灯篭流しと夏の空

ねむりねずみ@まひろ

灯篭流しと夏の空

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『キャラクター』

ソウジ(20)

ユイカ (24)

ケント・医者(24)

チハル・看護師(24)

ナレ(セリフ数少ない為、兼任推奨)



『コピペ用キャスト表』


「灯篭流しと夏の空」


ソウジ:

ユイカ:

ケント・医者:

チハル・看護師:

ナレ:


以下台本

――――――――――――――――



【暑い日差しが照りつける中、蝉の鳴き声が響く】


ナレ「8月1日 昼」


ソウジ「暑い…夏って…こんな暑かったっけ」


ソウジM「8月1日…実家を離れ一人暮らしをしていた俺は、夏休みを利用して、久しぶりに里帰りをしていた、前まであぜ道だった所がアスファルトで舗装されていたり、近所のばあちゃんがやっていた駄菓子屋が、ちょっとしたコンビニレベルになっていたりと、色々な発見があった。」


ソウジ「そりゃそうか、久しぶりだもんなぁ…お、ポスターだ」


ソウジM「木で作られた村の掲示板には、花火や灯篭の絵と共に、灯篭祭りと書かれていた。」


ソウジ「灯篭祭り…か。確か、子供の頃に行った様な気がするけど…うーん、思い出せないや」


ソウジM「小さい頃の記憶は朧気で、あまり覚えていない。幼なじみの3人と一緒に行った気がするが、定かではなかった」



【ソウジを迎えにきた、3人と出会う】



チハル「あー!いた!ソーちゃん!」


ケント「チハル、ちゃんと本人か確認してから声を掛けないと…あーもう!」


ユイカ「ふふ、大丈夫だよ、ケント君。あれはソウ君だよ」


ソウジM「どこからともなく聞こえてくる賑やかな声、その声の主達は紛れもなく、俺の幼なじみ達だった」


ソウジ「よー、チハル、ユイカ、ケント、久しぶり…なんか、そんなに変わってないな?」


チハル「酷い!!あんなに可愛かったソーちゃんが…都会の学校に行ってグレちゃったの?」


ケント「チハル…人は変わるもんだよ」


チハル「うわーん!チハルだなんてそんな呼び方やだ!!昔みたいに、チー姉ちゃんって呼んでよ!!」


ソウジ「嫌だよ、子供じゃあるまいし」


ユイカ「ふふ、でも、私達の中で1番年下なのは、ソウ君だよ?」


ソウジ「…年齢は関係ない」


ケント「ははは、ユイカに口で勝とうなんて10年早いよソウジ?…それにしても久しぶりだな、大学は夏休みに入ったのか?」


ソウジ「ああ、きちんと課題も終わらせたし、親孝行も兼ねて里帰りしにきた」


ユイカ「ふふ、ソウ君は偉いねぇ、いいこいいこ」


ソウジ「だーから、子供扱いするなって!とっくに成人してんだから!」


チハル「何言ってんの!ソーちゃんは、ずっとずーっと、私達の可愛い弟分よ!?」


ソウジ「くっ、なんで俺だけ歳が下なんだよ…」


ケント「まあ良いじゃないか、久しぶりに4人揃ったんだ、ここじゃ暑いから、歩きながら話そう」


チハル「さんせー!毎年のこととはいえ、やっぱ夏は暑いわー!」


ユイカ「ソウ君大丈夫?何か飲み物でも…」


ソウジ「あー、大丈夫」


ケント「ユイカが母親と化している…」


ユイカ「私がソウ君のお母さんだなんて…そんな…」


ソウジ「…なんでちょっと嬉しそうなんだよ」


ユイカ「ふふふ」


ソウジM「久しぶりに会ったのにも関わらず、ずっと傍にいたかのような安心感がある。これが幼なじみ効果というやつか?俺達はアスファルトの道を進み、日陰を求め近くの公園へとやってきた」



【所々木陰になっている公園】



チハル「ふぃ~暑かったぁ…こんなに暑いと溶けちゃうよ~」


ケント「チハル、服の裾をパタパタさせない!」


チハル「だって!暑いんだもん!」


ユイカ「ふふ、チハルちゃんったら」


ソウジM「おっとりっとした喋り方が特徴のユイカ、元気が飛び出してきたような性格のチハル、真面目で優しい兄貴分のケント。

見た目はそこそこ変わってるけど、中身は子供の頃と何ら変わりなかった。ちなみに、ケントとチハルは双子だったりもする。」


チハル「…ソーちゃんも、行くよね?!」


ソウジ「え?」


チハル「ソーちゃん話聞いてた?」


ソウジ「…いや」


ケント「どうした?具合悪いのか?」


チハル「えっ?!ソーちゃん大丈夫?!」


ユイカ「大変、熱中症かしら?…ソウ君、これ飲んで?」


ソウジ「あ、ありがとう…。ごめん、ぼーっとしてた。…で、何だっけ?」


チハル「だから、灯篭祭り!一緒に行こうよって話し!」


ソウジ「あぁ、灯篭祭り…」


チハル「そう!出店とかも、たっくさん出るんだよ~」


ユイカ「皆で流す灯篭は、とても幻想的できっと良い思い出に変わると思うの」


ケント「そうだな、それに、最後にあがる花火も、なかなかの迫力だぞ?」


ソウジ「へぇ、そうなんだ。うん、いいよ皆で行こう」


チハル「やったぁ!それじゃあ、当日16時くらいに待ち合わせね!」


ユイカ「ところで、ソウ君は浴衣 もってるの?」


ソウジ「いや、無いからこのままで…」


チハル「えー!それはダメだよ!」


ケント「灯篭祭りは、浴衣で参加するのが乙ってもんだからなぁ」


ソウジ「そうなのか?」


ユイカ「それじゃぁ、明日一緒に買いに行こっか!」


チハル「はいはいはい!私も行く!」


ケント「チハルはだめ、明日は母さん達の手伝いがあるだろ」


チハル「えーー!!やだぁ!私もソーちゃんと買い物行ーきーたーい!」


ケント「諦めろ」


ユイカ「ふふ、どうかな?ソウ君」


ソウジ「あぁ、明日は特に予定も無いし、一緒に行ってくれるなら有難い」


ユイカ「じゃぁ、決定!12時に駅前のショッピングモールの前で待ち合わせね。これ、私の連絡先」


ソウジ「ありがとう」


チハル「私と、ケントのも教えちゃうんだからね!」


ソウジ「あぁ、ありがとう」


チハル「うー、今度は私とも一緒に出掛けてよー?」


ソウジ「わかったって」


ケント「ほーら、そろそろ帰るぞ」


チハル「はーい」


ユイカ「それじゃあソウ君、また明日ね!」


ソウジ「あぁ、また明日」



【自宅】



ソウジ「ふぅ…なんか、楽しかったな。」


ソウジM「アドレスの増えたスマホを眺めながら、布団へと潜り込む。夏の夜は蒸し暑い…網戸ごしに聞こえる虫の声がどことなく物悲しく聞こえていた」


ソウジ「それにしても、疲れた…。明日はユイカと出かける予定だし、もう寝よう…。アラームは…まぁいいか。ふぁ…おやすみなさい」



ナレ「8月2日 朝」


ソウジ「ん…朝か…今何時…っ!!11時50分?!やっべぇ!!」


ソウジM「アラームをセットしていなかったせいで、待ち合わせ時刻まで時間がない、慌てて支度をし、駆け足で駅へと向かった。だが、待ち合わせ場所に着き、辺りを見回したが、ユイカの姿はどこにも見当たらなかった」


ソウジ「はぁ、はぁ…ユイカは…いないか。時間は…12時30分…まだ来てないのかな?」


【救急車の音が聞こえ目の前を通り過ぎていく、ユイカのスマホに電話を掛けるソウジ】


ソウジ「…留守電か」


ソウジM「何度か電話をかけてみるも、ユイカが出る事はなかった。1時間程待ってみたが、一向に来る気配もない。」


【スマホが鳴る】


ソウジ「あれ?ケントからだ…もしもし…」


ケント「ソウジ!!大変だ…ユイカが!!」


ソウジ「え?どうしたんだよ」


ケント「ユイカが、ショッピングモール前の交差点で、車に跳ねられたらしい…。さっき救急車で運ばれたって…」


ソウジ「嘘だろ…っ!さっきの救急車…」


ケント「ソウジ?…おい!ソウジ!!…ソウジ!!」



【夜・自宅】



ソウジ「ユイカが…死んだ」


ソウジM「目撃者の話しだと、ユイカはショッピングモールの前にいた、お年寄りの道案内をした帰りに事故にあったらしい、ユイカの腕時計は、12時15分で止まっていたそうだ」


ソウジ「俺のせいだ…。俺が、待ち合わせに間に合っていたら…ユイカは死ななかったかもしれないのに…」


ソウジ「ごめん…ユイカ…ごめん」


ソウジM「俺は…後悔に苛まれながら、眠りについた」



ナレ「8月1日 昼」


チハル「…ソーちゃんも、行くよね?!」


ソウジ「え?」


チハル「ソーちゃん話聞いてた?」


ソウジ「あれ…チハル…俺いったい…」


ケント「どうした?具合悪いのか?」


チハル「えっ?!ソーちゃん大丈夫?!」


ユイカ「大変、熱中症かしら?…ソウ君、これ飲んで?」


ソウジ「ユイカ?!無事だったのか!」


ユイカ「え?無事って?」


ソウジ「だって、昨日交通事故で…」


ユイカ「ふふ、寝ぼけてたの?昨日って…ソウちゃんがこっちに帰ってきたのは、今日でしょ?」


ソウジ「え?…今日は8月2日じゃ…」


チハル「違うよ?今日は8月1日だよ!」


ソウジ「そんな、…昨日に戻ってる?」


ケント「暑さにやられたか?」


ソウジ「いや、ごめん!何でもない、で、何の話しだっけ?」


チハル「だから、灯篭祭り!皆で一緒に行こうよって話し!出店とかも、たっくさん出るんだよ~」


ユイカ「皆で流す灯篭は、とても幻想的できっと良い思い出に変わると思うの」


ケント「それに、最後にあがる花火もなかなかの迫力だぞ?」


ソウジ「へぇ、そうなんだ。うん、いいよ皆で行こう」


チハル「やったぁ!それじゃあ、当日16時くらいに待ち合わせね!」


ユイカ「ところで、ソウ君 浴衣はもってるの?」


ソウジ「いや、持ってない…」


チハル「えー!それはダメだよ!」


ケント「灯篭祭りは、浴衣で参加するのが乙ってもんだからなぁ」


ソウジ「やっぱり、昨日と同じ会話…」


ユイカ「それじゃぁ、明日一緒に買いに行きましょう!」


チハル「はいはいはい!私も行く!」


ケント「チハルはだめ、明日は母さん達の手伝いがあるだろ」


チハル「えーー!!やだぁ!私もソーちゃんと買い物行ーきーたーい!」


ケント「諦めろ」


ユイカ「ふふ、どうかな?ソウ君」


ソウジ「あぁ、明日は何にも予定無いし、一緒に行ってくれるなら有難い」


ユイカ「じゃぁ、決定!12時に駅前のショッピングモールの前で待ち合わせね。これ私の連絡先」


ソウジ「ありがとう」


チハル「私と、ケントのも教えちゃうんだからね!」


ソウジ「あぁ、ありがとう」


チハル「うー、今度は私とも一緒に出掛けてよね!」


ケント「ほーら、そろそろ帰るぞ」


チハル「はーい」


ユイカ「それじゃあソウ君、また明日ね!」


ソウジ「あぁ…また明日」



ナレ「8月1日・夜」


ソウジ「どういうことだ?」


ソウジM「スマホの画面を見ると、8月1日23時と映し出される…。明日、ユイカとショッピングモールへ出かける予定も、チハルとケントが用事でこれないのも、一昨日と同じ、2日にユイカが事故にあって、その後眠ったはずなんだ…本来なら8月3日になっているはずなのに…」


ソウジ「たちの悪い夢だなこれは…寝よう」



ナレ「8月2日 昼」


ソウジM「念のためアラームをセットし、俺はそのまま眠った。翌朝、スマホを確認すると、8月2日11時と表示された。待ち合わせの時間まで、まだ少しある、遅めの朝食をとり、12時頃に着くようにした。今度は大丈夫だろう…そう楽観視していた。時刻は、12時02分待ち合わせ場所にユイカの姿はまだない。12時10分…未だユイカは来ていない、そして12時30分…」



【救急車が目の前を走る】



ソウジ「救急…車」


ソウジM「いやな予感がして、ユイカに電話をかけてみるも、一向に出る気配がない。そして、一時間後…ケントから着信が入った」



【ソウジのスマホが鳴る】



ケント「ソウジ!!大変だ…ユイカが!!」


ソウジ「え?」


ソウジM「結果として、ユイカは交通事故で亡くなった…なぜだ今回は遅刻もしなかったのに。夢なのか現実なのかはわからない、けれど、二度もユイカを死なせてしまった…俺は、絶望に打ちひしがれながら、布団に潜り込み、全てを忘れるように眠りについた」



ナレ「8月1日 昼」


チハル「…ソーちゃんも、行くよね?!」


ソウジ「…え?」


チハル「ソーちゃん話聞いてた?」


ソウジ「あ、あぁ聞いてた、灯篭…祭りだよな」


ケント「どうした?具合悪いのか?」


チハル「えっ?!ソーちゃん大丈夫?!」


ユイカ「大変、熱中症かしら?…ソウ君、これ飲んで?」


ソウジM「戻ったのか…これは本当に…夢なのか…?」


ユイカ「ところで、ソウ君は浴衣 もってるの?」


ソウジ「いや、持って無いから一緒に買いに行ってくれないか?」


ユイカ「うん!それじゃぁ、明日一緒に買いに行きましょう!」


チハル「はいはいはい!私も行く!」


ケント「チハルはだめ、明日は母さん達の手伝いがあるだろ」


チハル「えーー!!やだぁ!私もソーちゃんと買い物行ーきーたーい!」


ケント「諦めろ」


ユイカ「ふふ、どうかな?ソウ君」


ソウジ「ああ、よろしく頼む」


ユイカ「じゃぁ、決定!12時に駅前のショッピングモールの前で待ち合わせね。これ私の連絡先」


ソウジ「ありがとう」


チハル「私と、ケントのも教えちゃうんだからね!」


ソウジ「あぁ、ありがとう」


チハル「うー、今度は私とも一緒に出掛けてよね!」


ケント「ほーら、そろそろ帰るぞ」


チハル「はーい」


ユイカ「それじゃあソウ君、また明日ね!」



ナレ「8月1日 夜」


ソウジ「何でかはわからないけど、また戻ってこれた、どうしたらユイカを事故から救えるんだ?…考えろ…考えろ。」


ソウジ「そういえば今回も、道案内をした帰りに事故にあったって聞いたな…それなら、道案内をする前に合流できれば、ユイカが事故にあう事は無いんじゃ…そうだ、アラーム!」


ソウジM「俺は、アラームをセットし、明日に備える事にした。これが夢で明日が8月3日だったとしても、後悔はしたくないから…」


ナレ「8月2日・朝」


ソウジM「アラームの音で目覚めるとともに、スマホを確認する。8月2日8時…夢じゃなかった」


ソウジ「よし、支度して待ち合わせの時間よりも早めに行こう…今度こそユイカは死なせない」



ナレ「8月2日 昼」


ソウジ「ユイカは…まだ居ないな。時間も11時半、これなら…」


ソウジM「祈るような気持ちでユイカを待った…何度も何度もスマホを確認してしまう…。どうか…ユイカが来ますように。そして…11時50分、ユイカが来た」


ユイカ「あ、ソウ君!もう来てたんだ」


ソウジ「あぁ、ユイカも早いな」


ユイカ「ふふ、大事なソウ君とのお出かけだからね」


ソウジ「ははは、じゃあ行こうか」


ユイカ「はい!」


ソウジM「ユイカの身を案じながらも、買い物を楽しんだ。事故や事件に巻き込まれないかと、気を張っていたが、ユイカが事故にあった12時15分を過ぎても救急車は通らず、何事もなく、無事に一日が終わっていく」


ユイカ「すっかり暗くなっちゃったね」


ソウジ「今日は、ありがとな」


ユイカ「ソウ君のためなら、お安い御用だよ♪」


ソウジ「そっか」


ユイカ「あ、ソウ君みて!流れ星!」


ソウジ「…え、どこ?」


ユイカ「もう流れちゃったよ~」


ソウジ「そうなんだ、残念」


ユイカ「えへへ、流れ星にお願い事をすると叶うってオマジナイ知ってる?」


ソウジ「あぁ、小さい頃母さんから聞いた」


ユイカ「次、星が流れたら一緒にお願い事しようよ!」


ソウジ「そう簡単に流れるかなぁ」


ユイカ「流れるよ!…ほら!」


ソウジ「あっ……。」


ユイカ「…お願い、できた?」


ソウジ「…うん、できた。なぁ、ユイカは…」


ユイカ「良かったね!それじゃぁ帰ろっか!」


ソウジ「…あぁ」


ソウジM「ユイカがなんの願いをしたのか気になったが、何となく聞いちゃいけない気がして、俺達はそのまま帰路に就いた。なんにせよ、ユイカを事故から救えた…それだけで満足だった」



ナレ「8月3日・朝」


ソウジ「朝…か。ん…」


ソウジM「寝起きのままスマホを見ると、画面には8月3日9時15分と表示されていた。どういうことだ?ユイカの死を回避したから ?時間が進んだのか?いまいちわからない事だらけだが、グループラインでは、ユイカとチハルが昨日の買い物について話していた…」


ソウジ「よかった…」


ソウジM「ユイカが死ななかった安堵からか、俺は再度、布団へもぐりこんだ」




ナレ「8月7日 朝」


ソウジM「あれから数日がたった。8月7日9時15分、まぶしい日差しと共に、鳴り響くスマホ…。画面を見るとチハルからの着信のようだ」


チハル「ソーちゃん!やっほー!おきてる?!」


ソウジ「…寝てた」


チハル「もう、ソーちゃんの寝坊助さん!ねぇねえ、今日灯篭祭りの準備があるんだけど、人手が足りなくてさ…良かったら手伝ってくれないかなぁ?」


ソウジ「あぁ、予定もないし、良いよ」


チハル「やったぁ!そしたら、お昼食べたら広場に集合ね!」


ソウジ「わかった、じゃあまたな」



【広場】



チハル「ソーちゃんこっちこっち!」


ソウジ「おー、」


ケント「ソウジ、悪かったな急に呼んじまって」


ソウジ「いや、することも無かったし、丁度良かったよ」


ユイカ「ソウ君もお手伝いに来たんだ、えらいね」


チハル「ソーちゃん本当ありがとね!今回の灯篭祭りはさ、家が担当だから…」


ソウジ「担当?」


ケント「今季の自治会担当が家なんだ、だから祭りの準備も取り仕切らなきゃいけなくて…。あーわかった!今行く!ごめん、父さんに呼ばれた、ちょっと行ってくる」


ソウジ「わかった」


ケント「そうだ、お前等山の方には行くなよ?この時期熊が出るから」


ソウジ「熊…まじか」


ケント「まぁ皆わかってる事だけどな!それじゃぁ、ユイカ、チハル、ソウジの事頼むな!」


チハル「はーい!いってらっしゃい!」


ユイカ「いってらっしゃい!」


ソウジM「あの日以来、ユイカは無事に過ごしていた、このまま何もなければ良いけど…まてよ、こういう祭りの準備が一番危ないんじゃないか?そうだ…なるべくユイカの傍にいなきゃだよな…」


チハル「そしたら、ユイカとソーちゃんと私で、この提灯を運びます!」


ソウジ「どこに運べはこべばいい?」


チハル「ユイカのは、公民館の所!ソーちゃんのは広場の西側ね!」


ユイカ「よっと…」


ソウジ「ユイカ、手伝うよ」


ユイカ「大丈夫だよ、ソウ君は自分の方を優先して?」


ソウジ「嫌だ」


ユイカ「わかった…じゃぁコレお願い」


ソウジ「あぁ」


チハル「……」



【提灯を下ろし、広場へ戻る】



ソウジ「チハル、次はどれだ?」


チハル「えっと、コレを持っていってほしいかな。ユイカは電球をあっちの小屋にお願い」


ユイカ「わかったわ」


チハル「じゃぁ、ソーちゃんこれを一緒に…」


ソウジ「ユイカ、俺もそっち手伝うよ」


ユイカ「…そう?じゃぁ、お願いね」


ソウジ「あぁ、わかった」


チハル「……」


ソウジM「その後も、俺は出来るだけユイカの傍に居続けた。チハルには悪いと思ったが、またユイカが事故にあうのが怖かった」


チハル「痛っ…」


ソウジ「大丈夫か?あぁコレ割れてたんだな…血が出てる」


ユイカ「ソウ君、チハルちゃんを八夜先生の所に連れて行ってくれる?八夜先生は、公民館の横にある病院に勤めてて、この村の主治医なの」


ソウジ「でも…俺は…」


チハル「大丈夫!…私は一人で行けるから、ちょっと行ってくるね!」


ユイカ「あ、チハルちゃん!……行っちゃった」


ソウジ「……」


ソウジM「これで、良かったんだ…ユイカの傍から離れたらいけない。ユイカの傍にさえいれば大丈夫だ…そう思っていたのに…」



【遠くで銃声が聞こえる、その直後ユイカのスマホが鳴る】



ユイカ「もしもし、ケント君?どうしたの?」


ケント「ユイカ、大変だ…チハルが…熊に襲われた…」


ユイカ「へ?チハルちゃんが熊に…」


ソウジ「えっ?!そんなっ…」


ユイカ「ねぇ!チハルちゃんは無事なの?!ねぇ!ケント君!」


ケント「……っチハルは…もう…」


ユイカ「そんな…チハルちゃんが…」


ソウジ「うそだろ…。」



ナレ「8月7日 夜」


ソウジM「チハルが、死んだ…何でだよ!ユイカを守れば良いんじゃないのかよ?!…でもユイカの傍を離れたら、またユイカが死んでたかもしれない。チハルは、傷の手当をしに公民館へ向かう途中、運悪く熊と遭遇したらしい。熊に襲われた時何か考え事をしていたのか、…抵抗した後が一切無かったそうだ」


ソウジ「チハルの傍からも離れちゃ行けなかったんだ…俺は間違えたのか?俺は…」


ソウジM「スマホを握りしめながら涙をこらえる。いくらこらえようとしても、涙はせきを切ったようにあふれ出て、止まることは無かった。俺のせいだ…俺の…せいだ」



ナレ「8月7日 朝」


ソウジM「眩しい日差しのなか、スマホが鳴り響く…どうやら電話のようだ。画面をのぞき込むと、そこに表示されていた名前は、チハルだった」


チハル「ソーちゃん!やっほー!おきてる?!」


ソウジ「…チハ…ル」


チハル「ん?どうしたの?」


ソウジ「いや、何でもない。どうした?」


チハル「いやさ、今日灯篭祭りの準備があるんだけど、人手が足りなくてさ…良かったら手伝ってくれないかなぁ?」


ソウジM「あぁ、また戻ったのか?」


ソウジ「いいよ、手伝う。どこに行けばいい?」


チハル「やったぁ!そしたら、お昼食べたら広場に集合ね!」


ソウジ「わかった、じゃあまたな」



【広場】



チハル「ソーちゃんこっちこっち!」


ソウジ「おまたせ」


ケント「ソウジ、悪かったな急に呼んじまって」


ソウジ「いや、することも無かったし丁度良かったよ」


ユイカ「ソウ君もお手伝いに来たんだ、えらいね」


チハル「ソーちゃん本当ありがとね!今回の灯篭祭りはさ、家が担当だから…」


ソウジ「自治会担当だっけ?いいよ、俺もちゃんと手伝うから」


チハル「あれ?うちが担当って言ったっけ?…ま、いっか!そしたらバンバンこき使っちゃうから覚悟してよ~!」


ソウジ「あはは、お手柔らかに」


ケント「そうだ、ソウジ、山の方には行くなよ?」


ソウジ「うん…わかった」


ケント「それにこの時期熊も出るんだ、まぁ熊は食べ物も豊富にあるし襲ってくることはめったにないと思うけど、念のため…それじゃぁチハル、俺は父さんの所に行ってくるから2人をたのんだぞ」


チハル「はーい!いってらっしゃい!」


ユイカ「いってらっしゃい!」


ソウジ「いってらっしゃい」


チハル「…そしたら、ユイカとソーちゃんと私で、この提灯を運びます!」


ソウジ「わかった、公民館と広場の所だろう?2人は広場の方に持って行って。こっちは俺が運ぶ」


ユイカ「ソウ君大丈夫?結構沢山あるよ?」


ソウジ「大丈夫、これでも俺、男だし」


チハル「ん~!さっすがソーちゃん!頼りになるぅ!」


ソウジ「それじゃぁ、行ってくる!」


ソウジM「その後も、ユイカの事を気にしつつ、今度はなるべくチハルと行動を共にする、今の所、何事もなく時間が進んでいる。このまま行けばきっと…」


ソウジ「痛っ…」


チハル「どうしたのソーちゃん!?」


ユイカ「手を切ったの?大丈夫?」


ソウジ「大丈夫…」


ユイカ「チハルちゃん、ソウ君を八夜先生の所に連れて行ってくれる?八夜先生は、公民館の横にある病院に勤めているこの村の主治医だから、きっと見てくれるわ」


ソウジM「…八夜先生、そうだ公民館に向かう途中でチハルは、だったら…俺のすることは…」


ソウジ「こんなの、大したこと無いよ平気!」


ユイカ「でも…」


ソウジ「大丈夫だから、それに2人とあまり離れて居たくないし」


チハル「…ソーちゃん」


ユイカ「甘えん坊さんな所は変わってないわね」


チハル「だとしても、傷は傷!八夜先生の所に行かないのであれば、ここでおとなしく手当を受けなさい!」


ソウジ「わかりました」



【手当を受けながらの雑談】


ソウジ「そういえば、ケントが山に入るなって言ってたけど…あれは熊が出るからなのか?」


チハル「ん~、それもあるけど、灯篭祭りの前は、立ち入り禁止になってるの」


ソウジ「え、なんで?」


ユイカ「昔、ちょうどこの灯篭祭りの時期に大雨が降って、土砂崩れが起きたそうなの、その時に結構な被害が出たらしくて…。この時期の山はその犠牲者達が還ってくると言われていてね、必要がないなら、晴れていても入らないようにって言われているのよ」


ソウジ「そうなんだ…痛っ」


チハル「ごめん、痛かった?」


ソウジ「あぁ、大丈夫…何でもない。ちょっと頭痛がしただけ…」


チハル「そっか。…ふぅ、これで良し!」


ソウジ「ありがとう」


チハル「応急処置だから、後でちゃんと病院に行くのよ?」


ソウジ「あぁ、解った」


ユイカ「無事に手伝いも終わったし、そろそろ帰りましょうか」


ソウジ「そうだな。あ、2人とも送っていくよ」


チハル「ふふ、ありがと!じゃあ、お言葉に甘えて…皆で帰ろう!」


ユイカ「そうしましょう、ソウ君行こう」


ソウジ「あぁ」



ナレ「8月8日・朝」


ソウジ「ふぁ…朝か…」


ソウジM「スマホの画面には、8月8日9時と表示されていた。熊が出た情報も誰かが襲われた連絡も、何も来ていない、おそらく無事に時間が進んだんだろう」



【スマホが鳴る】


ソウジ「誰だろ…ケント?」


ケント「もしもし、ソウジか?」


ソウジ「あぁ、どうした?」


ケント「いやさ、お前こっちに帰ってきてからそんなに出かけてないだろ?だから、13日にさ、皆でキャンプに行かないか?」


ソウジ「キャンプ?」


ケント「一泊だけだから14日には帰ってくるし!それに、灯篭祭りがおわったら、お前東京に帰るんだろ?だからさ、その前に、思い出作らないか?」


ソウジ「そうだな、うん行こう」


チハル「何々ケント!ソーちゃん来るって?」


ケント「チハル!勝手に部屋に入ってくるな」


チハル「いいじゃん!で、ソーちゃんくるのー?」


ソウジ「あぁ、行くよ」


チハル「やったー!ユイカもいるからね、楽しみにしてて!」


ケント「あーもう!チハル!」


チハル「うわ、やばっ!じゃあね!ソーちゃん!!」


ソウジ「…切れちゃった。チハル、元気そうだったな…良かった。」




ナレ「8月13日・朝」


ソウジM「8月13日…キャンプをする為に村の外れにある河原に集合した。サラサラと流れる川では、所々で魚が飛び跳ねている」



チハル「いやーー最高のキャンプ日和だね!」


ユイカ「ええ、無事に晴れたし、空気が気持ちいいわ」


ソウジ「なあ、ケント、本当に良かったのか?テントや道具、全部借りて」


ケント「ああ、父さんの趣味で一通り揃ってたから問題ないよ」


ソウジ「そうなんだ、凄いな」


チハル「ケントー!ソーちゃん!テントも準備出来たし遊びに行くよー!」


ケント「はいはい、今行く」


ユイカ「ソウ君も行きましょう」


ソウジ「ああ」


ソウジM「その後、川で泳いだり、川辺りにいたサワガニを捕まえたり、夕ご飯用のバーベキューの準備をしたりと、皆思い思いにのんびりと過ごした。」


ケント「なぁソウジ、釣りに行かないか?」


ソウジ「いいな、行こう!」



【川の中腹で釣りを楽しむ2人】



ソウジ「よし!釣れた!」


ケント「お、ソウジ凄いじゃん」


ソウジ「へへ、釣りなんて初めてしたけど、結構楽しいんだな」


ケント「だろう?こうさ、自然の中でのんびりするとさ、嫌な事も悩んでる事も全部忘れられるんだよなぁ」


ソウジ「ケントも悩むことあるのか?」


ケント「当たり前だろ?人間だれしも、悩みの1つや2つ抱えてるって」


ソウジ「そっか、そうだよな」


ケント「でも、俺が心配してるのはお前のことだよ」


ソウジ「え、俺?」


ケント「あぁ、お前ここに帰ってきてから、何か焦ってるだろ?」


ソウジ「…」


ケント「ビンゴ…か。ま、理由は聞かないけど、あんま無茶すんなよ」


ソウジ「うん」


ケント「お前は、俺達の大事な弟分なんだから、何かあったら何時でも頼れよ?」


ソウジ「あぁ、ありがとな」


ケント「良いって事よ!…それじゃそろそろ戻ろうか」


ソウジ「あぁ!…痛っ…あっ」


【急な頭痛に襲われ、足を踏み外し川に落ちるソウジ】


ケント「え?ソウジ!!!」


ソウジ「がぼがぼがぼ…」


ケント「くそっ…ソウジ待ってろ!!今行くっ!」


【流されたソウジを助けるために飛び込むケント】


ソウジM「やばい…流れが速くて…もう…息が…」


ケント「ソウジ!!ソウジ!!!」


ソウジM「ケント…来ちゃ…だめだ…」


ケント「くそっ…ソウ…ジ…」



【川の浅瀬】


ソウジM「川に流された後、ケントに助けられた俺は運よく浅瀬へ乗り上げた、けれど俺を助ける為に飛び込んだケントは、そのまま川に流されて亡くなった。俺が足を滑らせたから、ケントは溺れたんだ…全部俺のせいだ…。その後キャンプどころでは無くなって、暗い雰囲気のまま、俺達は、解散した」



ナレ「8月13日・朝」


ソウジ「あれ…ここ…俺の部屋?っ…そうだ、スマホ!!8月13日…9時」


ソウジM「目が覚めると自分の部屋にいた。急いでスマホの画面を確認すると、キャンプに行く数時間前に戻っている」


ソウジ「…戻ってきた…?じゃぁケントはまだ…よし!今度こそ!!」



【キャンプ場】



チハル「いやーー最高のキャンプ日和だね!」


ユイカ「ええ、無事に晴れたし、空気が気持ちいい」


ソウジ「ケント、キャンプ道具の準備ありがとうな」


ケント「おう、気にするな、父さんの趣味で揃ってたからな」


ソウジ「そう…だな」


ケント「ソウジ、どうかしたか?」


ソウジ「いや、何でもない!キャンプ楽しもうな」


チハル「ケントー!ソーちゃーん!テントも準備出来たし遊びに行くよー!」


ケント「はいはい、今行くー」


ユイカ「ソウ君も行きましょう」


ソウジ「ああ行こう」


ソウジM「その後、川で泳いだり、川辺りにいたサワガニを捕まえたり、前回と同じように過ごしていく。夕方近くなり、ケントから声を掛けられた」


ケント「なぁソウジ、釣りに行かないか?」


ソウジM「釣り…この釣りでケントは溺れたんだ、それなら…」


ソウジ「ん~釣りもいいけどさ、せっかく浅瀬があるんだから、罠でも仕掛けて魚を捕まえてみたいなぁ…なんて」


ケント「お、追い込み漁か…いいなそれ、それならチハルとユイカも参加できるし、何より楽しそうだ!」


チハル「へぇ、それってどうやるの?!」


ユイカ「ふふ、面白そうですね」


ソウジ「なら決まり!早速皆で行こう!」


ソウジM「流れのはやい中腹での釣りを止めて、皆で浅瀬で魚を捕まえる事になった。水しぶきが太陽に照らされてキラキラと光っている…皆笑顔で、すごく楽しそうだ。俺は、今度こそ、皆の事を死なせずに過ごすことが出来た」



ナレ「 8月13日 夜」


チハル「ふぅ…美味しかったぁ!」


ユイカ「河原でのバーベキューは最高ね」


ケント「いい思い出になったな」


チハル「だね!」


ユイカ「明後日は灯篭祭りだね…」


ソウジ「そうだな、そういえば灯篭祭りってどんな祭りなんだ?」


ケント「灯篭祭は…川辺に思い思いの灯篭を流して、先ゆく人達が迷わぬように道を照らす…要は死者を弔うんだ」


チハル「残された人も先ゆく人も、皆が前を向けるように…きちんとお別れが出来るようにって願いも込められてるの」


ユイカ「そう、灯篭を流している間は、後ろを向いてはいけないと言われているの…後ろを向いちゃうと、迷っちゃうから」


ソウジ「そうなんだ…痛っ」


ケント「どうした?ソウジ」


ソウジ「いや、何でもない、ちょっと頭痛がしただけ…」


チハル「はぁあ~。でも、ソーちゃんは祭りが終わったら帰っちゃうんだよね」


ソウジ「ああ、そうなるな」


ユイカ「さみしくなるね」


ケント「だからこうやって思い出作りにきたんだろ。ほら、明後日もめいっぱい楽しむんだから、な?そんな暗い顔するなって」


チハル「そうだね!明後日は浴衣で集合!」


ユイカ「ふふ、素敵な浴衣を選んだから、楽しみにしてて」


ケント「さ、そろそろテントに戻って寝よう」


ソウジ「あぁ、お休み」



ナレ「8月15日・夕方 」


チハル「おっまたせー!」


ケント「おう、2人ともやっと来たか」


ユイカ「どうかな?ソウ君、この浴衣」


ソウジM「8月15日、灯篭祭り当日。川辺近くの広場には沢山の屋台が連なり、辺りから賑やかな声が聞こえてくる。俺達は集合するなり、屋台を回った。焼きそばにタコ焼き、いかせんにタピオカ…金魚すくいや射的なんかも楽しんだ。」



チハル「あー楽しかったねー!」


ケント「チハル…結構食べたな…太るぞ」


チハル「今日はいいのー!」


ユイカ「この後の花火も楽しみね」


ソウジ「花火?そういや花火も上がるんだっけ」


チハル「そうだよ~!灯篭を流したあと、最後に花火があがるんだよ!灯篭に導かれた魂が花火と共に天に登っていくの! 灯篭祭りの名物だよ!」


ソウジ「そうなんだ…」


ユイカ「ソウ君みて、灯篭が流されるよ」


ソウジ「うわ、凄い…灯篭のあかりが沢山。これは綺麗だな…」


ケント「ほら、ソウジ、お前の分」


ソウジ「え?」


ケント「せっかくだから、流してみろよ」


ソウジ「そうだな、流してみる…確か、先人たちの魂が迷わぬように…願いを込めるんだったな…。どうか、安らかに…。これでよし。なあ、また来年も来よう…な…あれ?皆は?」


ユイカ「 この村で生きた人たちの証…忘れないでね?」


ソウジ「ユイカ?どういう…痛っ…」


チハル「私、ソウ君のこといつまでも大好きだよ!」


ソウジ「チハル?」


ケント「約束、守れなくてごめんな、ソウジ。お前だけでも…生きてくれ」


ソウジ「ケント?なぁ…いったいどういう…」



【突如、立っていられない程の地鳴りが起こり、頭が割れそうに痛む】



ソウジ「ぐっ…チハル…ケント……」


ユイカ「大丈夫…私達が護るから…」


ソウジ「ユイ…カ…」



【病院のベッドの上 】



看護師「先生、ソウジ君が目を覚ましました!」


八夜「…奇跡だ。ソウジ君、わかるかい?ソウジ君!! 」


ソウジ「…は…ちや…先生…?…ここは…」


八夜「ここは病院だよ、覚えてないのかい?君は10年前のあの事故以来、ずっと眠り続けてたんだよ…」


ソウジ「10年前?…いったい…何が」


八夜「10年前の 灯篭祭りの夜…大規模な土砂災害があってね…。会場だった広場は、あっという間に土砂の下敷きになった。灯篭祭りで流した灯篭も、その場にいた人も、なにもかも大量の土砂に飲み込まれたんだよ。」


ソウジ「そんな…」


八夜「自衛隊や救護班が沢山来てね、救助に携わってくれたけど、沢山の人が亡くなったんだ」


ソウジ「あの、ユイカと、ケントとチハル…は…」


八夜「…3人はあの災害で亡くなったよ。キミたち4人はちょうど灯篭を流そうとしていた時だったみたいでね、小さいキミを守るように、3人が覆いかぶさっていたんだ。そのお陰で、土砂の中で君は多少の呼吸ができていたみたいで、発見されたときに息が合ったのはソウジ君、キミだけだったよ」


ソウジ「… うそだ…だって、さっきまで…皆と一緒にいたんだ…そんなはずない」


八夜「そうか、今日は8月15日だったな…。ソウジ君、窓の外を見てご覧…」


ソウジ「窓の外…、明かりが…あれは…灯篭流し…? ああ、そうか。皆ずっと傍に居てくれたんだ…。俺が、最後に灯篭を流したから…」


八夜「大丈夫かい?」


ソウジ「先生。少し、外にでてもいいですか? 」


看護師「ダメですよ、目覚めたばかりなのに…」


八夜「良いんだ。…無理をしないようにね?」


ソウジ「はい」


【外に出て、広場へとやってくるソウジ、様々な色の灯篭を眺めていると段々涙がこみあげてくる】


ソウジ「ケント…チハル…ユイカ… 」


ケント「灯篭を流したら、振り向いちゃ行けないよ」


ソウジ「…ケント」


チハル「私たちが迷わないように…、ちゃんと祈っててよね!」


ソウジ「…チハル」


ユイカ「大丈夫、ソウ君なら 大丈夫だよ!」


ソウジ「…ユイカ…っ。ありがとう…」


ソウジM「灯篭流し…還って来た死者の魂が迷わぬように、導く灯り…皆10年も傍で守ってくれてたんだな…。こんな寝坊助な俺の事、見捨てずにいてくれたんだな」


ソウジ「もう大丈夫だ。安心しろ、お前らがちゃんと還れるように、流すから…来年も、再来年も…何度だって 流すから…だから、さよならなんかじゃない!」


ソウジ「…また逢おうな!」


【花火が上がる 3人が笑ってる気がした】




END



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灯篭流しと夏の空 ねむりねずみ@まひろ @sibainu_uta

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