第15話 フェイのアドバイス
「わかっています。あなたは私と同様愚かな選択を選ぶはずです。しかし、それも司書となるための選択です。先ほどはおすすめしません、と言いましたが
むしろあなたに選択しない余地はありません。なので、気休めになればよいですが一つアドバイスを申し上げます」
まるで私のこれからの行動を知っているかのような発言が多少癇に障る言い方ではあったが、それはおくびにも出さず話を聞き続けることにした。
「私自身もはっきりと見たわけではありませんが、この図書館には意志があります」
「意志、ですか」
「ええ、信じ難いでしょうけれども。そして、それはまだ存在を知られることを望んでいません」
「知られることを……望んでいない」
「私も先代の司書にそう教わりました。『図書館は知られることを望んでいない。ならば、生きる人々が知ることはない』と」
とても神秘的な話だ。図書館自体に意志があるなどと。夢物語の様であるがそれもまた図書館の魅力なのかもしれない。図書館内部が何十億年前にできたとは思えない輝きは、その生命力に由来するのだろう。
そんな感動する感情とは裏腹に対抗心が私のなかに蝋燭のように僅かに燈った。そうつまり、負けてなるものか。
「ご忠告痛み入ります。それでは、もう少し図書館内を探索したら一度帰りますね」
「ええ。どこでもご案内いたしますよ」
そう言って先ほどの残酷な忠告は何処へ行ったのか、その後は穏やかな時間が過ぎた。書架はそれぞれ世紀別に分かれているらしく、私の知的好奇心を埋めてくれる、いやそれ以上の溢れかえりそうなほどの知識の宝庫だった。
それぞれの文献は制作されると同時に、最初に見かけた巨大な球体から出現するのだそう。フェイさんもこれについては詳しい仕組みを知らないらしい。あの、巨大な球体はこの図書館の心臓のようなもので、管理に欠かせないものらしいが、操作できるのはアイだけだということだ。
因みにアイに尋ねてみると綺麗な笑顔で「企業秘密よ」と言われてしまった。
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