いつもの味

「どうですか…?」

緊張した顔で私を見つめてくる。

「…すっごく美味しい、コーヒーってこんなに美味しいんですね!」

「俺のコーヒー気に入って貰えました…?」

「すっごく気に入りました!」

「よかった、嬉しいな。」

ほっとしたような顔で微笑む枢木さん。

「じゃあ、俺もいただきますね。……ん!いつもの味だ。もしかしていつも柳井さんが作ってくれてたんですか…?」

「はい、いつも私が。先輩と比べたら全然なんですけど…。」

「俺、このコーヒー凄く好きで誰が作ってくれているんだろうって思ってました、家で作ろうって思ってもなんか違うし…。だからカフェが休みの時以外はよくカフェに行くんです。」

「…ふふふ、なんか嬉しいな。私が作ったコーヒーそんなに褒めてもらえるなんて…。」

「また、ここでも、カフェでも作って貰えますか?指名とか出来たら良いんですけど…。」

「わわっ、指名とかしなくても大丈夫です!私が作りますので!」

「ありがとうございます、嬉しいです。」


顔が赤くなるのを隠すように、私は本に目線を落とした。


しばらく経って、帰り道。

「また、一緒に行きませんか?」

「もちろんです!」

「嬉しいな…。俺はこっちなので。またカフェで。」

「はい!待ってますね!」


あ、待って今勢いで 待ってますね って…言っちゃった…!!

うわぁ…恥ずかしい…!


枢木さんはニコニコと小さく手を振ってくれた。

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