《聖女パーティー》エルマ視点14:ならあたしは神になるわ!


「ひい、ひい、ぶひい……っ」



「はあ、はあ……。や、やっと到着したようですね……」



 互いに肩で息をしながら、あたしたちは目的の場所である〝世界樹〟へと到着する。


 この世界樹は馬鹿イグザのやつがジボガミさまを浄化したことで誕生した大樹で、地の女神――テラさまの依り代だという。


 確かに神が住まうに相応しい生命力溢れる大樹だ。



 ――って、そんなことより遠すぎなのよ、世界樹!?



 馬鹿イグザはヒノカミさまパワーで空を飛べるらしいから余裕なんでしょうけど、こっちは山越えて行かなきゃいけないのよ、山!?


 それもこの豚を連れてとかどんな拷問なわけ!?


 途中からあたし豚の背中ずっと押してたんですけど!?


 しかもやたらと体重預けてくるし!?


 なんなの!?


 この豚あたしのこと圧殺したいわけ!?


 あんたみたいな豚に乗っかられたら、可憐なあたしなんて普通に死ぬっての!?



「はあ、はあ……ぜひゅー……」



 まああんたの方がもう虫の息みたいになってるんだけど!?



「――あなたは聖女ですね?」



「!」



 ともあれ、あたしたちの前に一人の女性が姿を現す。


 話に聞いていたとおり、柔和な面持ちの美しい女性だ。


 恐らくは彼女が地の女神――テラさまであろう。


 まああたしの美しさにはぎりぎり及ばないんだけど。


 豚は依然死にかけているので、あたしは一人で彼女の前へと赴き、跪く。



「はい、そうです。私の名はエルマ。《剣聖》のスキルを賜りました〝剣〟の聖女です。以後お見知りおきくださいませ」



「そうでしたか。遠路はるばるようこそお越しくださいましたね、聖女エルマ。私はテラ。大地と生命を司る神です」



「はい、存じ上げております」



 ところで、何故あたしがわざわざ死にそうな思いをしてまでこんな僻地を訪れたのかというと、それはもちろん〝神の力〟を得るためである。


 そう、あたしは考えたのだ。


 馬鹿イグザがヒノカミさまの御使いになったというのであれば、その馬鹿イグザを超えるためにはもうあたし自身が神になるしかないと。


 だってそうでしょう?


 あいつは神の遣いになった。


 ならあたしが神になればあいつに命令し放題じゃない。


 さっすがあたし。


 まさに完璧な計画だわ。


 うんうん、と内心頷き、あたしは本題へと入る。



「今回私どもはテラさまに少々お願いしたいことがございまして、こちらを訪れさせていただきました」



「まあ、そうだったのですね。それで私にお願いしたいこととは?」



「はい。実は聖女として皆さまのお力になろうと日々必死に努めてはいるつもりなのですが、やはり私も人間――どうしても出来ることには限りがあり、私はいつもそれが歯痒くてならないのです」



 くっ……、と悔し顔も忘れない演技派のあたしである。



「そこでテラさまにお願いがございます。さらに多くの人々のお役に立つため、私にテラさまのお力を与えてはいただけないでしょうか?」



 出来ればがっつりと!



「なるほど。そういうことでしたらお断りする理由は何もございません。人々の安寧のため、私の力の一端をあなたに授けましょう」



 え、マジで?


 自分で言っといてなんだけど、神の力ってそんな簡単にくれちゃうものなの?


 でもやったー!


 これであたしは名実ともに女神さまよー! とあたしは内心天にも昇る心地になる。


 が。



「ああ、そうそう。もし旅先でほかの聖女たちを連れた〝イグザ〟と名乗る者に出会った際は、テラが気にかけていたとお伝えください。同じ力を持つ者同士、いずれ惹かれ合うこともございましょう」



 ……はっ?


 同じ力を持つ者同士……?


 って、馬鹿イグザも神の力もらってるじゃなーい!?


 がーんっ、とあたしは一人すこぶるショックを受けていたのだった。

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