(三)―5

 福山たちはそこを進んで行くと、該当のビルの隣のビルの側面から表へと出られるようになっていた。ただ、表への入口は鉄の扉が設けられていた。そのドアのノブを福山が回すと、鍵が掛けられていた。ここは袋小路になっていた。ともかく、フェンスをよじ登り逃げられるかもしれなかったので、ここの曲がり角に身を隠すことにして、無線で位置を知らせて待機することにした。

 身を隠して何分経ったのだろうか。随分長いこと待っている気がした。肝心のキャバクラが入るビルの方はよく見えない。そもそも夜である上に、外灯もないところであった。福山たちがいる場所は、居酒屋のちょうど裏なのだろう。さっきから揚げ物を揚げる音が聞こえてきた。油の匂いのこもった空気が福山たちの頭上にあるダクトから切れ目なく吹き付けてきて不快だった。


(続く)

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