雨風が吹き抜ける街 アガレス領

帰り梅雨

【帰り梅雨︰返り梅雨、戻り梅雨とも。一度梅雨が明けたようになって何日も暑い乾いた晴天が続いた後に、再び天気が崩れてしまうこと。】


馬車がゴトゴト揺れる。流石にこの揺れは、何度経験しても慣れないな……


「うっぷ……気持ち悪い……」


学園に行く時とデジャブを感じる。学園で馬に乗る経験をしたが、その時は全然、酔うことは無かったのに馬車はダメなのか?


「もうすぐ着きますよ。」


馬車引きが陽気に言った。気分を紛らわすために馬車の窓から外を覗くと、アガレス領の街を囲う外壁が見えて来た。帰って来たのだと実感する。

あの怨霊の騒ぎから三ヶ月が経った。ミヅキ達は、俺達と話した後、三日後には隣の大陸へと旅立った。ただ冒険者達の間では有名な船長とその部下が港から行方を眩ませたという情報を聞いていたアキオの表情は少し曇っていた。


「それにしても三ヶ月か。」


エレノアさんは学園での責務を全うした。それでも三ヶ月という時間が過ぎてしまった。だが、それで助かった部分も大きい。学園設備が整っていたことや治療魔法などの回復に関する魔法の使い手が大勢いたことでリゼは無事に回復し、プロイツ王国に留まった。

俺の話をするなら、発動できる魔法が増えた。まず水魔法と風魔法がそれぞれレベル3、時魔法はレベル4になった。そして新しく結界魔法を獲得した。決して無駄な時間を過ごしていたわけではない。


「……着いたか。」


馬車から降りて門へ行く。


「よう兄ちゃん。久しぶりじゃねぇか!!」


皮製の装備を着た門番の人が話しかけてくる。


「お久しぶりです。」


あれ?鉄製の装備を着た門番の人がいない。


「あの鉄装備の人は?」

「ああ、アイツか……」


門番の人の顔が曇る。


「……何かあったんですか?」

「実はな……オメデタだよ。」

「えっ!?」


確かに真面目そうな人だったし、相手がいても不思議じゃないけど……


「あいつ……暫くは仕事に集中したいだのなんだのほざいていたのに、結局は女作ってたんだよ!!」

「そ、そうなんですね……」


なんと言えば良いのか分からない。とりあえず心の中でおめでとうと言っておこう。


「まあ、同僚の俺が言うのもアレだけどさ、幸せになって欲しいぜ……」

「……ですね。」


門番さんは羨望と嫉妬が入り混じった複雑な表情をしていた。当然、同僚として祝福したい気持ちもあるんだろう。ただ、やっぱり羨ましいが勝っているのだろうか? でも、門番の人の言う通りだろう。幸せになってくれることを祈るばかりだ。


「よし。荷物確認は終わったぞ。兄ちゃんも話、聞いてくれてありがとな!」

「いえいえ。こちらこそありがとうございました。」


こうして会話をした後、俺はまずアベルさんの家に挨拶に行った。


「お帰りなさいトモヤさん。お待ちしていました。」

「ただいま戻りました。アリシアは一緒じゃ無いんですか?」


もう朝日が昇ってからそれなりに時間が経っているのに、家の中にアリシアの姿が無いので気になったのだ。


「まだ寝ていますよ。昨日は遅くまで起きていたみたいですから。」


俺の質問に対してアベルさんは苦笑いしながら答えた。

どうやらアリシアはまだ寝ているらしい。


「そうですか……」


とりあえず起こさない様に静かに家に入った。相変わらず広い家だなと思う。荷物を自分の部屋に置き、再びリビングに向かう。


「ハウンド肉のスープと黒麦パンがありますけど食べますか?」


長旅に疲れているだろうと気を使ってくれたらしい。丁寧に作られた家庭料理を食べながら、これからのことを相談した。


「それでは次はプロイツ王国に……」

「はい。アガレス領で過ごしながら、少しずつ準備をして行こうと思います。」


その後、アベルさんと世間話をしながら食事を終えた。今まで貯めていた金貨や銀貨をアベルさんに渡そうとすると……


「頂けませんよ……」と断られてしまったが……

「いえ、受け取ってください。」


俺としてもこれ程、お世話に成った人に何も返せないというのは気が引ける。それにお金ならまだまだある。


「ですが……」


それでも渋るアベルさんに俺は無理矢理お金を渡した。すると諦めてくれたのか受け取ってくれた。

だが、少し物音を立ててしまったのか……


「お父さん……誰か……お客さん?」


アリシアが目をこすりながら現れた。


「……ト、トモヤ!?」


まさか俺が帰って来ているとは思わなかったらしく頬を赤く染める。そして盛大に転んだ。その語、すぐに起き上がり、走って部屋に戻っていた。数分後……


「お父さん!!どうして言ってくれなかったの!!」


寝間着から普段着に着替えたアリシアは頬を膨らませながらアベルさんに迫る。


「すっかり熟睡していたアリシアを起こすのも悪いと思ってね……」


アベルさんは苦笑いしながら答える。妙な懐かしさを覚えながら父娘の会話を見守る。その後、俺も会話に混ざった。リザンテも久しぶりにアリシアに撫でられて嬉しそうだった。


――――――――――――――――――――――――――

現在のステータス

人族ホモ・サピエンス︰レベル13

生命力:B

魔 力:C

体 力:C


攻撃力:B

防御力:C

魔力攻:D

魔力防:D

走 力:B


現在使用可能なスキル

●身体、精神、霊魂に影響するスキル

『旋律』音や歌声を響かせ、自分や他者に影響を与えるスキル。

『鑑定』情報を調べ、表示するスキル。※現在表示できる情報は全情報の10分の1である。

『簡易演算(レベル1)』簡単な計算を解きやすくし、記憶力や思考力を高める。

『仮説組立(レベル5)』考察によって生まれた仮説を組み合わせて信憑性がある考えを導き出す、また記憶力や思考力を高める。

『解読』文や言語を理解するスキル。

『敵意感知』近くにいる人族や魔物の敵意を感知するスキル。

『熱感知』目視可能な範囲の温度変化を感知するスキル。

『多重加速(レベル2)』加速を重ねることにより、更に速度を上昇させるスキル。

『大蛇の育成者』タイタンの幼体を育てる者、レベルアップ時にタイタンのスキルを獲得することがある


●技術

『解体技術』解体の技術を高めるスキル。対象はモノだけではない。

『加工技術』加工の技術を高めるスキル。

『貫槍技術』貫通に特化した槍の技術を高める。

『斬槍技術』斬撃に特化した槍の技術を高める。


●耐性

『寒冷耐性(レベル6)』寒さを和らげて、活動しやすくする。

『苦痛耐性(レベル4)』痛みを和らげて、活動しやすくする。

『毒耐性(レベル1)』毒を弱体化させて、活動しやすくする。

『爆音耐性(レベル2)』爆音を和らげて、活動しやすくする。

『風圧耐性(レベル1)』風や衝撃に対するダメージを和らげて、活動しやすくする。


●魔法

『火魔法(レベル4)』火を操る魔法。

『水魔法(レベル3)』水を操る魔法。

『風魔法(レベル3)』風を操る魔法。

『時魔法(レベル4)』時を操る魔法。

『結界魔法(レベル1)』障壁を作り出したり、対象を拘束する魔法。←new

『生活魔法』モノを綺麗にしたり、簡易的な回復を行う。


●加護

『死者の加護』死した者から生きる者に与えられる加護。

『象兵の加護』ヤコバクから異種族に与えられる加護。

『大蛇の加護』タイタンから異種族に与えられる加護。


現在の持ち物

銀の槍(緑王):ヴィクター・アガレスの槍。オークロードの額にあった宝石の欠片で強化し緑王という名前が刻まれた。

冒険者カード:名前、性別、年齢が書かれたカード。特殊な魔法道具が使われているため個人を特定できる。

毛布:ハウンドの皮をつなぎ合わせた物。粗末だが、トモヤがこの世界で初めて作ったもの。

黄色の水晶:エレノアからのプレゼント。微かにオーラを感じる。

デモカイガの繭:デモカイガは卵から双子の幼虫が生まれ、その双子の繭は空間が捻じ曲げられたかの様に繋がっている。その性質を利用し音声を共有することが出来るが、一度しようすると繭の中から成虫が飛び出して使えなくなる。片方の繭をミズキ達が所持している。

グランベードの遺石︰グランベードが消滅時に遺した結晶。微かな意志を感じる。

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