ほんのちょっと甘めの。

「俺、本がたくさんあればあるほどたくさんの世界がある気がして。だから本が好きなんですよね。」

「本の世界って、なんか楽しいですよね。」

そんな事を言いながら、本を選ぶ。今日は時間があまりないから、1冊だけにしようって決めた。

枢木さんも1冊だけ。


枢木さんは本を持ち、どこかに行こうとした。

「どうしたんですか?」

「ここ、コーヒーが凄く美味しくて。おかわりも自由にしていいんです。」

「そうなんですね!甘めにする事って…。」

「出来ますよ。ミルクとか入れられます。好みで。良かったら作りましょうか?」

「えぇ、良いんですか…?」

「ちょっと待っててくださいね。」

コーヒーを作る枢木さんを見ていると、やっぱり年下になんて見えない。

私用の甘めのコーヒーを作ってくれているんだ。

そう考えると、心臓が飛び出してしまいそうなほどドキドキして。夢みたいで。

「よし!出来ましたよ。これが口に合うと良いけど…持っていきますね。」

「ありがとうございます、あのっ、枢木さんの分、私が作ってもいいですか??」

「ほんとですか??凄く嬉しいです!ぜひお願いします。楽しみにしてますね!」


楽しみにしてますね!って言った枢木さんの笑顔を思い出しながら、彼の好きなコーヒーを作る。

彼はブラックが好きだ。だから何も入れなくても良い。でも私はいつもほんのちょっと甘く作る。

気付くか、気付かないかくらいだけど、それが私のこだわりだった。


出来上がって、持っていくと

ありがとうございますっていつもの笑顔で。

あぁ、やっぱり好きだな。


席に座り、

「枢木さん、いただきます。」

と言ってからコーヒーを1口飲む。

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