異星の同胞達
【異星の同胞:異なる星の住人でありながら、言語や文化、歴史的運命を共有し、強い同族意識によって結ばれた集団。または異なる星の住民ながら血が繋がっている集団、あるいは国家を構成する民衆を指す。】
「……流石に、ここまで耐えるとは思わなかったわぁ。」
演奏開始からどれだけ時間が経っただろうか。少なくとも数時間以上は経っている気がする。
デイゴアモスの触手の速度と威力が上がり、教皇の神聖魔法の数も減ってきた。既に虫の息に近い。
「震恐魔法は恐怖感情を物理的な宝石に変換して相手にぶつける魔法よぉ。更に宝石が多ければ多いほど恐怖の強度は増していく。マイナスエネルギーもちょっと使う複雑でエレガントな魔法だけどぉ、ワタシはあんまり好きじゃないわねぇ。」
触手の一撃が教皇を吹き飛ばす。教皇は受け身を取って直ぐに立ち上がるが、魔法を使う余裕は無い様だった。
「はッ!!随分お喋りが過ぎるんじゃねぇの?俺チャンもそろそろ疲れて来たが、お前もバテて来てるんじゃねぇの?」
触手の攻撃を避け、魔法を放つ。だが、触手の勢いは止まらない。
「ふふふ。忘れてないかしらぁ?
「ちッ!!」
「それにワタシは災害級とも戦ったことがあるのよぉ!!神官服のお子ちゃま一人で勝てる相手じゃ無いわぁ!!」
「長ったらしい自画自賛ご苦労さん!!」
「お姉ぇさんだから教えてあげてるのよぉ!!感謝しなさい!!」
デイゴアモスは口争いですら上回ろうとしていた。
演奏を続けている演奏者達の中には涙を流しながらも必死に演奏を続ける者もいる。だが演奏が終わるまで、演奏を止めることは出来ないのだ。
演奏を途中で止めるということは、この場にいる全員の死を意味するからだ。同時に教皇に対する侮辱にもなる。
「トドメよぉ!!」
デイゴアモスの触手が奏者達目掛けて一斉に襲い掛かる。教皇はいくつかの触手抑えながら、自らを盾にした。
「ぐっ……がああああっ!!!!」
教皇は妖しく発光する桃色の触手に貫かれる。それだけでは終わらず、貫いた内側から魔法を流し込み、教皇の身体を内部から破壊する。
「……」
「……終幕ね。」
触手が引き抜かれ、宙に固定されていた教皇は地面に叩きつけられる。もう動くことは叶わない。
「さてと、お邪魔蟲も消えたことだし。演奏……止めてもらうわよ。ワタシも身体も粒子になりかけてるの。勿論、いい演奏だけどねぇ。」
触手が演奏者達に伸びていく。だが、演奏が止まることは無い。
「あらぁ?」
触手を伸ばそうとしたデイゴアモスだったが、何故か触手を止めた。
「(……教皇の死体何処に行ったんだ?)」
俺も違和感を拭えない。数秒目を離したとはいえ、死体が消えるなんて有り得るのか?
そう思った瞬間、触手が数本切断された。
「……まさかアンタも復活系スキル持ち!?」
「オラッ!!第二ラウンド開始だクソッタレ!!」
触手を切断した正体は、どこからともなく現れた教皇だった。神官服も新品同様になっている。
「今しかねぇぞ!!動揺している内に決めちまえ!!」
教皇が叫ぶ。その言葉を聞いて、指揮者が力強く指揮棒を振るう。
あの時と同じだ、全員の呼吸がピタリと合わさり、一つ一つの音に魂が籠っている。
《儀式が成立しました。祝殺が発動されます。》
デイゴアモスと教皇を閃光が包み込む。そして……
――――――――――――――――――――――――――
リムゥニアがこの宇宙の再創造を開始してから、幾星霜。彼は三つの空間を作り出した。
一つ目は“劇場”と呼ばれる空間。
二つ目は“楽園”と呼ばれる空間。
三つ目は“黄泉”と呼ばれる空間。
宇宙の中に宇宙を創る行為は彼にとって十八番中の十八番であり、彼の能力も相まって瞬く間に完成した。
「おじさん。どうして生物は身体・精神・霊魂で出来ているの?精神と霊魂って何が違うの?」
とある日、イザベルはリムゥニアにそんな質問をした。
「そうだね……じゃあ、最初の質問に答えようか。三位一体って知ってるかい?」
イザベルは首を横に振る。
「三つの要素が密接に関係して、一つの個体を形成しているという考え方だね。そうだな……今日のおやつのドーナツとケーキと紅茶みたいな感じかな。」
イザベルは目を輝かせる。リムゥニアはそんな様子を微笑ましく思いながら続ける。
「次の質問だね。精神と霊魂、どちらも身体に宿るものだ。でも精神は壊れる可能性があるけど、霊魂は壊すことが出来ない……勿論、例外もあるけれどね。」
リムゥニアは少し顔を顰める。イザベルはそんな様子に気付かず、話に夢中になっていた。
「霊魂は再利用が出来るという面でも精神とは異なってる。身体や精神が壊れても、霊魂だけは壊れない。だから私は楽園と黄泉を用意したんだよ。」
イザベルはこの時、初めて首を傾げた。
「霊魂が壊れないならずっと増える続けるよ?そしたらいつか宇宙を覆い尽くしちゃうんじゃないの?」
「確かにその発想は正しいね。現実として、それが原因で滅んだ宇宙は数え切れない程ある。」
リムゥニアはイザベルの頭を撫でて、静かに言った。
「だから霊魂を混ぜる技術が生まれた。」
この時リムゥニアの表情は、イザベルが今まで見たことがない程に悲しげだった。その表情を見たイザベルは心配そうに見つめながら聞いた。
「おじさん悲しいの?大丈夫?」
「……霊魂の加工は高等な技術なんだ。簡単にはいかないし、代償も大きい。失敗した者の末路は大抵悲惨なものだよ……皮肉だね、滅びから逃れる為に生み出した技術が、更なる悲劇を生み出してしまうなんて……」
リムゥニアは寂し気に呟いた。イザベルはこれ以上何も聞かず、ただ黙っていた。
それから更に数え切れぬ程の年月が流れた。その年月の中、リムゥニアが拠点とする“劇場”には時折、客が訪れる。
時折やって来る彼等の姿は、目視するだけで精神を壊す様な形をした説明し難き異形の者達だった。彼等とリムゥニアは例外なく言語を介さない意思疎通方法を行っていた。
──同胞よ。何故その役割を担おうと思ったのだ?
──私にとって此処が墓標なのだ。もう旅をする気力は無い。
──同胞よ。それはつまり、託すということか。
──然り。彼方の
──道理だ。次に逢う時、互いに良い報告が出来れば幸であるが。
──同意。この場に居ない同胞達にも宜しく伝えておいて頂きたい。
──承知。
そして異形の者達は劇場から消えていった。その様子をイザベルは怯えながら、同時に歓喜しながら観察していた。イザベルから見れば、リムゥニアと異形の者達が向かい合っているだけ。理解出来る筈も無い
だが、一つだけ
それはリムゥニアの存在こそ、この宇宙にとって最大の神秘であり、退屈を紛らわす究極の娯楽だということを。
――――――――――――――――――――――――――
現在のステータス
生命力:B
魔 力:C
体 力:C
攻撃力:B
防御力:C
魔力攻:D
魔力防:D
走 力:B
現在使用可能なスキル
●身体、精神、霊魂に影響するスキル
『旋律』音や歌声を響かせ、自分や他者に影響を与えるスキル。
『鑑定』情報を調べ、表示するスキル。※現在表示できる情報は全情報の10分の1である。
『簡易演算(レベル1)』簡単な計算を解きやすくし、記憶力や思考力を高める。
『仮説組立(レベル5)』考察によって生まれた仮説を組み合わせて信憑性がある考えを導き出す、また記憶力や思考力を高める。
『解読』文や言語を理解するスキル。
『敵意感知』近くにいる人族や魔物の敵意を感知するスキル。
『熱感知』目視可能な範囲の温度変化を感知するスキル。
『多重加速(レベル2)』加速を重ねることにより、更に速度を上昇させるスキル。
『大蛇の育成者』タイタンの幼体を育てる者、レベルアップ時にタイタンのスキルを獲得することがある
●技術
『解体技術』解体の技術を高めるスキル。対象はモノだけではない。
『加工技術』加工の技術を高めるスキル。
『貫槍技術』貫通に特化した槍の技術を高める。
『斬槍技術』斬撃に特化した槍の技術を高める。
●耐性
『寒冷耐性(レベル6)』寒さを和らげて、活動しやすくする。
『苦痛耐性(レベル4)』痛みを和らげて、活動しやすくする。
『毒耐性(レベル4)』毒を弱体化させて、活動しやすくする。
『酸耐性(レベル5)』触れた酸を中和させて、活動しやすくする。またこのスキルを発動すると、触れた酸と同質量の水が生成される。
『塩基耐性(レベル3)』触れた塩基を中和させて、活動しやすくする。またこのスキルを発動すると、触れた酸と同質量の水が生成される。
『爆音耐性(レベル2)』爆音を和らげて、活動しやすくする。
『風圧耐性(レベル1)』風や衝撃に対するダメージを和らげて、活動しやすくする。
『恐怖体制(レベル1)』迸る恐怖を和らげて、活動しやすくする。
●魔法
『火魔法(レベル4)』火を操る魔法。
『水魔法(レベル3)』水を操る魔法。
『風魔法(レベル3)』風を操る魔法。
『時魔法(レベル4)』時を操る魔法。
『結界魔法(レベル1)』障壁を作り出したり、対象を拘束する魔法。
『生活魔法』モノを綺麗にしたり、簡易的な回復を行う。
●加護
『死者の加護』死した者から生きる者に与えられる加護。
『象兵の加護』ヤコバクから異種族に与えられる加護。
『大蛇の加護』タイタンから異種族に与えられる加護。
現在の持ち物
銀の槍(緑王):ヴィクター・アガレスの槍。オークロードの額にあった宝石の欠片で強化し緑王という名前が刻まれた。
冒険者カード:名前、性別、年齢が書かれたカード。特殊な魔法道具が使われているため個人を特定できる。
毛布:ハウンドの皮をつなぎ合わせた物。粗末だが、トモヤがこの世界で初めて作ったもの。
黄色の水晶:エレノアからのプレゼント。微かにオーラを感じる。
デモカイガの繭:デモカイガは卵から双子の幼虫が生まれ、その双子の繭は空間が捻じ曲げられたかの様に繋がっている。その性質を利用し音声を共有することが出来るが、一度しようすると繭の中から成虫が飛び出して使えなくなる。片方の繭をミズキ達が所持している。
グランベードの遺石︰グランベードが消滅時に遺した結晶。微かな意志を感じる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます