第17話 ビデオを開くと…
研究所に返ってくると、父と旧知だった教授が待っていた。
「おや、栞くん。ようやっと帰ってきたのかい。お父上のようにこのまま帰らないかと思って寿命が縮んだじゃないか。年寄りに心配をかけないでくれ」
「ごめんなさい、斎藤教授。でも、朗報があるんです。ようやっと見つけました。星霜遺跡の真実を」
「おおっ。本当かい。それは素晴らしい」
斎藤教授の反応に私は手応えを感じた。やはり、フェイさんの言っていることは必ずしも当たっているわけではなかったのだ。
現に、教授は話を聞いてくれようとしているではないか。私は必ず図書館の意志に反すると改めて心に誓い、意気揚々と教授に撮ってきたビデオを見せることにした。
「そんなに落ち込むでない。声は入っているわけだから、何かしら映していたというのは伝わってきたぞ。データの不具合だったのかもしれない。もう一度撮りに行けばよいではないか」
そう結果は惨憺たる状態だった。プロジェクターに映し出された画面は真っ黒だったのだ。入っているのは私の声のみ。フェイさんやアイが喋っていた筈の部分はノイズが入りとても人が喋っていたようには見えなかったのだ。
「栞くんが一生懸命お父上の遺志を継いで懸命に研究してきたことは、私が一番よく知っている。星霜遺跡に辿り着けただけでも僥倖じゃないか。親子の願いが報われたんだ。この先も調査し続ければ必ず証拠を見つけられる」
斎藤教授は喜びがひとしおだったゆえに、落ち込む私を懸命に励ましてくれた。あんなに奇跡的な出会いをしたのに、動画のデータが欠損しているなんて。フェイさんの言ったとおりだった。底なし沼に叩き起こされたような気分であった。
が、唯一の救いは教授が私のことを信じてくれていることだ。確かに、こんな状況で誰も信じてくれなかったら絶望してしまうに違いない。
「……ありがとうございます」
「少し、休憩したまえ。ずっと潜って調査していたのだから疲れているに違いない」
教授は私にそう優しく声をかけ、研究室を出ていかれた。
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