《聖女パーティー》エルマ視点39:もうあんたクビよ、豚……。
「……はあ」
先ほどまでのアルカディア同様、豚がちょこんと部屋の隅で背を丸める。
人間基準だとただの汗っかきおデブだったことが相当ショックだったらしい。
「ちょっと、いい加減元気出しなさいよ」
さすがにここまで打ちのめされている豚を見たのははじめてだったので、あたしもそう豚を元気づけてあげていたのだが、
「……」
――ちらりっ。
はあ……、と豚はこちらを力なく一瞥した後、再び陰鬱そうに俯く。
「これは重症ね……」
やれやれと首を横に振るあたしに、男らしく(?)干し肉を頬張っていたオフィールが、咀嚼していたものをごくりと呑み込んで言った。
「つーか、おめえの変貌ぶりにもショックを受けてるんじゃねえか?」
「えっ?」
まあ確かに一度は惚れた女なわけだし、むしろそっちのショックの方が大きいとは思うのだけれど……でもそんな言うほど変わってないでしょ?
ねえ?
が。
「いえ、それは薄々感づいていましたので……。〝あ、やっぱり〟みたいな……」
「……はっ?」
「だっはっはっ! 〝あ、やっぱり〟だってよ!」
「うるさいわね!? 笑ってんじゃないわよ、この筋肉おばけ!? 大体、あんたが言ったんでしょ!?」
あたしがそうオフィールに抗議の声を上げていると、彼女は革袋から新しい干し肉を取り出して言った。
「まあそうカッカすんなって。ほれ、これでも食って落ち着けよ」
「いや、いらないわよ、そんなもの!?」
「あ、じゃあ私が……」
「おう。食え食え」
「って、なんであんたがもらってんのよ!? だったらあたしも食べるわよ!?」
「じゃあわたしももらう」
もちゃもちゃと三人揃って干し肉を咀嚼するあたしたちだが、途中でふと冷静になる。
え、何この時間……。
なんであたしまで干し肉食べてるの……。
いや、普通に美味しいんだけど……。
と。
「――ただいま戻りました」
「「「「!」」」」
念のため周囲の偵察に出ていたマグメルたちが戻ってくる。
ついでに買い出しもしたみたいで、マグメルは抱えていた荷物を机の上に置いた後、控えめにこう尋ねてきた。
「それでポルコさんのご様子は……?」
「まあ見てのとおりよ。あたしが声をかけても全然――」
「――お帰りなさいませ、女神さま」
……うん?
すっと立ち上がった豚に、あたしは一人目をぱちくりさせる。
すると、やはり豚は凜然とした顔つきでこう言った。
「ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。ですがこの不肖ポルコ! 女神さまの前で暗い顔は出来ないと、このとおり復活いたしました!」
「まあ! それはよかったです!」
「……」
おい――おい。
あたしとの扱いの違いに、内心ぎりぎりと拳を握るあたしなのだった。
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