第12話 図書館を案内される
「話が逸れてしまいましたね。恐らく説明だけでは納得できないでしょうから実際に図書館を案内いたしましょう」
彼はまた有無を言わせないように、私の返答を待たず立ち上がり目的地へと向かっていく。
後ろをついていきながら視線を彷徨わせていると、本棚に不思議な記号が刻まれていることに気が付いた。おそらく何かしら判別するための記号なのだろうが、何が書かれているかちっともわからない。
「あの、すみません。本棚に刻まれているあの記号は何ですか」
指さしながら問うとフェイさんはアイと目を見合わせ意味深な会話をする。
「流石、アイが認めた子ですね。まるで、自分の役割を理解しているようです」
「何当たり前のことを言っているのよ。この私よ? 常に優秀な人材を選別するなんて訳ないわ」
「失礼。その文字はいつの時代でどんな書籍が収められているか書かれているのですよ。ただ、今の司書は私ですからね。私が使用していた言語に基づいて書かれておりますが」
「それは、司書が変わればこの記載はその人の母語に合わせるということですか」
「ええ。なので、例えばあなたが此処の司書となれば日本語表記に変わります」
なんて便利なシステムだろうか。確かに、高度な知的生命体によって作られたというのは本当なのかもしれない。
「さて、それでは一番私の説明しやすい私の時代の所を見に行きましょう」
連れてこられた本棚にもビッシリと本が敷き詰められており、さきほど本棚で質問したような記号と同じような見た目の文字で埋められていた。
フェイさんの時代は本の形状は特に変わりないが、縦書き左書きのようだ。流石に本の内容は分からないので図説のようなイラスト付きの本を眺めることになった。
人類史の本では、全体的にフェイさんのように肩幅は広いが腰にかけて細くなっていくという骨格が当たり前の様だった。動物はやはり地球上ということもあって似たようなものが多かったが伝説上の生物のように、現代の様々な動物の要素を併せ持つ生物も数多く見られた。
最も視覚的にも衝撃を受けたのはやはり文化面である。洋服だったり食生活だったり建造物だったりと上げだしたらキリがないが、どことなく現在の文化と通じるものもあるがやはり決定的に違う。
もし、このデザインを単体で見たら今の人はへんてこりんだと思うに違いない。しかし、文献で見てみるとその意匠に一貫性があるため文化であると理解できる。
本当に地球には別の時代にはあったんだとようやっと理解出来た気がする。そう思えた瞬間一気に私の体に好奇心が駆け巡った。こんな膨大な書籍全てを解読することが出来たらどれだけの新発見があるか想像するだけでたまらない。
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