第3話
「私は生まれた時から先天性心疾患せんてんせいしんしっかんでね……普通の子達と比べて重病だったの。でも、私の家はあまりお金がなくて、手術をするための代金がなくて……。そのせいで私の病気は治らないままで…今まで生きてこれたのは奇跡だってお医者さんにいつも言われてるの。だからいつ死ぬかも分からないから私にとっては1日1日がとても大切なの」
……と少女は言った。俺が話を聞き終わったのと同時に隣のベットのカーテンが開いた。そこには俺と同い年、もしくは少し歳下の少女が寝ていた。
決して強そうではない体に少し弱々しい声だった。
だが、顔はとても整っており髪もちゃんとお風呂に入っているかのようにサラサラしているようだった。
そんな姿に目を奪われていると、
「あなたにとって1日1日は大切? 」
と少女に聞かれた。
「俺にとって1日はボーッとしていれば終わっちまうように短い時間だと思うし正直大切かと言われるとそんなに大切ではないな」
自分でも言ってはいけなかったのかもしれないと後悔するが言ってしまったことを取り消すことは出来ない。少女は「そう……」と呟いていた。
「あなたの名前は? 」
「夢似 歩呂良だ、君は? 」
「私は
ーーーーーーーーー
…………ここで会話が途切れてしまった。俺から話かけたんだから何か話した方がいいと思い何か話題を振ろうとし……
「あの……」
「あの……」
2人同時に喋りかけてしまった。ここは話す気になってくれた相手から喋ってもらった方がこちらもありがたい。
「君からどうぞ」
彼女は「ありがとう」といって、
「えーっと……あなたのことを歩呂良くんと呼んでもいいでしょうか?私より歳上に見えるし、それに……あ、いやだったらいいんですけど…」
彼女は少し照れくさそうに、でも少し嬉しそうに言った。
「歩呂良でもかまわないぞ。でも歳上に見えたか?俺は今17歳なんだがな」
「そうなんですね!私は今16歳ですからやっぱり歩呂良くんとよばせていただきます!……あ、先輩のほうがいいでしょうか…? 」
「いや、先輩はよしてくれ、こっちこそ花優と呼んでもいいか? 」
「ぜひぜひ!話せる人があまりいなくて…看護師さんたちもお仕事があるので話し相手が欲しかったんです」
彼女……花優は目をキラキラさせるようにこちらを見てくる。まあ、俺もずっと暇しているのも嫌だったのでこちらとしても嬉しい限りだ。
「あははは」と花優は嬉しそうに笑っている。
こんな俺でも彼女の笑顔はとても素敵なものだと思った。
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