《聖女パーティー》エルマ視点33:ただの性欲おばけじゃない!?
ともあれ、どうやらフルガさまは今まで馬鹿イグザたちと一緒にいたらしいのだが、突如襲撃してきた聖者たちの罠に嵌まり、異空間に閉じ込められていたという。
何故聖者たちに襲われたのかはよく分からないが、迂闊に尋ねて面倒ごとに巻き込まれても困るので、その件については触れないようにしようと思う。
なんかもの凄く面倒そう感がびしびし伝わってくるし。
もっとも、フルガさまも「まああいつらなら大丈夫だろ」と言ってるくらいなので、大した問題でもないのだろう。
ならばここは遠慮なく本題に入らせてもらうしかあるまい。
「ああ、そういえばそうだったな。ちょうどいい。お前も力をくれてやれ、フルガ。この娘は真っ当に聖女の務めを果たしているようだからな」
「へえ、そりゃご苦労なこった。つってもあれだろ? どうせこいつもイグザに抱かれんだろ? なら別にいいんじゃねえか?」
「「えっ?」」
思わず目が点になるあたしと豚。
は、はあっ!?
あ、あたしが馬鹿イグザにだ、抱かれるってどういうことよ!?
あ、頭おかしいんじゃないの、このハレンチ女神!?
当然、内心突っ込みの止まらないあたしだが、そこは努めて冷静に聖女ムーブで問いかける。
「あの、仰っている意味がよく分からないのですが……」
「そ、そうですぞ! 聖女さまには心に決めた殿方がいるはずですからな!」
……えっ?
何故かどや顔でそう言い切る豚に、あたしは呆然と瞳を瞬かせる。
いや、もしかしてだけど、あんたそれ自分のことじゃないわよ!?
確かにロリコン疑惑で好きな女性のタイプを聞いて以降、ちょっと勘違いしている節が散見出来たけれど、断じてあんたじゃないからね!?
てか、そもそもそんな人いないし!?
「あん? そうなのか? てっきり聖女は全員あいつの女になる運命なのかと思ってたんだけどな。すでに五人も侍らせていやがったし」
「ふふ、まさか」
いや、気合いで冷静を装ったけど、五人も侍らせてるってどういうことよ!?
というか、その前にあなたたち三人も手を出されてるのよね!?
じゃあ合計八人じゃない!?
い、いえ、その様子だとまだまだいるわ!?
ひいっ!?
もう性欲のおばけよ、おばけ!?
あわわわわ……っ!? と内心がくぶるするあたしに、フルガさまは「そうかい。ならしょうがねえな」と頭を掻きながら続けた。
「面倒だがお前にぴったりの力をくれてやるよ。〝人間どもを笑顔にする力〟ってやつをな」
いや、それ以前に〝面倒〟って何よ!?
性欲おばけの毒牙にかかったくせに!?
「あ、ありがとうございます」
若干引き攣った笑みであたしがお礼を言うと、両女神は宣言通りあたしたちに力を授けてくれた。
イグニフェルさまからは〝再生〟の、フルガさまからは〝破壊〟の力だ。
さすがにこの二つなら馬鹿イグザの度肝を抜くようなスキルになるのではと若干期待していたあたしだったのだが、
『スキル――《聖処女》:純潔を失う前の心身に回帰出来る』
『スキル――《腹筋崩壊》:対象を強制的に抱腹状態に出来る』
もうなんなのよこれー!?
え、女神って頭悪いのしかいないの!?
てか、イグニフェルさまのはあきらかに馬鹿イグザの話を聞いて気遣った感じよね!?
だから抱かれないって言ってるでしょ!?
何抱かれて後悔したあとの心身のケアしてくれようとしちゃってんのよ!?
いらないわよ、そんなもの!?
そしてフルガさまのはもうなんなの!?
〝人々を笑顔にする〟ってそういう意味じゃないの分かってやってるでしょあんた!?
「つーわけで頑張れよ、聖女さま」
「……(イラッ)」
ぽんっ、とにやけ面で肩を叩いてくるフルガさまに、あたしが内心ぶっ殺すわよこのクソ女神と青筋を浮かべていた時のことだ。
「「――っ!?」」
ふいに両女神の顔色が変わり、イグニフェルさまは愕然とこう口にしたのだった。
「……フィー二ス!?」
……。
いや、〝フィー二ス〟って誰よ!?
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