令嬢の執事に憑依したけど体が言うこと効かない

自由人

第1話 悩みのタネ

異世界転生

それはおそらくオタクなら聞き飽きた単語だろうが、好きか嫌いかは分かれるだろう。

ある種の憧れを持つ人もいるかもしれない。

そんな異世界転生に今、俺は合っている訳だが少々事情が特別だ。

転生したけど女神に一度も会ったことがないとか、チート能力を持っていてないとかそんなんじゃない。

なんなら俺の役割は非戦闘員だと思われるし、そんなのは些細なことだ。

生きているだけありがたいと思っている。


なら、一体何が特殊か?

それは…。


「や、止めなさい!お父様に…!」


ここは公爵令嬢様のお部屋

明らかに高そうな家具やふかふかのベッド、シャングリラも置かれており、この家のデカさが分かる。

そんな部屋で執事であろう俺はその令嬢様に壁ドン+顎クイを実践している。


「いえ、止めません。あなたがこんなにも美し過ぎるから!この私の心を掻き乱した。私は今、貴方様の虜です。しかも、貴方様は口では止めろと仰っていますが本当は嫌ではないのではありませんか?」


自分で言っといて何だこのくっせぇーセリフはよ!

ああ、自分の意思とは関係なく作られていく黒歴史よ…。

しかも、状況的にはそうだけど顔近いし!

美人だから悪い気はしないけど!

そんなことが頭を過ぎったその時微かではあるが足音が聞こえた。

そして、ノックの音がする。


「おーい。何をしている?」


「はい、旦那様。空いておりますよ」


それだけ答えると俺は壁ドンを解除して彼女から体を離す


「なんだ、着替えも済んでるじゃないか。じゃあ、下に降りてご飯にしよう」


「かしこまりました」



特に体が近いことに違和感を感じない辺り、俺は主から信頼されていることなのだろうか?

まぁ、あの状況見られたらクビだわな。

助かったような助かってないような…。

そんなことを考えていると俺の体は動き出す。


「邪魔に入られましたね…。今は手を引きましょう。ですが、貴方様を必ず捕まえて見せますよ、お嬢様」


そう言って俺はドアを開けて出ていく


「はぁー…。」


俺は周りに誰もいないことを確認してからため息をつく

お嬢様の目の付かない範囲ならどうやら自由らしい


「異世界転生よりもどういう身体なんだよ、これは」


そう、今俺が頭抱えてるのはこの身体

どうやら俺はお嬢様の前ではキザになる人物に転生したらしい

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