最強の魔導兵器は人間
ゴン狐
第1話 最強の魔導兵器
人類が歴を数えはじめ1200年、ブリング大陸において戦争が各地で行われ、その中で頭角を現す国が出てきた。
その国の名は大陸の半分を軍事力で攻め支配する北のガレックス帝国、西南には豊富な資源を有するフィオーレ王国、南東にはこれら2国の脅威に抗い対抗するため小国で同盟を結んだ共和国がブリング大陸に君臨しようとしていた。
この戦乱の中、一人の赤子が誕生しようとしていた。その赤子は実際には母親から生まれたのでなく、この世界の技術によって生み出された生命体だった。その赤子はコクーンと呼ばれる円形の形をした液体の中にいた。まるで、母親の子宮の中にいるように眠っている。その近くに白衣をきた数名の大人が歓喜を挙げて、ある人物を称えていた。
「状態も安定しています。」
「もう少しで完成ですねフェーレ博士。」
白衣に眼鏡をはめており、灰色の髪を整えたハンサムなレカ・フェーレ博士はコクーンを見ながら、これまでの努力してきたことは振り返りながら、この結果に喜んでいた。
「ああ、やっと完成する。」
「博士、これで帝国に対抗できますね‼ あなたは偉大なお方だ‼」
今、赤子が誕生しようするライド国は、帝国が大陸支配を掲げ、領土拡大で攻めこまれている西の小国であった。しかし、この国は魔術に秀でており、帝国もこの魔術という大きな力を取り込もうと攻めてきているのがこのライド国の現状であった。
魔術とはこの世界の生活に浸透している魔法を発現させる術式や魔石のような術である。魔法には主に属性が存在し、火、水、土、風の四属性があり、その他にも属性を複合で使用できる魔法もある。そして、どの属性にも当てはまらない固有魔法も存在する。この世界では魔法を扱えるものが少ない。なお、魔法を扱える者でも四属性が多く、魔術という術式を展開して使用している。魔法を扱えない者は魔石を用いた魔道具で魔法を発現している。
しかし、この世界にこの魔法の発現を根底から覆すものが誕生するのであった。
「おぎゃーおぎゃーおぎゃー」
暗雲が覆う空の下でその赤子が生まれた。その容姿は白銀の髪に銀眼でこの世のものではないと思わせる神々しい容姿であった。
「フェーレ博士、出来ました。第一号です。」
「他のサンプルは全滅でしたが、サンプル番号503でついに完成です。」
白衣の研究員は子供を抱きかかえ、博士に報告した。
「やっと私の役目が終わった。」
フェーレ博士は目尻に涙を隠しつつ、呟いていた。
これまで多くの生命体を作り、そして失敗に終わっていた。その苦労と、これまでの非人道的な行いをした己への断腸な思いの表れでもあった。
もう、いいだろう‼ 終わりだ!これ以上は耐えられない。
なぜ、ここまでする必要がある!?もう、この国は終わりだ。滅んだほうがいい‼
帝国に対抗するための兵器を人間で作るなんてどうかしてる……
いや、この研究に加担している私の言えたことではないか……
フェーレ博士は、この国の人の異常差に絶望を見ていた。魔術、魔法を極めるためには何でも行う。非人道的な行いだって当たり前なのだ。これが帝国に追い詰められた国の成れの果てだった。
この研究の責任者であるフェーレ博士は赤子を抱え、この国の頂点に立つ総帥に報告しに、この国を統べる総帥の屋敷の廊下を歩いていた。赤子は博士の腕の中で静かに寝息を立てて眠っていた。この無垢な赤子の症状を見て博士はさらに罪悪感を感じ、赤子に悲痛な表情を赤子に向けるのであった。
会議室の前で総帥の部屋の入室の許可がおり、入室した。部屋は円を描くようにこの国の重鎮が円卓を囲んでいる。その中央に総帥が机に肘を置きながらこちらを見据えている。
「総帥、研究は成功いたしまた。これがその兵器にございます。」
「おーやっと出来たか。それで、いつ頃導入の目処がつくのか?」
「成長速度も速いため、およそ半年には戦場に送り出せます。」
「ふむ…半年か。それまで開戦を長引かせねばならぬな…」
「総帥よろしいでしょうか。」
総帥の左に座る知的あふれる風貌の外務大臣は冷静な表情で挙手をした。
「なんだ、外務大臣申してみよ」
「はい。半年ほどであれば、魔石や魔術を取引の材料として時間を稼いで見せましょう。」
「さすが外務大臣よく言った。ならば時間稼ぎは頼むぞ!!」
「御意。」
外務大臣は総帥の右腕として、この他国との取引を担っており、この国の魔法技術の向上に一役買っている。
「では、フェーレ博士!! 兵器はお主に任せる。半年後が楽しみだ。はっはっは」
「御意。」
会議室に総帥の声が響きわたる…
フェーレ博士は会議を出て、研究所に戻る中で彼は自分のこれからを考えるのであった。
どうすればいいんだろう…この国はもうダメだ…
この子を連れてこの国を出るか?それともこの子を使ってこの国を…
そんなことを思い、赤子を抱きながら博士は未来に絶望を抱えながら歩いていくのであった。
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