第2話 魔法使いの寮

「あーあ、どうするかなー」

 法学部だと思って入ったら魔法学部でした、なんて冗談じゃねえ。

 甘ったるい缶コーヒーを飲みながら退学するかどうか考えていたら、緑の服を着たお兄さんが寮の前でウロウロしているのを見つけた。

「すみません、神秘大学の学生の方ですか?真保塚井様をご存知ないですか?!」

「僕ですが」

「ああ良かった!お荷物運び込みますね!」

 いけね、荷物が届くことを忘れてた。そうだ、今日からこの寮で生活するんだ・・・魔法学部に通いながら。

「お客様大丈夫ですか?」

「え、ああ、大丈夫ですよ」

 ダメだダメだ。退学するにしろ、ひとまず今日は引っ越し作業をしないと。


 背丈よりも大きい鉄門と、綺麗に刈り込まれた植え込みに守られた、巨大な赤レンガの建物。さぞかし歴史があるのだろう。ああ、いやだいやだ。


 引越屋のお兄さんを連れて分厚い木の扉を開けると、いきなりしわくちゃのおばあちゃんが現れた。


「新入生か。すぐどっか行きそうな顔だね。ふん」おばあちゃんはそれだけ言うと、メガネをずり上げて奥に行ってしまった。



「真保様、お部屋はどこでしょうか?」

「13号室らしいですけど」

 歩くたびにガタピシ言う板張りの床を来客用のスリッパで歩く。白いカベには無数の落書きがある。さっきのおばあちゃんに案内してもらえば良かった。

「あ。あれです」


 白いプレートに手書きで13と書かれている。やれやれ。僕は薄い板のドアを開けた。


 もあんとしたアルコール臭。部屋の奥には、頭がボサボサでヒゲがボーボーの太ったメガネの男がいた。机の上にはカラフルな安酒の缶が大量に並んでいた。一分間ほど固まっていただろうか。

「誰?」

 というメガネの声で我に帰った。

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