ギルドマスター

【赤い宝石の指輪:赤い宝石部分が魔法道具となっており、転移魔法や解析妨害魔法などが付与されている。色によって、付与されている魔法や数が変わる。使用時に魔力防が低いと酔うなどの悪影響を及ぼす。なお、これらの宝石を作成することは法律で禁止されている。。】


「あの……そろそろ、下ろして欲しいかも……」


俺が助けようとした少女は担がれたままだった。


「ご、ごめんなさい!すぐに下ろします。」


すると少女の方に、受付嬢が近づいて行った。


「エレノア様、お怪我は?」

「ええ……彼が助けてくれたから大丈夫よ。お爺様は心配していないかしら……」

「そうだった。アガレス公にも連絡しないとな。」


ん?アガレス公?確か、この領地を治めてる貴族だよな……改めて少女の姿格好を見ると、水色のブラウスに緑を基調としたチェック柄のスカートで、足元には茶色いブーツを履いている。アクセサリーもいくつか身に付けていて、少女はどう見ても貴族令嬢といった感じだ。それにお爺様?

俺の視線に気づいたのか、少女は俺に近づいてきた。


「助けてくれてありがとう。私はエレノア・、この領地を治めるジャミノフ・アガレスの孫にあたります。貴方は?」


様々なピースが頭の中でカチャリと合わさった。大物にも程があるだろ……

俺は少し強張りながら答える。


「トモヤです。トモヤ・ハガヤ。」

「そう、トモヤね。覚えたわ、よろしくね!!」


エレノアさんはにっこりと微笑むと俺の手を握りブンブン振ってきた。丁寧な口調が崩れたが、魅力や気品のオーラみたいなものが溢れ出ていて、そんな事は些細な事だと思えてくる。


「エレノア様、口調が素に戻ってます。」と受付嬢が冷静に言うと。「ああ!!」と慌てて手を引っ込め、エレノアさんは姿勢を正す。


「ウサ子、今はエレノア嬢を屋敷まで連れて帰るが先決だ。アガレス公も心配してるだろうよ。」


ギルドマスターと呼ばれた男性がそう言うと……「エレノア様、こちらへどうぞ。」と受付嬢が促した。


「うん……トモヤ、また会いましょう!!今度お茶会に招待するから!!」


エレノアさんと受付嬢を見送った後、俺とギルドマスター、ルシエドという男性がこの場に残された。


「坊主は……確か、ハガヤ・トモヤだったか?」

「はい、そうです。でも、なんでここが分かったんですか?」

「あぁそれか。それはな、アリシアって嬢ちゃんがな。"トモヤを助けてください!"って言うからよぉ。急いで駆けつけたら案の定だ。」

「アリシアはどこに?」

「先に家に帰らせてるぜ?アリシア嬢ちゃんの父親も坊主のこと心配してたぜ。」

「そうですか……」

「まあ、なんだ……坊主には感謝してる。街中で攻撃魔法を使ったやらなんやらは、褒められることじゃないが。エレノア嬢ちゃんを守ってやったんだろ?ありがとよ。」

「そんな……俺は何も……」

「謙遜するなって。まぁ坊主も家に帰ってアリシア嬢ちゃんを安心させてやんな。俺はこのことをアガレス公に伝えてくる。」


そう言ってルシエドさんは俺の背中を叩いて去って行った。めっちゃ背中痛いんだが……

それから帰宅すると、突然アリシアが抱きついて来た。


「トモヤ!本当に無事で良かった……」

「ただいま。ごめん心配かけて。」

「それよりも怪我とかは無い?痛い所は?」


そう言いながら俺の身体をペタペタと触る。


が少し痛いかな……まあちょっと疲れてるだけだから、休めば治ると思うよ。」


すると奥からアベルさんもやって来た。


「アリシアから聞きました。トモヤさんは人助けをしているから遅くなると。無事で安心しました。」

「はい……でも結局、何もできませんでしたけど……」

「それでもいいんですよ。自分がやると決めたことをしたんですから。今はゆっくり休んでください。」

「お言葉に甘えます。」


やっぱり今のままじゃ元の世界には戻れない。俺は強くなろうと再び決意した。ハウンド製の毛布に身を包み、死んだように眠った。


――――――――――――――――――――――――

「あのタイミングでが来ますか……」


赤いローブの男は静かな森に落ち着いた声を響かせる。

雪兎とはウサリア受付嬢の冒険者時代の異名である。かつてウサリアは中級冒険者だったが、数年前に活動をばっさりと辞めて、この街の冒険者ギルドの受付嬢になった経歴を持つ。


「まぁいいでしょう。目的の物は見つけました。」


ローブの男は森の奥深くに歩みを進めた。


「死ぬほど不愉快ですが、部下は全員生存しましたか。」


男の雰囲気が言葉と共に重くなった。本当に部下達が嫌いなのだろう。


「……そろそろ、あの連中の魔力酔いも消えた頃でしょう。そろそろ間引く時ですかね……」


男の独り言が森に響いていく。


――――――――――――――――――――――――

「トモヤ・ハガヤか……」


初老の男性が窓から星空を見ながら言った。


「気になりますか?アガレス公。」


ルシエドが机の上にある麦酒を飲みながら訊ねた。


「攫われた孫をお前より先に見つけた少年だ。興味がある。」

「流石の俺も焦ってた所でしたよ。」


ルシエドは、トモヤがギルドに来ていた間もずっとエレノアを探していたのだ。であるルシエドでも攫われたエレノアを見つけることが出来なかったである。


「何が目的なんでしょうね……あの連中は……」


ルシエドはため息混じりに言った。


が目的だろうな……」

「帝国の遺産?」

「帝国が滅んでから重要な武器や魔法道具の回収などをしたのは我々アガレス家だ。連中が好む物でも残っているのだろう。」

「ならエレノアの嬢ちゃんは?」

「……生贄にでもする気だったのだろう。アガレス家は魔力が高い者が多い、孫もその例に漏れない。その路地裏に召喚系の魔法陣の類は隠されてなかったか?」

「……ウサ子。」


眠気に負けそうになっているウサリアを、ルシエドが揺さぶる。するとウサリアが立ち上がった。


「……解析開始……石像の悪魔ガーゴイル系の魔物を召喚する魔法陣を発見……消去開始……完了。お休みなさい。」


体力を使い果たしたのかウサリアは近くソファーに横たわった。


「お疲れさん……」


ルシエドは寝息を立てて眠るウサリアに毛布を掛ける。

それを見ていた初老の男性、ジャミノフ・アガレスは孫に怪我が無いことに安堵しつつ果実酒を口にした。その表情はまだ硬く、難が去ったことを理解しつつも警戒を解くつもりは無いようだった。果実酒の香りが緊張で強張った身体を解すかのように鼻腔を通り抜けるのだった。


――――――――――――――――――――――――

現在のステータス

生命力:C

魔 力:C

体 力:C


攻撃力:C

防御力:C

魔力攻:E

魔力防:E

走 力:C


現在使用可能なスキル

●身体、精神、霊魂に影響するスキル

『旋律』音や歌声を響かせ、自分や他者に影響を与えるスキル。

『鑑定』情報を調べ、表示するスキル。※現在表示できる情報は全情報の10分の1である。

『簡易演算(レベル1)』簡単な計算を解きやすくし、記憶力や思考力を高める。

『考察(レベル8)』物事を予想し、記憶力や思考力を高める。

『解読』文や言語を理解するスキル。

『敵意感知』近くにいる人族や魔物の敵意を感知するスキル。

『加速(レベル1)』身体の速度を上昇させるスキル。


●技術

『解体技術』解体の技術を高めるスキル。対象はモノだけではない。

『貫槍技術』貫通に特化した槍の技術を高める。


●耐性

『寒冷耐性(レベル3)』寒さを和らげて、活動しやすくする。

『苦痛耐性(レベル3)』痛みを和らげて、活動しやすくする。

『毒耐性(レベル1)』毒を弱体化させて、活動しやすくする。

『爆音耐性(レベル1)』音のダメージを和らげて、活動しやすくする。


●魔法

『火魔法(レベル1)』火を操る魔法。

『生活魔法』モノを綺麗にしたり、簡易的な回復を行う。


●加護

『死者の加護』死した者から生きる者に与えられる加護 。※本人は獲得したことに気づいていない(気づけない)。


現在の持ち物

銀の槍(無名)

冒険者カード

ヴィクター・アガレスの日記帳

毛布(ハウンドの皮をつなぎ合わせた物)

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