小さな箱に夢いっぱい

 好きな曲の収録された,CDを買った。


 愛用のプレイヤーにデータを転送して,手持ちでいちばん良いヘッドホンを用意して。

 お目当ての1曲に,聞き惚れる。

 期待して再生した他の曲は,いくつか聞き流して止めた。

 お目当ての曲で,リピート設定。


 小さい頃,週刊漫画誌を,こういう読み方をしていて怒られたことがある。

 毎日音楽を聴くのに,音楽の話についていけない。


 好きなアーティストも,好きなジャンルも,特にない。

 けど,プレイヤーはもうデータいっぱい。

 プレイリストは,わたしの宝箱。

 邦ロック,洋ロック,ポップミュージック,ミュージカルの劇中歌,民謡,ジャズ,ヒップホップ,ボーカロイド,アニソン,クラシック,お気に入り映画のサウンドトラック,よくわからないやつ諸々。

 元気をくれる詞。

 自然と口ずさむメロディー。

 腹の底を打つ音。

 どこまでも,沈めてくれる感触。


 ”好き”を呼び分けるなんて,野暮でしょう。

 わたしにはできない。

 そこに言葉は存在しないから。


 わたしの好きな曲を作ったアーティスト。

 わたしの好きな曲が属するジャンル。


 それ以上は興味がない。


 心ゆくまで,音楽に浸るだけ。

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