《聖女パーティー》エルマ視点34:え、あたしも行くの!?
女神さま方があまりにも深刻そうな顔をしていたので、あたしたちは〝フィー二ス〟なる人物について尋ねてみることにした。
すると、イグニフェルさまが神妙な面持ちで語り始めてくれたのだが、
「……なるほど。お二人方を合わせた五柱が元々一柱の女神――オルゴーさまであり、同じ創世の女神かつ魔物の生みの親でもあるフィー二スさまがなんらかの理由により復活したと……」
「ああ、そういうことだ」
え、ごめん。
情報量が多すぎて普通に意味が分かんないんだけど……。
てか、なんで五つに分かれたの?
あんたらが分裂してくれたおかげで、あたしたちめちゃくちゃ手間をかけて世界中を回るハメになったじゃない。
まあ今さら言っても仕方ないんだけど。
「ちっ、恐らくはあの聖者どもだな。どんな手段を使ったのかは知らねえが、イグザたちを出し抜いたんだろうよ」
悔しそうに顔を顰めるフルガさまに、あたしも胸を痛めたような表情をしていたのだが、内心にやけ面が止まらなかった。
当然である。
だって今まであたしの先を行き続けてきた馬鹿イグザがはじめて歩みを止めたのだから。
へえ、あいつ出し抜かれちゃったんだ?
まったくダメダメね。
あたしを捨てるからそういう目に遭うのよ。
聖者だかなんだか知らないけど、このエルマさまがいればちょちょいのちょいのお茶の子さいさいだったっていうのにね。
あー、残念だわー、と一人テンションの上がるあたしを、さらに豚がいい感じにおだててくる。
「むむ、それはなんとも口惜しい限りですな。せめて聖女さまがいらっしゃれば状況も変わったやもしれませんのに……」
ふっふーん♪
分かってるじゃない、豚♪
そうよ、このあたしがいれば女神の復活なんて簡単に――。
と。
「――いや、無理だな。いてもいなくても同じだ」
……はっ?
え、ちょ、〝いてもいなくても同じ〟って何よ!?
早々に異空間送りにされてる分際でよくもまあそんなでかいことを言えるわね!?
「やはりそうですか……」
そしてあんたも張っ倒すわよ!?
ぽろりと本音が出ちゃってるじゃない!?
少しは隠す努力をしなさいよね!?
一瞬にして天国から地獄へと叩き落とされたあたしが内心怒濤の突っ込みを入れる中、カヤが女神さま方に問う。
「そ、それでイグザさまたちは……」
「案ずるな。二手に分かれたようだが、あの者らは健在だ。恐らくは未だに戦闘が続いているのだろう」
「そうですか……」
ほっと胸を撫で下ろしつつも、心配そうな表情を見せるカヤの背中を、フルガさまが軽く叩いて言った。
「だから心配すんなっつてんだろ? これからオレたちも戻るんだ。やつらの好きなようにはさせねえよ」
……うん?
オレ〝たち〟……?
ぱちくりとあたしが瞳を瞬かせる中、フルガさまは「よし!」と気合いを入れ直して声を張り上げた。
「じゃあ行くぞ、聖女ども! オレの術であいつらのところまでひとっ飛びだぜ!」
「――っ!?」
「おお!」
って、ええっ!?
あたしたちも行くの!?
ちょ、まだあいつに見せられるような成果が得られてないんですけど!?
「腕が鳴りますな、聖女さま!」
「え、ええ、そうですね……」
ひいっ!?
どうするのこれ!?
当然、あたしは一人愕然としていたのだった。
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