雲蒸龍変
【とある平原︰大陸の北西部に位置する小さな平原。ガリア平原とそれほど距離は離れていないが、こちらは寒冷地域と言うよりはステップ気候に近い。】
「トモヤ!!」
俺達は待合室に案内されたのだが、そこで待っていたのはエレノアさんだった。エレノアさんはアガレス領を出る前から馬車に乗っていてたため、こうして顔を合わせてるのはあの時のお茶会以来だ。
改めて護衛団の任務を確認させて貰ったが、基本的に交代制で俺は夜間の護衛を行うそうだ。護衛団にも部屋が用意されて、そこに荷物を置くことになった。リザンテも部屋の中で未だにスヤスヤと眠っている。慣れない土地での移動で疲れてしまったのだろう。
しばらくすると待合室にキッチリとした白衣を着た老淑女が現れた。
「初めましてエレノア嬢とその護衛の皆さん。この学園の学長を勤めております、ミネル・フォンティーヌと申します。」
そして自己紹介を済ませた後、俺達はミネルさんの案内で学園内を見て回る。
「まずここが学園の解剖室になります。」
そう言ってミネルさんは部屋の扉を開ける。中に入るとコロッセオのような円形の部屋になっており、真ん中には手術台が置かれている。
「……これは凄いな……」
俺は思わず感嘆の声を漏らした。
「これは何の解剖をする為のものですか?」
「主に魔物ですね。稀ですが人族の死体が来ることもあります。勿論、事故死した者や処刑された罪人の死体ですが。」
「えっと……素人質問で悪いのですが何故、魔物を解剖する必要があるんですか?」
「魔物には独自の器官があり、それを調べることが技術の発展に繋がっています。ここ最近の技術発展により危険な海を超える貿易船も完成し、もう一つの大陸とも交流が可能となりました。」
もう一つの大陸と言った時、少しミネルさんの表情は暗くなった気がしたが……
「だからこそ戦争が始まってしまったことは本当に残念です。あちらでは海を超える貿易船を作ることなど数百年前から可能でしたからね……」
なるほど……もう一つの大陸とは技術格差があるのか。
「さて、次に行きましょうか。」
そうして次にやって来た場所は天秤を持った巨大な石灰像のある場所だ。
「ここは学園内でも法学について学ぶ場所で、ここで学んだ者達は王都の司法局に勤めます。」
そう言いながらミネルさんは石灰像を撫でる。
「この像は一体……」
「彼女はガリア帝国の伝説上に語り継がれている宰相にして裁判官、アメリア・イアルクスです。」
「ガリア帝国の伝説?」
「ガリア帝国の建国から発展までのお話ですね。」
そう言うとエレノアさんは説明を始める。
「今から一万年以上前、この大陸を支配していたのは妖精族と呼ばれる種族でした。人族は妖精族の支配する前からこの大陸に存在していたけど、その当時は山奥でひっそり暮らしていたらしいわ。当然、妖精族は山奥まで侵攻して来たのだけど……」
そこからミーシャさんが引き継ぐ。
「ドワイト・ガリアと呼ばれる青年が妖精族を討伐し、東北の地域にガリア帝国を築いたと言われています。その後、様々な民族や部族が集まり国は大きくなっていったそうです。」
「へぇ……そんな伝説があったんだな。」
「それでは話題に出たガリア帝国建国記の実物を読んでみましょうか。こちらの図書館にありますよ。」
「実物あるんですか!?」
「大陸最大の図書館ですので。」
それから俺達は図書館に移動するのであった。
――――――――――――――――――――――――――
「……コノ野郎!!」
ここはエイハブ山脈から北……つまり大陸の西北部に当たる平原地域。そこには多くの魔物達がいた。
彼らは言うならば、はぐれ者、ある魔物は群れから追い出されたはぐれ者であり、また別の魔物は仲間に殺されかけたはぐれ者であったり、とにかく色々な理由で群れから追放された魔物達が集まっている。そんな常に血の匂いが漂うこの場所に現れたのは黒い鱗のリザードマン、そう黒木龍司だった。
「オラッ!!」
レベル上げの為にエイハブ山脈に籠っていた彼だったが、遂にこの西北部の地に来たのだ。
「オラァッ!!!」
彼の拳がゴブリンを吹き飛ばす。吹き飛ばされたゴブリンは地面を転がり、やがて動かなくなる。
「チィ……マダマダ人化ノ取得マデ時間ガカカルナ……」
彼は舌打ちをしながら呟く。既に数百体の魔物を倒したのにまだレベルアップが見込めず、人化を獲得できない。これは彼にとって大きな悩みだった。
「蜥蜴ノ身体ニモ慣レテキタシ……今ノママデモ良イカ……イヤ良クネエナ……」
こうして今日も平原は血に染まっていく。
雲蒸龍変、雲が沸き上がり龍が現れる様子。即ち英雄が現れ活躍することを表現する四字熟語である。
――――――――――――――――――――――――――
現在のステータス
生命力:B
魔 力:C
体 力:C
攻撃力:B
防御力:C
魔力攻:D
魔力防:D
走 力:B
現在使用可能なスキル
●身体、精神、霊魂に影響するスキル
『旋律』音や歌声を響かせ、自分や他者に影響を与えるスキル。
『鑑定』情報を調べ、表示するスキル。※現在表示できる情報は全情報の10分の1である。
『簡易演算(レベル1)』簡単な計算を解きやすくし、記憶力や思考力を高める。
『仮説組立(レベル2)』考察によって生まれた仮説を組み合わせて信憑性がある考えを導き出す、また記憶力や思考力を高める。
『解読』文や言語を理解するスキル。
『敵意感知』近くにいる人族や魔物の敵意を感知するスキル。
『熱感知』目視可能な範囲の温度変化を感知するスキル。
『多重加速(レベル2)』加速を重ねることにより、更に速度を上昇させるスキル。
『大蛇の育成者』タイタンの幼体を育てる者、レベルアップ時にタイタンのスキルを獲得することがある
●技術
『解体技術』解体の技術を高めるスキル。対象はモノだけではない。
『加工技術』加工の技術を高めるスキル。
『貫槍技術』貫通に特化した槍の技術を高める。
『斬槍技術』斬撃に特化した槍の技術を高める。
●耐性
『寒冷耐性(レベル4)』寒さを和らげて、活動しやすくする。
『苦痛耐性(レベル4)』痛みを和らげて、活動しやすくする。
『毒耐性(レベル1)』毒を弱体化させて、活動しやすくする。
『爆音耐性(レベル2)』爆音を和らげて、活動しやすくする。
『風圧耐性(レベル1)』風や衝撃に対するダメージを和らげて、活動しやすくする。
●魔法
『火魔法(レベル3)』火を操る魔法。
『水魔法(レベル1)』水を操る魔法。
『風魔法(レベル1)』風を操る魔法。
『時魔法(レベル1)』時を操る魔法。
『生活魔法』モノを綺麗にしたり、簡易的な回復を行う。
●加護
『死者の加護』死した者から生きる者に与えられる加護。
『象兵の加護』ヤコバクから異種族に与えられる加護。
『大蛇の加護』タイタンから異種族に与えられる加護。
現在の持ち物
銀の槍(緑王):ヴィクター・アガレスの槍。オークロードの額にあった宝石の欠片で強化し緑王という名前が刻まれた。
冒険者カード:名前、性別、年齢が書かれたカード。特殊な魔法道具が使われているため個人を特定できる。
毛布:ハウンドの皮をつなぎ合わせた物。粗末だが、トモヤがこの世界で初めて作ったもの。
黄色の水晶:エレノアからのプレゼント。微かにオーラを感じる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます