《聖女パーティー》エルマ視点37:え、子どもじゃなかったの!?
「……」
気まずい……、とあたしは相変わらず部屋の隅の椅子で膝を抱えていた。
豚の再封印以降、マグメルともお茶のおかわり以外話していないし、イグザが帰ってくるまでこれが続くのは正直キツい。
まああたしからしたら完全にアウェーなわけだし、少し謝った程度で彼女らからの印象が変わることがないのは分かっているのだが、しかしなんというのだろうか。
「……はあ。今頃はもう発動させているのだろうな、《スペリオルアームズ》……」
――ぼんっ!
「おい、いつまで凹んでんだよ。次はおめえの番だろ? つーか、それより暇すぎて堪んねえぜ。筋トレもいい加減飽きちまったしよぉ」
――ぼぼんっ!
「なら大人しくしていてください。正直、暑苦しいです」
――ぼぼぼーんっ!
「……」
いや、乳圧が凄い!?
なんなのよこの乳空間は!?
ぼんぼんお胸を揺らしながら会話する三人に、あたしは内心突っ込みを入れる。
今イグザと一緒に行ってる二人も巨乳の部類だし、どうなってんのよ聖女の選別は!?
しかも豚を入れたら今この部屋6人中4人が巨乳じゃない!?
こんなのもう乳の暴力よ、暴力!?
と、あたしが迫りくる乳圧に一人押し潰されそうになっていた時のことだ。
――つんつん。
「癒し系お肉」
「……」
再び豚のお腹を突っついているティルナの姿が目に入り、あたしは砂漠でオアシスでも見つけたかのような気持ちになる。
「?」
すると、ティルナもこちらの視線に気づいたらしい。
彼女は豚のお腹を指差しながら言った。
「あなたもつんつんする?」
「い、いえ、あたしはいいわ」
たまにたぷたぷしてるし。
「そう。ならわたしだけで楽しむ」
ぷにぷに、と突っつきを再開させたティルナだったが、彼女はそのままこう尋ねてきた。
「――あなたはこれからどうするの?」
「えっ?」
「聞いたでしょ? 今わたしたちは終焉の女神――フィー二スさまと戦っていて、聖者たちの持つ神器をわたしたちの聖具で浄化しようとしている。そこには当然〝剣〟の神器も含まれている」
「……そう、でしょうね」
「ええ。わたしたちは別にあなたのことが嫌いなわけじゃない。あなたのしたことは確かに酷いことだったと思うけれど、あなたはそれをきちんと省みて、イグザもそれを受け入れた。ならわたしたちが言うことは何もない。問題はそのあと」
「そのあと……?」
小首を傾げるあたしに、ティルナは「うん」と頷いて言った。
ちなみに、「いや、あたしはちょっと言いてえことがむぐうっ!?」とオフィールがマグメルに羽交い締めにされていたことはさておき。
「あなたがわたしたちを信じて力を貸してくれるのなら、わたしたちもあなたを仲間として信じようと思う。でもずっとそこで膝を抱えられていたら、わたしたちは何も出来ない。もちろん強制じゃないし、この豚さんと旅を続けたければそれでも構わない。あなたの意志をわたしたちは聞きたい」
「あたしの意志……」
そんなの決まってるじゃない。
迷惑をかけた以上は力くらい貸すわよ。
でも、きっとそういうことじゃないんでしょうね……。
仲間を信じる、かぁ……。
そんなことを真顔で言われたのははじめてだわ……。
「自分で言うのもどうかと思うけど、あたし性格悪いわよ? 今は反省しているから大人しいけど、そのうちまた傲慢になるかもしれないし」
「その時は仲間として窘めるから大丈夫。というか、わたし以外は基本的に性格が悪いので問題ない」
「「「おいっ(ちょっと)!?」」」
残りの三人が揃って抗議の声を上げるが、ティルナはどこ吹く風であった。
その様子が無性におかしく思えたあたしは、小さく嘆息して言った。
「――分かったわ。ならあんたの言うとおり、全力で背中を預けてあげる。その代わり、あんたたちもあたしを頼りなさいな。仲間として全力でサポートしてあげるから」
「うん、任せて。いっぱい頼る」
こくり、と頷くティルナに、ほかの聖女たちもふっと顔を綻ばせているようだった。
最中、あたしは少々恥じらいつつティルナに問う。
「てか、あんたお子さまのくせに随分としっかりしてるのね?」
すると、ティルナは「もちろん」と頷いてこう言ったのだった。
「だってわたしはシヴァより年上のお姉さんだから」
「……はっ?」
当然、あたしは呆然と目が点になったのだった。
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