コーヒー

まる

惹かれた理由

今日もあの人は来ていた。窓際の席でコーヒーを飲みながら読書をしている。

大人っぽくて、かっこいい人だった。一見笑わなさそうに見えるが、コーヒーを持っていくと

「ありがとうございます。」

と柔らかく微笑んでくれる。

いつもコーヒーしか飲んでいない彼の真似をして今日の、休憩中はいちごみるくからコーヒーに変えてみる。

「あれ、美愛みあちゃんコーヒー飲むの?」

「永井先輩、お疲れ様です!」

「美愛ちゃん、大人への第1歩だねぇ!」

「もう!私は子供じゃないですよ〜!」

そう言いながらコーヒーを1口飲む。

「にっっが!!」

「待って、それブラックじゃないの??あははっ!」

「あはは…、そうみたいです…。」

先輩は笑いながらそりゃ苦いよ〜!って。


あの人はやっぱり大人だった。こんな苦いの飲んでるなんて!

「んも〜…コーヒー飲めるようになってやる!!」

「そんなにコーヒー飲みたいの?!私が作ってあげよっか?飲みやすいやつ!」

「いいんですか?!ありがとうございます!」

「にしても…美愛ちゃんがコーヒー飲みたいなんて言い出すの、珍しいね?」

「ん〜…、なんかコーヒー飲めたら大人になれるかなって。私、大学生だし…。大人になりたいんです!……あとは一緒に飲みたいなって人が居て……。」

「一緒に飲みたい人?あぁ…、もしかして…?」

「ち…違いますよ!休憩終わるんで行きましょ!!」

「あ!そうだね!」


彼は、まだ、本を読んでいるみたいだ。

「美愛ちゃん、一緒に飲みたい人って、あの人?」

小声で先輩に聞かれる。

「ずーっと見てるでしょ?可愛いから許すけど。」

私は恥ずかしくなる。無意識に見ているみたいだ。


私の頭は彼のことばかり。

考えないようにしてても、考えてしまう。

いつの間にか、彼で染まってしまった。


ぼーっとしていると、彼が歩いてきて

「ごちそうさまでした。」

と柔らかい笑顔で言ってから、カフェを出ていった。普通なら、何も言わず出ていくところだと思うけど…。そういうところに、私は惹かれたんだ。

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