《聖女パーティー》エルマ視点12:イグザが英雄ですって!?
もうこうなったらパーティー集めなんてどうでもいいわ!
とにかく真イグザが馬鹿イグザでないことを証明して、このもやもやもイライラも全部まとめて解消してやるんだから!
そう勢い込んだあたしは、武術都市レオリニアを離れ、北の城塞都市――オルグレンへと赴いていた。
なんでもレオリニアに逗留していた旅人の話だと、神秘的な槍を背負っためちゃくちゃ美人な冒険者が、冴えない感じの冒険者とイチャイチャしながら北へ向かったというのだ。
それを聞き、あたしの女の勘がビビッと告げた。
――間違いなくその二人組は槍の聖女と真イグザであろうと。
恐らくは決勝で真イグザに敗れた槍の聖女が、「私を打ち負かすなんて素敵! 抱いて!」みたいな感じで彼の虜になったのだろう。
あーやだやだ。
これだから尻軽女は嫌なのよね。
まったく、聖女の品を落とさないで欲しいものだわ。
……。
あーもうなんなのよ!?
なんかすっごいイライラする!?
真イグザが別人なのは明白もいいところなのに、なんでこんなに馬鹿イグザ感が出てくるのよ!?
しかもめちゃくちゃ美人とイチャイチャしてたですって!?
馬鹿イグザのくせに生意気なのよ!
いや、馬鹿イグザじゃないんだけど!
あああああああああああああああっ!?
あたしが今すぐにでも感情の赴くままに頭を掻きむしりたい思いでいると、どうやら謁見の準備が出来たらしい。
「こちらへどうぞ、聖女さま」
「え、ええ、ありがとうございます」
衛兵に促され、あたしは豚……もといポルコともども玉座の間へと赴いた。
「――ようこそおいでくださいました、聖女エルマさま」
そう嫋やかに微笑むのは、ここの城主であるフレイルさまだ。
女の城主というのもなかなか珍しいが、聞けば先の戦で夫である先王を亡くしたらしい。
それはとても悲しいことだと思うが、それよりも今は馬鹿イグザ……ではなく真イグザのことだ。
「お初にお目にかかります、フレイルさま。私は聖女エルマ。遅ればせながら、このオルグレンの危機を聞きつけてやって参りました。ですがすでに事態は回避されたご様子。肝心な時にご助力出来ず、本当に申し訳ありませんでした」
謙虚な心がけを忘れない聖女の鑑である。
まあ危機だったってのはさっき城下町の人に聞いたんだけど。
てか、あんたも頭下げなさいよ、豚!?
このパーティーの品格が疑われるでしょ!?
「どうぞ頭をお上げください、エルマさま。そのお気持ちだけで我々は十分でございます」
「お心遣いに感謝いたします。それで、どうやらこの町を救ったのは私と同じ聖女だとお伺いしたのですが……」
「はい。聖女であるあなたさまにならお話ししても構わないと思うのですが、この町を救ってくださったのは、遙か遠方より槍の聖女――アルカディアさまとともに足を運んでくださった炎の英雄――イグザさまです」
「――っ!?」
はあっ!?
イグザが英雄ぅ!?
あまりに突拍子もない話を聞き、あたしの中ではもう二人のイグザがごちゃ混ぜになっていたのだった。
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