《聖女パーティー》エルマ視点36:あたしの上位互換!?


「あ、あの……」



 突然のことに、マグメルは困惑しているようだった。


 そりゃそうだろう。


 いきなり見知らぬ豚に手を握られ、鼻息荒くずいっと顔を寄せられているのだ。


 あたしだったら普通にビンタものである。


 だが豚は本当に女神……というか、理想の女性にでも出会ったかのように感激しながら口を開いた。



「あなたこそ私の捜し求めていた女神さまそのものです……。是非お名前を……」



「は、はい。私はマグメルと言います。〝杖〟の聖女です」



「そうでしたか……。申し遅れましたが、私の名はポルコ。独身です」



「え、あ、そうですか……」



 いや、何を男らしい顔で口説こうとしてんのよ!?


 マグメルが引いてるじゃない!?


 てか、あんたあたしに気があるんじゃなかったの!?


 ……。


 って、違うわよ!?


 あたしの方があんたに気がある的な感じに思い込んでるんだったわ!?


 今さらだけど自惚れも甚だしいったらありゃしないんですけど!?


 でもなんでいきなりマグメルに行ったのかしら……。



「――っ!?」



 そこであたしははっと気づく。


 柔和な面持ちに丁寧な物腰――そして実に柔らかそうな体つきに実った豊満なお胸。



 ――そう、あたしとキャラが被っているのだ!



 というか、完全にあたしの上位互換じゃない!?


 ……。


 いや、あたしの上位互換じゃないわよ!?


 聖女ムーブしている時のあたしの上位互換ね!?


 そこ重要なところだから間違わないように!



「くっ……」



 でもそういうことなら納得がいったわ。


 マグメルはあたしに少しばかり足りないものを完璧に備えている。



 ――そう、〝巨乳〟という最後のピースを。



 ならば巨乳好きの豚が惹かれるのは当然のこと。


 彼女に治癒術を頼む前に気づくべきだったわ。


 まあ別に豚が誰を好きになろうが知ったこっちゃないんだけど、マグメルに迷惑をかけるのは本意じゃないし、何より豚がこのあたしを振ったっていう事実に腹が立つ!


 そんなぷにぷにのお腹でよくもまああたしを振ってくれたわね!?



「あ、あの、そろそろ手を……」



「運命、というものを信じますか?」



「え、あの……」



 うざっ!?


 ちょっとさすがにイラッとしてきたので、あたしは豚に絶望的な事実を告げてやることにした。



「ふふ、ダメですよ? ポルコ。マグメルさんはイグザさまの奥方なのですから」



「――っ!?」



 やれやれ、これでちょっとは大人しくなるでしょ。


 まったくこれだから巨乳好きの男は……。


 そう小さく嘆息していたあたしだったのだが、



「いえ、もうこの際人妻でも構いません! どうかこの不肖ポルコめのお嫁さんにふぎゅうっ!?」


 

 ――どさりっ。

 

 

 豚の乱心に再び首をきゅっとすることにしたのだった。


 てか、もうこのまま永眠させた方がいいんじゃないの、この豚。

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