ヒストリアイ

【記録:後々まで伝える必要のある事柄を書き記すこと。またその書き記したもの。】


「うわぁ……プロイツ王国とは全然違うんだねぇ……」

「確かプロイツ王国とゼーラント王国って隣接してるんだよな?」


俺は地図を広げる。


「うん。この白い城壁はプロイツ王国も囲ってるよ。帝国領地時代の名残かな?」

「それにしても帝国は北部にあったのに、領地にしては離れ過ぎじゃないか?もしかしたら何か理由があるのか。」

「そもそも帝国が滅亡する前から自治権が認められていたらしいね。まあ詳しいことは分からないけど……」


俺達が話していると突然、大声で叫ぶ声が聞こえてきた。


「おい!誰か捕まえてくれ!!スリだ!!!」


振り返ると人混みを掻き分けながら男がこちらに向かって走って来るところだった。リゼが俺の前に出て、男の腕を掴む。男は抵抗するが、リゼの力には敵わないようで直ぐに捕まった。リゼはそのまま男の背中に乗るように押さえ付ける。

騒ぎを聞きつけて、すぐに衛士がやって来た。


「おお!!プロイツのドラゴンキラー嬢ではありませんか!!」

「それにオークロード討伐者のトモヤ殿まで!?」


えっ?何で知ってんのこの人達。隣国のプロイツ王国で活躍しているリゼならともかく、ここからそれなりに距離があるアガレス領で生活している俺の名前まで知っているとは。

それから衛士達に事情を説明し、盗られた物は持ち主に返された。どうやらここ最近のゼーラント王国ではスリが多発するらしく、衛兵達はかなりピリついているそうだ。


「綺麗な街だけど、それだけじゃないみたいだね。」


リゼが苦笑いしながら言う。俺も同感だった。


「お二人とも、お待たせしました!」


ミーシャさんが戻ってきた。そして俺達は水路に浮かぶ小舟に乗って移動する。暫く進むと大きな建物が見えてくる。

あれが目的地である帝国立魔法学園のようだ。赤煉瓦造りの校舎と、それを囲うように作られた緑の庭園が美しい。これからしばらく滞在する場所に期待しながら、俺達は学園の門を潜った。


――――――――――――――――――――――――――

「第三回アヌンナキ会議を始めます。」

「前回は第四回じゃなかった?」


トゥルカウダックが指摘すると、クババが後ろから「あの退屈馬鹿は回数なんて覚える気も無いよ。」という感じの表情を浮かべている。

会議場所は前回と打って変わって、図書館の様な場所だ。巨大な本棚がいくつも並んでおり、壁一面は書物で埋め尽くされている。


「まあいいわ。それで議題は何?」

「今日は僕からなんだけどね。ヒスくんの部下がヒスくんを復活させようと動いているらしいよ。」

「あの生き残った奴らがね……また厄介な事をしてくれるわ。」


クババがため息を吐く。


「バランは捕捉できましたか?私はあの時にヒストリアイさんの部下の半数は死んだものだったと記憶していますが。」

「今確認したが、何故か全員生存しているようだな。」

「ふむ。儂は死んだと偽って生き延びたのだと思うぞ。奴らの中には奇術師もいたはず。」


イシュタムは冷静に自分の推測を述べた。


「……その可能性はあるね。」

「……不可能を除けば、残るのは……真実ということか。」

「楽園の記録を偽り、神すら騙す奇術ですか……確かにそれが出来るのは一人だけですね。」

「確かヒスくんの部下って……」

クレイオ朱槍エウテルベ最強の盾タレイヤ奇術師メルポルネ絶対愛テルプシエラ才能至上主義エトラ蓬莱の樹海ポニムヒムニア階級制度ウラニア過剰爆破カリオペラ劇場の悪魔の九人だ。」

「まあ私達アヌンナキとしては残りカスが何をしようと、どうでもいいことだけど。」

「そうですねぇ。彼等はですし。」

「それよりもヒスくんが本当に復活したらベルはどうするの?僕達はヒスくんが死ぬことを知っていた上で見殺しにした訳だけど。」

「あいつのことだから。微笑みながら許すと思うけどね。」

「ふふふ……どうでしょうね。もし復活するのではあれば……また騒がしくなりますね……」


珍しく会議に熱がこもってきたところで……


「はぁ。ヒストリアイ……何故お前がこの場に居ない?」


バランが誰にも聞こえないような声でため息を吐きながら呟いた。


――――――――――――――――――――――――――

「エウテルベ……忘れないでください……貴方にも家族と言える者達がいたことを……夢の様な時間があったということを……」


(そう呟きながら、我等が神ヒストリアイは人族に惨殺され命を落とした。)


「……懐かしい夢ですね……」


赤ローブに包まれた男が目を覚ます。


「旦那!!起きたんですかいぃ!!」


目の前で唾を撒き散らしながら喋る荒くれの男に、男は顔をしかめる。


「……近いから離れてください……それで、長老達はどうしました?」

「グヘヘ……」


男は胸元から干物の様なものを取り出し渡す。それが長老達の首だと理解するのに時間はかからなかった。

すると突然、ローブの男がいた場所に強烈な爆発が巻き上がる。だが当然のごとく、最強の盾により爆発は無効化される。


「随分なご挨拶ですね……テルプシエラにウラニア。」


そこには二人の人物が立っていた。一人は金髪オールバックの男、もう一人は黒髪ショートの少女だ。


「旦那!!」


荒くれの男も戦闘態勢に入る。


「……すすすすすいません!!テルプシエラさんがやれって言うからぁ……」


少女は慌てふためきながら弁明する。


「エウテウベ、テメェも非凡な部下を持ってるらしいな。それとテメェが寄越したゲカルドゲも優秀じゃねぇか、ポニムヒムニアの奴も喜んでいたぞ。」

「態々隣の大陸からお越しいただき、その様なお言葉を頂けるとは……心より感謝します。」


ローブの男エウテルベは皮肉を込めた声質で答える。

荒くれの男は何が何だか分からず、ただフリーズしていることしかできなかった。


――――――――――――――――――――――――――

現在のステータス

生命力:B

魔 力:C

体 力:C


攻撃力:B

防御力:C

魔力攻:D

魔力防:D

走 力:B


現在使用可能なスキル

●身体、精神、霊魂に影響するスキル

『旋律』音や歌声を響かせ、自分や他者に影響を与えるスキル。

『鑑定』情報を調べ、表示するスキル。※現在表示できる情報は全情報の10分の1である。

『簡易演算(レベル1)』簡単な計算を解きやすくし、記憶力や思考力を高める。

『仮説組立(レベル2)』考察によって生まれた仮説を組み合わせて信憑性がある考えを導き出す、また記憶力や思考力を高める。

『解読』文や言語を理解するスキル。

『敵意感知』近くにいる人族や魔物の敵意を感知するスキル。

『熱感知』目視可能な範囲の温度変化を感知するスキル。

『多重加速(レベル2)』加速を重ねることにより、更に速度を上昇させるスキル。

『大蛇の育成者』タイタンの幼体を育てる者、レベルアップ時にタイタンのスキルを獲得することがある


●技術

『解体技術』解体の技術を高めるスキル。対象はモノだけではない。

『加工技術』加工の技術を高めるスキル。

『貫槍技術』貫通に特化した槍の技術を高める。

『斬槍技術』斬撃に特化した槍の技術を高める。


●耐性

『寒冷耐性(レベル4)』寒さを和らげて、活動しやすくする。

『苦痛耐性(レベル4)』痛みを和らげて、活動しやすくする。

『毒耐性(レベル1)』毒を弱体化させて、活動しやすくする。

『爆音耐性(レベル2)』爆音を和らげて、活動しやすくする。

『風圧耐性(レベル1)』風や衝撃に対するダメージを和らげて、活動しやすくする。


●魔法

『火魔法(レベル3)』火を操る魔法。

『水魔法(レベル1)』水を操る魔法。

『風魔法(レベル1)』風を操る魔法。

『時魔法(レベル1)』時を操る魔法。

『生活魔法』モノを綺麗にしたり、簡易的な回復を行う。


●加護

『死者の加護』死した者から生きる者に与えられる加護。

『象兵の加護』ヤコバクから異種族に与えられる加護。

『大蛇の加護』タイタンから異種族に与えられる加護。


現在の持ち物

銀の槍(緑王):ヴィクター・アガレスの槍。オークロードの額にあった宝石の欠片で強化し緑王という名前が刻まれた。

冒険者カード:名前、性別、年齢が書かれたカード。特殊な魔法道具が使われているため個人を特定できる。

毛布:ハウンドの皮をつなぎ合わせた物。粗末だが、トモヤがこの世界で初めて作ったもの。

黄色の水晶:エレノアからのプレゼント。微かにオーラを感じる。

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