(二)―8

 被害者の親族となった福山も、この日の捜査会議に出席した。会議が終わり解散した後、捜査員が部屋の外へ次々と出て行く中、福山は捜査本部長に呼び止められた。家族のこともあり、捜査から外れるようにとのことだった。親族が亡くなったわけだから忌引きを取ることがもちろんできる。それに本人の精神状態も心配された。そういう配慮であった。

 しかし、福山はこれを固辞した。確かに家族を失ったのは大きな悲しみであるが、同時に自分は捜査官である。それに家族のためにも犯人を逮捕しなければならない。それが二人への手向けになる。そういう理由からだ。

 福山の目の下の隈を見て、せめて仮眠を取れと本部長は指示した。しかし福山はそれも強い口調で断り、部屋を出て行った。その時、福山の目には普段とは違う強い眼光が見えるように本部長は感じた。


(続く)

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