ。」そうだ、俺が生きていても周りの人を不快にさせるだけだ。
こんな俺が生きていても価値なんてない。そう思っていると「そんなことないですよ。」と言われ先生の方を見ると喋っているのは先生ではなく花優だと言うことが分かった。
「私はこの世界に生きてちゃいけない人なんていないと思います……運動ができなくても、勉強ができなくても、悪いことをしてしまった人でも、例え……病気の人でも…。皆が皆できることは違うけれど、生きていていいんだと思います。生きていい理由も生きていちゃいけない理由も多分誰にも分かりませんから。」
花優の方を見る。花優もこちらを見て俺と目が合うと微笑んだ。
「先生もそうね…」と呟いていた。花優の言っていることは正しいのかもしれない、でも今の俺にはよく分からなかった。
「先生、えっと……あの…すいませんでした。」今は謝ることしかできないと思った。
でも先生は「歩呂良くんが生きてくれていただけでよかったわ。でも、どんなことがあってもこんなことは二度としないでね」と言われた。
「はい」と、だけ答えると先生は「それじゃあ、私は帰るからまた数日したら来ますね。」と言って病室から出ていった。
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