俺の親友(♀)がイケメンすぎて色々とヤバい

富士松 

第1話 俺とアイツ

「優希、今度の土曜日一緒に映画でも行かないかい?」


 ちょうどお気に入りのラノベが佳境に入っており、ワクワクドキドキしながら次のページをめくろうとしたとき、声を掛けられた。いつも通り透き通る風のような声だと思った。


「ぅえ映画?俺と?」


「どうかな?」


「その日はバイトもないからええけど、なんか今やってたっけ?」


「うん。少し気になってるものがあってね」


 俺の前に座るヤツは憎らしいくらい整った顔立ちのそれはもう美人で、嬉しそうに目を細めて笑った。一応コイツ女子のハズなんだが、セミロング?くらいの微妙な髪の長さで、背も高いから美少女というか美人とか美女って言葉の方がしっくりくる。


 するとスマホの画面をこちらに向けて、映画館の公式サイトを見せてきた。


「って、これ恋愛モノじゃんかよ。俺と行くのか?」


「何か問題かな?」


 いや、別にいいんですけどね。ただ土曜日ともなると学生が他にも来る可能性があるわけで、つまりは知り合いと鉢合わせるかもしれないんですぜ? 

 別に恥ずかしいとかそういうのは無い……わけでもないけど、もっと不安な要素があるのだ。


「いや……まぁ、宮代がいいならいい…のか?」


「ふふ、何だいそれ」


「いやだって……」

 

 俺の微妙な返事に可笑しそうに笑う宮代は、とても楽しそうで、見てるだけでこちらも嬉しくなる。

 まぁ、俺が我慢すれば大丈夫だよな。コイツが楽しんでくれればそれでいいし。


 そんなこんなで、今週の土曜日に映画に行く約束をし、その後はどこに行きたいかとか何を食べたいかとかそんな話をしながら、放課後の教室で駄弁っていた。






キーンコーンカーンコーン


「おや、そろそろ下校時刻だね。行こうか」


「はいよ」


 2人で荷物を持ち、教室を出たタイミングで声を掛けられた。


「あ、晶先輩〜! どうしたんですか〜こんな時間まで」

「今からお帰りですかぁ〜?」


「こんにちは。うん、そうだよ」


 あちらも同じく2人の女子生徒だ。宮代を見るなり駆け寄ってきた。前に見たことがある女子たちで、確か放課後に宮代と帰ってたとき遭遇して、見事除け者にされた記憶がある。べ、別に悲しくなんてないし!!


 まぁこんな感じで、宮代は優れた容姿を含め、紳士的な性格なので女子生徒から人気が高い。このように出待ちみたいなこともしょっちゅうある。なのでまたコイツらか、とある意味いつも通りのパターンに呆れつつも俺はスマホをいじり出し、サッと気配を消す。ここでの俺は邪魔者だからね。


「私たちも部活終わって今帰るとこなんですけど〜、3人で帰りません?」

「色々お話ししたいですしぃ〜」


 強気だなオイ!この子俺のこと見えてて3人、ってあえて強調したよ。うぅ胃が痛い。

 

 これが俺の気にしていたことだ。このように男子のみならず女子からも人気のある宮代は校内でとても有名。もし恋愛映画なんか2人で見に行ったら変な噂が立つし、確実に俺の身が危ない。


 宮代とは付き合ってるわけじゃないが、仲はいいと思っている。だからこの距離感を保ちたいし、誰かに壊してほしくもない。俺みたいな凡人が高望みするのは危ないってことは身をもって知ってる。


「じゃあ、みんなで帰ろうか」


 て思っていてもコイツが俺のことを一番に考えてくれることはよく分かってる。俺のことなんて気にしなくていいのに。


「えぇ〜、いいですよ薪村先輩は」

「そうですよぉ〜、3人の方が盛り上がりますしぃ〜」


 とうとう直接的に俺を排斥しだしたなコイツら。

 まるで俺を嘲笑うような目に俺は嫌悪感しか

感じなかった。でも我慢我慢。


「気にすんな、女子だけの方が話しやすいこともあるだろうし、俺先に帰るわ」


 そう言って、半ば逃げるように3人に背を向け早足で去ろうとするが、一歩すら踏み出すことなく手を掴まれた。


「帰さない」


「……ぉぃ」


 小声で宮代にだけ聞こえるように言うものの、本人の意思は固いようで掴んだ手の力は全然緩んでくれない。それどころか宮代は「あのさ…」と苛立つような口調で女子たちに向き直すと言い放った。


「やっぱり優希と2人で帰るよ。よく考えれば君たちと話したいことなんてないし、何より……私の友人をそんな風に言う人たちと一緒になんて居たくないよ」


 女子たちは呆気にとられたようで、何か言うどころか固まってしまってる。ていうか俺も驚いている。その間に俺は宮代に手を引かれその場から連れて行かれてしまった。


 俺が我慢すればいい話なのに……バカだなこいつ。

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