杉森林の中の雑貨屋

【アトレナリザード︰非常に気性の荒い蜥蜴型の魔物。その気性の荒さから暴竜とも恐れられている。刺々しい鱗に覆われているため近付くことすら困難である。主な生息地は平原だが、火山地帯に生息している個体もいる。】


「ここ……雑貨屋まであるのかよ……」


俺は今、学園内を歩いていた。解剖室や図書館、法学部などがある本館を抜け、中庭に辿り着いたところで、俺は雑貨屋を発見した。まあ中庭と言ってもとんでもない広さなのだが……恐らくアガレス領よりも広いのではないだろうか。


「何が売ってるんだろうな……」


そう思いながら店内に入ると、そこは廃屋敷を改装したような造りになっていた。


「いらっしゃいませ。」


奥から現れたのは茶髪の青年だった。


「あの……ここは何を売っているんですか?」

「えっと……アクセサリー型の魔法道具やポーションですね。」

「ちょっと見せてもらえますか?」

「もちろん。」


俺は棚にある商品を見て回る。どれも綺麗な装飾が施されている。指輪や腕輪、ネックレスなど種類は様々だ。その中で俺は一つのブローチを手に取った。銀細工で出来た花びらが特徴的なものだ。

俺はそれを店主の元まで持っていき、購入することに決めた。値段は銀貨四枚だった。

それにしても学生用にしては少し値段が高めな気がするが……俺は代金を支払うと、購入したブローチを胸ポケットに入れる。


「あのここってもしかして特別なお店なんですか?」


俺がそう尋ねると、店主は少し考えた後にこう答えた。


「この雑貨屋は一日三人までしか利用できないんですよ。まあだからと言っても客数はそこまで多くないですけどね。」


確かにこの大きさの建物にしては人が少ないと思ったが、そういうことだったのか……


「それって儲かるんですか?」


俺の質問に、店主は再び考える素振りを見せる。その反応を見るに、あまり儲けは出なさそうな感じだ。だからこそそれなりに高い値段設定をしているのだろう。


「長々とすみません。それじゃそろそろ失礼します。」

「いえいえハガヤさん。またご利用くださいね。」


え?なんで俺の苗字を……名乗ってないよな?驚きながら振り返るが、そこには雑貨屋は無く巨大な大木が立っていた。


「はあ!?」


鑑定を発動するが、ハイライン杉としか表示されない。


「あら護衛団の……」


俺が混乱していると、後ろから声をかけられた。ミネルさんだ。


「どうされました?そんな慌てて。」

「いやさっきまでここに雑貨屋があったはずなのに無くなってしまって……」

「ああ、それは副学長である息子の力ですよ。」

「え?どういうことですか?」

「この学園の中庭は見ての通りとんでもない広さでしょう?当然魔物も大量に出現してしまうなんです。そこで息子が魔物の討伐しながら雑貨屋を開いているというわけです。」

「なるほど……」

「ちなみに雑貨屋は一時間毎に転移します。そもそも見ること自体が難しいのですが……」

「じゃあ運が良かったみたいですね。それにしても何故か俺の苗字を知っていましたが……」

「息子のことですので、鑑定で調べたんじゃ無いでしょうか?」

「え?鑑定って人の名前ですら分かるんですか?」

「はい。と言っても普通の人族ではただ数字の配列にしか見えないようですが。」

「へぇ……」

、息子はレベル3に相当するそうです。」


あまりのレベルの違いに俺は絶句してしまった。


「それでは私はここで。」

「は、はい!お疲れ様です!」

「それとまた息子に会ったらよろしくお願いします。」

「分かりました。」


しばらくハインライン杉の樹海を散策し、俺は本館にある自室に戻った。


「キュイ!」


部屋に入るとすっかり元気になったリザンテが出迎えてくれた。


「もう大丈夫なのか?」

「キュイ!!」

「そっか……良かった。」


俺はリザンテの頭を撫でる。最近は服の胸ポケットに入るサイズだったが、脱皮を繰り返しているうちに60cmくらいの大きさにまで成長した。白い鱗もツヤが出ていてとても綺麗だ。当然、強度も増している為、今ならゴブリンの噛み付き位なら傷一つ付かないだろう。


「生まれた時は弱毒だったけど、今はどんな状態なんだ?」


俺は鑑定を発動する。


《タイタン幼体の毒︰生まれた直後は手負いの魔物のトドメを刺す程の毒性しかない。成長する過程で毒性は強力になり、最終的には身体が一瞬で溶ける程の猛毒や数滴で息の根を止める劇薬にもなる。》


「うわぁ……」


俺はその文章を読んで、少し引いてしまった。


「キュゥ……」

「いや別にお前のことを嫌いになった訳じゃないからな?」


ステータスを見てみるとリザンテは既に『猛毒耐性(レベル5)』を獲得している。


「俺より高い……。」


俺は毒耐性なのに対して、リザンテは猛毒耐性だ。言うまでもなく毒耐性の上位互換スキルなのは間違いないだろう。


「まあ種族特性みたいなものかな……」


リザンテの成長に喜びつつ、俺は眠りについた。


――――――――――――――――――――――――――

現在のステータス

生命力:B

魔 力:C

体 力:C


攻撃力:B

防御力:C

魔力攻:D

魔力防:D

走 力:B


現在使用可能なスキル

●身体、精神、霊魂に影響するスキル

『旋律』音や歌声を響かせ、自分や他者に影響を与えるスキル。

『鑑定』情報を調べ、表示するスキル。※現在表示できる情報は全情報の10分の1である。

『簡易演算(レベル1)』簡単な計算を解きやすくし、記憶力や思考力を高める。

『仮説組立(レベル2)』考察によって生まれた仮説を組み合わせて信憑性がある考えを導き出す、また記憶力や思考力を高める。

『解読』文や言語を理解するスキル。

『敵意感知』近くにいる人族や魔物の敵意を感知するスキル。

『熱感知』目視可能な範囲の温度変化を感知するスキル。

『多重加速(レベル2)』加速を重ねることにより、更に速度を上昇させるスキル。

『大蛇の育成者』タイタンの幼体を育てる者、レベルアップ時にタイタンのスキルを獲得することがある


●技術

『解体技術』解体の技術を高めるスキル。対象はモノだけではない。

『加工技術』加工の技術を高めるスキル。

『貫槍技術』貫通に特化した槍の技術を高める。

『斬槍技術』斬撃に特化した槍の技術を高める。


●耐性

『寒冷耐性(レベル4)』寒さを和らげて、活動しやすくする。

『苦痛耐性(レベル4)』痛みを和らげて、活動しやすくする。

『毒耐性(レベル1)』毒を弱体化させて、活動しやすくする。

『爆音耐性(レベル2)』爆音を和らげて、活動しやすくする。

『風圧耐性(レベル1)』風や衝撃に対するダメージを和らげて、活動しやすくする。


●魔法

『火魔法(レベル3)』火を操る魔法。

『水魔法(レベル1)』水を操る魔法。

『風魔法(レベル1)』風を操る魔法。

『時魔法(レベル1)』時を操る魔法。

『生活魔法』モノを綺麗にしたり、簡易的な回復を行う。


●加護

『死者の加護』死した者から生きる者に与えられる加護。

『象兵の加護』ヤコバクから異種族に与えられる加護。

『大蛇の加護』タイタンから異種族に与えられる加護。


現在の持ち物

銀の槍(緑王):ヴィクター・アガレスの槍。オークロードの額にあった宝石の欠片で強化し緑王という名前が刻まれた。

冒険者カード:名前、性別、年齢が書かれたカード。特殊な魔法道具が使われているため個人を特定できる。

毛布:ハウンドの皮をつなぎ合わせた物。粗末だが、トモヤがこの世界で初めて作ったもの。

黄色の水晶:エレノアからのプレゼント。微かにオーラを感じる。

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