《聖女パーティー》エルマ視点54:はい、死にまーす……。


 あたしは心底後悔していた。



「ほう、聖女を実験材料にしたいと? それは何故キテージが救世主になぶり殺されたかを知った上で言っているのだろうな?」



「ふひっ、もちろんでございます」



 オフィールたちの言うように、あの時豚を見捨てておけば、こんな怖い目に遭うこともなかったからだ。


 いや、もう本当に何やってんのよぉ~……。


 おかげで今まさに実験材料にされかけてるし、あたし馬鹿なんじゃないのぉ~……、と涙目で頭を抱えるくらいには参っていたのである。



「確かにキテージは聖女を辱めようとして救世主の怒りを買いました。ふひっ、ですがこのトウゲンにそのようなつもりは毛頭もございません。何せ、この老いぼれはただそこの小娘が一体どういう構造をしているのか、隅々までバラしてみたいだけなのですから……ふひひひひっ」



「~~っ!?」



 って、いやいやいやいやいやいや!?


 笑いながら何言ってんのよ、あのクソジジイ!?


 あたしをバラしたいって、それもう完全にやばいやつの思考じゃない!?


 いや、まあやばいやつらの中にいるんだから、そりゃやばいのは当たり前なんでしょうけど!?


 てか、そんなこと言ってバラす前に絶対いやらしいことする気でしょ、あんた!?


 あたし、知ってるんだからね!?


 ああいうやばいタイプの実験とかしそうなやつは、大体あたしみたいなうら若き美女を薬漬けにして散々楽しむんだって!?


 豚の持ってた本にもそう書いてあったんだから!?



「なるほど。つまりリスクを承知の上でなお聖女を欲すると?」



「ふひっ、左様にございます。ゆえにどうかこのトウゲンめにお譲りくださいませ」



 そう言って、ジジイが深々と頭を下げる。


 なんかあのエリュシオンとかいう元聖者も、だったらって感じで普通に頷いちゃいそうな雰囲気だし、ちょっとこれマジでやばくない!?


 ど、どどどうすればいいの!?


 あ、あんな気持ち悪いジジイのおもちゃになるなんて絶対に嫌よ!? とあたしが顔面を蒼白にしながら恐怖に打ち震えていると、



「えー、でもトウゲンの実験ってなんかぐちゃーってなる感じのやつでしょ? せっかくの聖女なのにもったいなくない? それならもっと弱点を探るとかさ、そういうことに使った方がいいと思うんだよねぇ」



「!」



 い、いいこと言ったわ、あんた!


 そ、そうよそうよ!


 せっかく捕まえたんだからそういうことに利用しなさいよね!


 なんならマグメルが聖母みたいな顔して本当は超いやらしい女だってことくらい教えてあげてもいいわ!


 ……。


 いや、そうじゃないわよ!?


 なんで自ら仲間の情報を売り渡そうとしてるのよ、あたしは!?


 で、でもしょうがないじゃない!?


 そうしないとあのジジイの性奴隷にされちゃうんだから!?


 が。



「だが仮にも聖女であるその女が弱点とやらを素直に吐くとでも思っているのか?」



 吐くわよ!


 ジジイにいやらしいことされるくらいなら吐きまくるに決まってるでしょうが!



「うーん……。あ、じゃあトウゲンの変な薬を使えばいいんじゃないかな? なんかあったじゃん? あへーってなるやつ」



 って、あんたーっ!?


 庇うんなら最後まで責任持って庇いなさいよね!?


 何がっつり薬漬けにしようとしてくれちゃってんのよ!?



「ふむ、それもそうか」



 そしてそっちの顔色が悪そうなあんたも普通に頷いてるんじゃないわよ!?


 なんなの!?


 そんなにあたしを〝あへー〟ってさせたいわけ!?


 てか、そもそも〝あへー〟ってなんなのよ!?


 絶対いやらしい薬じゃない!?


 もうや~だ~!?


 お家に帰して~!? とあたしが内心泣き喚きそうになっていると、玉座のエリュシオンだかが「いいだろう」と無駄にでかい態度で言った。



「その聖女の処遇はお前たちで決めるがいい。生かすも殺すも好きにしろ。ただしそいつは救世主どもをここに誘き寄せるための〝餌〟だ。ゆえにこの《神の園》より連れ出すことは許さん。分かったな?」



『仰せのままに』



「……」



 はい、完全に終わりましたー……。


 あへ顔実験体コース確定ですー……。


 揃って頭を下げる魔族たちの姿に、あたしはもうこの場で華々しく爆散するしかないと自爆技を唱えかけていたのだった。

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