第232話 列強国への対応
俺はフラニス国海軍の第七艦隊を潰す事にした。
「よろしいのですか? 我が国が列強諸国全体の脅威となる、と判断された場合は、列強国同士が手を組んで、我が国を潰そうと考える事もあり得るのですぞ」
イサカ城代が不安そうな顔をして言った。その可能性がある事も分かっているのだが、このままでは何度も何度も同じような事を仕掛けてくるだろう。
「そう心配する気持ちも分かる。だがな、このまま列強国に大きな顔をされていては、
「確かにそうですが、焦ってはなりません」
焦っていると言われた俺は、自分の心をチェックした。俺は焦っているのだろうか? 確かに何度も繰り返される戦にうんざりしているが、焦っている訳ではない。
ただ少し不安になる問題を最近気付いたのである。ミケニ島とハジリ島は、考えていたより地下資源が少なそうなのだ。
これから国を発展させるためには、鉄や石炭、石油を中心とする大量の資源が必要になる。アマト国には石炭は大量にあるようだが、鉄・石油や他の金属資源がは少なかった。
交易で手に入れる事を考えたが、産出国の採掘量自体が少ないのだ。どうしようもない。
そこで考えたのが、南方に調査船を派遣して手つかずの土地を発見しようという計画である。
俺は南方調査計画を評議衆に話した。クガヌマが面白そうだと笑う。
「やりましょう。きっと南方にも大きな島があるはずです」
トウゴウが俺に顔を向けた。
「上様、もう一つ地下資源が豊富にある土地がありますぞ」
それを聞いた俺は顔をしかめた。
「分かっておる。桾国の事だろう。だがな、桾国は我らの五倍ほど人口が多いのだ。そういう国を未来永劫支配下に置いておけると思うか?」
トウゴウも渋々認める。一時的に支配できたとしても、それを長きに渡って続ける事は難しいとトウゴウも分かっているのだ。
「それに言葉が違う民族を支配するというのは、大変な事だ」
「しかし、バイヤル島は支配下に置いたではありませんか?」
「バイヤル島の住民は、数が少ないからだ」
イサカ城代が俺に鋭い視線を向けた。
「話が逸れておりますぞ。南方調査計画と第七艦隊がどう繋がっておるのでございますか?」
「南方調査計画を進めるには、膨大な資金と時間が必要だ。そのためには列強諸国との戦いを終了させたい」
「そのための第一歩として、第七艦隊を潰すというのですな」
「そうだ。列強諸国がその敗北でおとなしくなるのなら、好都合だ。だが、もう一度艦隊を送ってくるようなら、我らも遠征艦隊を編成して叩き潰し、列強の本国も叩く」
俺が列強諸国に遠征すると言ったので、評議衆たちが驚いた顔をする。ただ一部の者だけは、俺が遠征する事も考えていたのを知っていたので無表情だった。
「遠征するには、余程の大艦隊でないと返り討ちに遭うでしょう。その建造には少なくとも五年は掛かります」
船奉行であるツツイが真剣な顔で言った。
「遠征の目的によると思うが、少なくともイングド国やフラニス国の艦隊と海戦して打ち破り、列強国の町に砲弾を降らせねばならん。サナダ型戦艦以上の軍艦が五隻は欲しい。それに航路上に補給基地が必要だ」
珍しくホシカゲが何か言いたそうにしている。
「言いたい事が有れば、言って構わんぞ」
ホシカゲが頭を下げて口を開いた。
「されば、列強国同士を戦わせる算段をするのは、如何でしょう?」
「それはイングド国とフラニス国を戦わせようというのか?」
「はい、あの国は何度も戦っております。戦の火種がいくつも有るのです」
「なるほど、面白い。具体的にはどうする?」
「両国の一番の問題は、ジェンキンズ島にある祖先の遺物から見付かる知識でございます。重要な祖先の情報をどちらかが隠したと噂を立てれば、争い事に発展するでしょう」
「しかし、大きな戦にまで発展するだろうか?」
「上様、これは時間稼ぎの策でございます。小さな争いでも良いのです。その争いが起きる時期が重要なのです」
「なるほど、第七艦隊が壊滅した報せが届く直前に、争いを起こさせるのだな?」
「そうでございます。そして、フラニス国海軍など極東の島蛮に負ける程度の玩具だという噂を流せば、協力して艦隊を派遣するという事にはならないでしょう」
「分かった。第一の策としてホシカゲの意見を採用しよう。そして、それが上手くいかなかった場合、遠征艦隊だ」
その後、様々な話題が話された。
「上様、今回の海戦で魚雷艇が補給艦を沈め、戦列艦を大破させています。今後、魚雷艇を増やすのでしょうか?」
ソウマが質問した。
「そうだな。このまま研究を続ける。ただ運用についても研究してくれ。今回も二番艇が撃沈している。その原因を探し出して改良せねば死者を増やす事になる」
「分かりました。ただ魚雷の問題は、射程が短い事と命中率が悪い点です。開発担当の者が、上様の助言が欲しいと言っておりました」
「まあ、魚雷については、空気ボンベを見て作れるのではないかと、開発させてみただけだからな。本格的なものを作るには研究が必要だろう」
第七艦隊と第三艦隊の戦いが勝者なしという終わり方をしたので、キナバル島での戦いが長引く事になった。
俺はキナバル島に歩兵五千の援軍を送り、島からフラニス国兵を叩き出した。
キナバル島での戦いが終わり、アマト国からバナオ島のドランブル総督へ使者が向かった。
総督府へ到着した外交方のロクゴウは、ドランブル総督とロジュロ提督に会いアマト国の正式な抗議を伝えた。その抗議を聞いた二人は不機嫌な顔をする。
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