群雲から乳を搾る者共
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「トモヤ様、この度は本当にありがとうございました。ギルド職員一同、感謝しております。」
俺は街に戻り、ギルドに入ると受付嬢から深々と頭を下げられてしまった。
「治療を。」
受付嬢がそう言うと、奥から白いギルド制服を着た男性が俺の前にやって来た。どうやら優れた治療魔法の使い手らしい。
「トモヤ様がオークの攻撃で重傷を負って気絶した時も彼が治療を致しました。」
「今度は内臓ですか……派手にやりましたね。」
受付嬢が説明し終えると、男性は苦笑いしながら俺の治療を始めた。男性によると水圧による影響で、内蔵がかなり損傷しているようだ。
「一応、最低限の治療をさせて頂きました。まだ完治には至っておりませんので、自宅や宿泊施設内で安静にして下さい。」
そう言って男性は一礼すると、ギルドの奥の部屋に戻っていった。俺はアベルさんの家に帰ると、アベルさんやアリシアと軽く談笑してからベッドで横になった。リザンテは脱皮疲れなのか、俺よりも先に眠っていたようで、静かに寝息を立てていた。
翌日、ギルドに顔を出すと具体的にいつ完治するのか尋ねた。男性の診断によれば、一週間程で完治するだろうとのことだった。それまで街から出ないようにと釘を刺されてしまった。
「急に暇になっちまったな。」
二つ名持ちの討伐も終わり、元々予定は空けていたが、いざ時間が出来たとなると何をしていいか分からなくなる。とりあえず街内の依頼を探したが、特に依頼は見つからず、そのまま帰ろうかと考えていると、雨が降り出した。
「……どうすっかな。」
俺は空を見上げる。今はまだ小振りだが、次第に強くなりそうな予感がしていた。これはゼーラント王国に行ったからこそ分かる感覚だが、アガレス領は雨の都市と呼ばれているだけあって、他の都市と比べて特に雨量が多い。
「このままだとずぶ濡れになりそうだし、大人しく帰るか。」
俺は踵を返し、アベルさんの家に向かって歩き出す。たまにはこういう日も必要だろう。雨が降る音を聴きながら歩くのも中々良いものだった。
――――――――――――――――――――――――――
眼前に広がる大海原に向けて眼帯の男は網を投げ入れる。船長だ。船長の投げた網の結果はすぐに出た。
大漁だ。魚型の魔物が大量に獲れた。特殊な網を使っているのか、魔物達は暴れる様子も無く、船長は壺の中に次々と入れていく。
「流石の腕ですね。」
隣にいた男、エウテルベが賞賛の言葉を送る。その言葉に対して、船長は特に表情を変えること無く、ただ一言呟いた。
「鯨を追う前はただの船乗りだったからな。」
その瞳は獲物を狙う鷹のように鋭く光っている。
「そんな貴方が我々に同行した理由は?」
「俺は別に復讐心で奴等を追ってる理由じゃねぇよ。奴等を追うよりも面白ぇことが起こるならそっちに行くだけだ。」
「少し意外ですね。貴方が今まで殺害したガリアン・ノアムーンの数は十六体。多くの船舶が大陸を行来できるようになったのは貴方のお陰と言ってもいい。」
船長は鼻で笑う。
「だったらガリアン・アトラストは誰が減らしているんだ?そんなに海って奴は優しいもんかよ。」
船長は海面を睨む。エウテルベは苦笑いしながら答えた。
「馬鹿にする意図はありません。ただ、貴方の船団のことを私は深くは知りませんから。」
今までの航海の記録を調べておきながら、何が深くは知らない、だ。そう思いながらも船長は何も言わなかった。
船上で会話をしている二人の元に、船員の一人が慌てて走って来た。船長とエウテルベは同時に振り返り、船員の報告を聞く。
「一難去ってまた一難、か……」
船員の報告は、この船を狙う集団がいるというものだった。船長はその集団が何者か察する。
「あの鳥野郎共は船乗りしか狙わねぇ。」
それが鳥人族としての本能なのか、あるいは下等な生物だと思い込んでいた人族が恐れることなく海に出ていることが許せないのか、それは分からない。とにかく彼等は船舶や船乗りを襲う。
「全く……また厄介なことになっちまったぜ。」
船長はそう言いつつも、どこか楽しそうに笑っていた。
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現在のステータス
生命力:B
魔 力:C
体 力:C
攻撃力:B
防御力:C
魔力攻:D
魔力防:D
走 力:B
現在使用可能なスキル
●身体、精神、霊魂に影響するスキル
『旋律』音や歌声を響かせ、自分や他者に影響を与えるスキル。
『鑑定』情報を調べ、表示するスキル。※現在表示できる情報は全情報の10分の1である。
『簡易演算(レベル1)』簡単な計算を解きやすくし、記憶力や思考力を高める。
『仮説組立(レベル5)』考察によって生まれた仮説を組み合わせて信憑性がある考えを導き出す、また記憶力や思考力を高める。
『解読』文や言語を理解するスキル。
『敵意感知』近くにいる人族や魔物の敵意を感知するスキル。
『熱感知』目視可能な範囲の温度変化を感知するスキル。
『多重加速(レベル2)』加速を重ねることにより、更に速度を上昇させるスキル。
『大蛇の育成者』タイタンの幼体を育てる者、レベルアップ時にタイタンのスキルを獲得することがある
●技術
『解体技術』解体の技術を高めるスキル。対象はモノだけではない。
『加工技術』加工の技術を高めるスキル。
『貫槍技術』貫通に特化した槍の技術を高める。
『斬槍技術』斬撃に特化した槍の技術を高める。
●耐性
『寒冷耐性(レベル6)』寒さを和らげて、活動しやすくする。
『苦痛耐性(レベル4)』痛みを和らげて、活動しやすくする。
『毒耐性(レベル1)』毒を弱体化させて、活動しやすくする。
『爆音耐性(レベル2)』爆音を和らげて、活動しやすくする。
『風圧耐性(レベル1)』風や衝撃に対するダメージを和らげて、活動しやすくする。
●魔法
『火魔法(レベル4)』火を操る魔法。
『水魔法(レベル3)』水を操る魔法。
『風魔法(レベル3)』風を操る魔法。
『時魔法(レベル4)』時を操る魔法。
『結界魔法(レベル1)』障壁を作り出したり、対象を拘束する魔法。
『生活魔法』モノを綺麗にしたり、簡易的な回復を行う。
●加護
『死者の加護』死した者から生きる者に与えられる加護。
『象兵の加護』ヤコバクから異種族に与えられる加護。
『大蛇の加護』タイタンから異種族に与えられる加護。
現在の持ち物
銀の槍(緑王):ヴィクター・アガレスの槍。オークロードの額にあった宝石の欠片で強化し緑王という名前が刻まれた。
冒険者カード:名前、性別、年齢が書かれたカード。特殊な魔法道具が使われているため個人を特定できる。
毛布:ハウンドの皮をつなぎ合わせた物。粗末だが、トモヤがこの世界で初めて作ったもの。
黄色の水晶:エレノアからのプレゼント。微かにオーラを感じる。
デモカイガの繭:デモカイガは卵から双子の幼虫が生まれ、その双子の繭は空間が捻じ曲げられたかの様に繋がっている。その性質を利用し音声を共有することが出来るが、一度しようすると繭の中から成虫が飛び出して使えなくなる。片方の繭をミズキ達が所持している。
グランベードの遺石︰グランベードが消滅時に遺した結晶。微かな意志を感じる。
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