パワハラ聖女の幼馴染と絶縁したら、何もかもが上手くいくようになって最強の冒険者になった ~ついでに優しくて可愛い嫁がたくさん出来た~
《聖女パーティー》エルマ視点57:なんか不穏なんだけど大丈夫かしら……。
《聖女パーティー》エルマ視点57:なんか不穏なんだけど大丈夫かしら……。
「な、なんだったの今の……」
ぽてり、と冷たい床に尻餅を突いたまま、あたしは愕然と身体を震わせていた。
というのも、突如床をぶち破るようにして現れた気持ちの悪い触手らしきものが、椅子ごとあたしを吹き飛ばした上、玉座にふんぞり返っていたエリュシオンだかに襲いかかったのである。
だが触手はやつを食らおうとした瞬間、何故かぴたりと動きを止め、そのまま何ごともなかったかのように穴の中へと戻っていった。
なので現在、玉座の間の中央にはぽっかりと大穴が開いており、あたしが先ほどまで頬杖を突いていたテーブルやなんかも粉々に砕け散っていた。
「……」
しかし何より問題だったのは、それだけの事態が起こったにもかかわらず、あの仏頂面が一言も喋らずふんぞり返ったままだということである。
いや、なんか言いなさいよ!?
どう考えたって今のは異常事態でしょうが!?
何いつものことだ的な感じで冷静決め込んじゃってんのよ!?
むしろ目開けたまま失神してるんじゃないのあいつ!? と内心突っ込みの止まらないあたしだったが――その時だ。
「――エルマ!」
「――っ!?」
ふいに聞き覚えのある声が玉座の間に響き、何やら神秘的な装いに身を包んでいたティルナが猛然と飛び込んでくる。
「ティルナ!」
今までずっと待ち焦がれていた信頼出来る仲間の姿に、思わず涙腺が緩みそうになる中、ティルナの装いがぱっと解除されるとともに、大地の女神――テラさまが姿を現した。
どうやら彼女が鎧のような感じでティルナと融合していたらしい。
――どさりっ。
だがそれとは別に、ティルナは脇に抱えていた見覚えのある女性を割と雑に床に置く。
黒を基調とした独特な衣装が特徴の美女で、確か《
ただ名前は知らないので、適当に〝ありんす〟とでも呼ぶことにしようと思う。
なんかそんなことをよく口にしてたし。
「無事でよかった。ほかの皆は?」
「ま、まだ来てないわ。それよりこのありんすはあんたが倒したの?」
「うん、そう。でもわたしだけの力じゃない。テラさまの力があったからこそわたしは彼女に勝つことが出来た。この人も本当は置いてくるつもりだったけど、変な触手に襲われそうだったから仕方なく連れてきた。というか、おかげで私たちがさっきまで襲われてた。あと、この人の名前は〝ありんす〟じゃない」
「……」
いや、知ってるわよ。
てか、わざわざそんな真顔で突っ込まなくたっていいじゃない。
傷つくわー……、とあたしが若干しょんぼりしていると、未だ玉座にいたエリュシオンが「なるほど」と頷いて言った。
「どうやらヴァロンのやつが《
「ええ、おかげさまでね! というか、そういうあんただってあの触手に食べられそうになってたじゃない!?」
「そうだな。だがやつは直前で己が分をわきまえ、自ら頭を垂れて引き下がった。無様に尻を突き上げていた貴様と一緒にするな」
「~~っ!?」
だ、誰のせいで床に頭から突っ込む羽目になったと思ってるわけ!?
きぃ~っ!? ムカつく~っ!? とあたしががしがし両手で頭を掻いていると、テラさまがあの仏頂面を鋭く見やって言った。
「こうして言葉を交わすのははじめてですね、〝剣〟の聖者エリュシオン。悪いことは言いません。今すぐその力を我らに返還し、そして自らの罪を償いなさい」
「罪を償えだと? 笑わせてくれる。その言葉、そっくりそのまま貴様に返してやろう」
「……なんですって?」
「罪を償うべきは貴様ら神の方だと言ったのだ。貴様ら神の怠慢が人間どもを増長させ、世に〝汚れ〟を溢れさせた。よもや忘れたわけではあるまい? 〝汚れ〟を浄化し、生命を循環させる立場にありながら、その身を〝汚れ〟に冒され、暴走したのが一体誰だったかということをな」
「そ、それは……」
ぐっと悔しそうに唇を噛み締めるテラさまを見下ろし、最後にエリュシオンはこう告げてきたのだった。
「分かったら〝剣〟の聖女ともどもそこで大人しくしていろ。我らの目的は貴様らの大好きな救世主ただ一人だけなのだからな」
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