#変面の転校生
雪美
第1話
そのニュースを知ったのは昨年10月5日の夜。部活で顧問に怒られ、むしゃくしゃしながら家に帰った矢先でのことだった。
『人気若手俳優の志賀翔利、女子高生と援交疑惑』
リビングに入るなり、親父の読んでいたスポーツ紙にデカデカと書かれたその文章が目に飛び込んできた。丁度その時母親がつけたTVでも同じ内容が報道されており、画面に大きく志賀翔利の整った顔が映しだされた。
「嫌やわぁ。事務所と本人は否定しているみたいやけど、本当のことは分からんもんなぁ」
俺の分の夕飯を机に並べながら母がそうボヤく。
「私この人絶対裏で何かやってると思ってた」
親父の隣に座って唐揚げを頬張っていた妹もそう言った。
俺は夕飯を食べ終えて風呂に入り、眠りにつく前にスマートフォンで『shelltalk』というアプリを開いた。
shelltalkはユーザー4億人を誇る海外発のソーシャル・ネットワーク・サービス、即ちSNSだ。日本語なら140字以内のメッセージや画像、動画、URLを投稿できる。
トレンドを見ると、1位に志賀翔利がランクインしていた。皆のコメントを見てみると、見事なまでに誹謗中傷で埋め尽くされていた。
『真面目な印象だったのに。最悪、人として信じられない』
『いいよな芸能人って。人間性がクズでも顔さえ良ければ事務所が守ってくれるんだろ』
『ていうかこの人のどこがカッコいいのか分からんwww』
これらはまだマシな方で、酷いものだと殺害予告や、文字数いっぱいに死ね、殺すなどと書かれているものがあった。
俺は怒られてストレスが溜まっていたこともあり、自分のアカウントでこんな投稿をした。
ほんの軽い気持ち、憂さ晴らしのつもりだった。
『もともと悪人ヅラじゃね?志賀翔利もう終わったなw』
その数日後、志賀翔利は1人暮らしのマンションの自室で遺体となって発見された。
死因は睡眠薬の大量摂取。遺体は死後数日が経過しており、彼の手には充電器に繋がれたままのスマートフォンが握られていた。そしてその画面には、shelltalkの自分の投稿へと寄せられた誹謗中傷の数々が表示されていた。
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