おさきす! 〜DAGで遊ぶのでお先に失礼しますっ!〜
南 徘露
1, DAG、始動
学校に行けば友達と話せるし、家にはテレビゲームだってある。
外では遊べないが、散歩くらいはできる。
(特段見るものがあるわけじゃないけど……あ、でも隔壁近くの高射砲は見に行ってみたいかも)
博物館もあるし、何度か行った防衛施設展も眺めるのは楽しかった。
でも、そうじゃない。
私が求めているのは、もっとわくわくするような体験。
友達と一緒に遊べて、食卓を囲むような暖かさもあって、いろんな体験ができて飽きなくて――おまけに現実から目を逸らせたら。
彼女の願いはそう奇異なものではない。
実のところ、世に
ましてや、国家間の争いにより土地が削られていき、娯楽も文化も縮小を余儀なくされた現在は、土地不足に陥ったら真っ先に公園を解体するような状況であり、皆新しいゲームなどが発売されることなど"まず"あり得ないと思っていた。
この十年間一切の動静が語られてこなかった、巨大ゲームソフト開発会社、
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2050年、日本。
東京第三区画・有人エリアの端に位置する、閑静な一軒のベーカリー。
「皆がこれを待ち望んでいた! 閉鎖空間からの解放を可能とする新ジャンル、
「店長CM見てくださいよ! DAGですよ、
そう、閑静なベーカリーである――ただ一人とテレビとを除いては。
「んなこと言ってもよう、ウチの
「えぇー、DAG発売されたら早上がりさせてもらいますからね……」
騒々しい二人が立ち去った後、小麦香る室内でCMは続く。
「我が
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「VR機器をわざわざDAGのために開発、ねえ……。運営も暇なのかしら?」
光源がカーテンから漏れる光しか存在しない、暗い部屋。
ただのアパートにしては少し大きいその部屋で、少女は正座でテレビを見ながら訝(いぶか)しむ。
「それとも、何か他の目的があるとか? だめだめ、要らぬ
小首を傾げていると、不意に携帯が振動する。そのディスプレイは彼女の友人、「
CMはなお続く。
「このVRチェア
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「ユーザ自身の願望を計測し反映させることもできる、ですって? 感度は高くないかもって言ってるけど、とんでもない技術じゃないですかこれ……。
高校の敷地内にある寮の一室。
テレビを見ていた銀髪の少女は、室内だというのに帽子をかぶってベッドに転がる金髪の少女に問いかける。
「
『……別に、ただの勘よ。気にしないで』
「むー、気になるけどこうなったら絶対教えてくれない観夜ちゃん、つれない……。そういえば確か
「DAGの話だけれど、まあいいです。忘れて頂戴」
ゆるゆると首を振る
どうせこいつに言ったってわかりっこないのだ。2年も同室で過ごすと流石に分かってくる。
「願望の現れ、ですか……。こういうの、まだ登場しないと思ってたのですが」
「あ、キャラクター生成の話? ランダムとかなんじゃないの、そんで出たキャラが実はあなたが望んでいた姿なんですよーみたいなさ」
肩元で揃えられた金髪を弄りながら
実際単にハッタリなのかもしれない。
しかし、そんな古典的な占い師みたいなテクニックを今時行うだろうか。それも、CMで?
視線をテレビに戻すと、長い長いCMが締めに向かっていた。
……広告費どれだけ掛けたんだろう。純粋に気になる。
「DAGで複数世界を自由に行き来してデジタルにアナログを楽しもう! 今日までの予約で来週の発売に間に合います! さあ、皆でレッツ☆DAGGING!」
「純粋に気になる……」
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