デリカシーの無い先輩

「ウェルカムトゥマイハ~ウス!」


放課後、一度家に戻り、再度学校に集合。

そして、三人で、モモ先輩の家に向かった。


「ほら。上がって上がって?」

「お、お邪魔します」

「お邪魔します」


俺は、何度か来たことがあるので、多少は慣れているけど……。

犀川は初めてだから、結構キョロキョロしている。


モモ先輩の家は、高級マンションの、高層階。

いわゆる、金持ちしか住めないような、とんでもない家賃の物件だ。


「どうしたの? 犀川ちゃん」

「いや……。すごいお家だなと思って」

「そうかなぁ」


モモ先輩は首を傾げている。

あまり本人は、金持ちの自覚が無いから怖い。


「適当なところ、座ってね。あ、荷物は、一応一人一部屋、空き部屋があるから、そこに置いてくれていいよ?」

「空き部屋……」


犀川が、絶句した。

そんな犀川の肩に、モモ先輩が手を回す。


「あれあれ~? もしかして、犀川ちゃんは、歩夢と一緒の部屋が良かったとか?」

「ち、違います! あんな変態と一緒の部屋なんて、絶対嫌!」


そこまで言わなくても……。


「ていうかさ~。私、いつまでも犀川ちゃん犀川ちゃんって、なんか、冷たい感じするから、あだ名とかあるなら、そっちで呼びたいなぁ」

「あだ名……。いや、特にないですね」

「ドス川があるだろ?」

「あれはあだ名じゃなくて、悪口」

「ドス川?」

「ドライアイス犀川の略です。こいつ、堅物だから、教室からすぐに、エロを規制したがるんですよ」

「そうかそうか。そんな犀川ちゃんが、ついに自分も、そのエロになっちゃったわけだ」

「……」


犀川が、少し沈んだ表情をした。


「あ、ああぁいやいやいや! これはさすがにダメだった! ごめん犀川ちゃん!」


慌てて、モモ先輩が撤回するが……。

うん……。先輩のことだから、いつかはこういうやらかし、すると思ったけど。


「私、やっぱりエチエチですか?」

「え、エチエチ?」

「エロいって意味ですよ。先輩」

「なるほど……」

「胸、でかくなっちゃったし……。服とか、下着とか、全部買い直さないといけなくて、家族にも迷惑かけてます。……こんな体、なりたくなかった」


犀川の表情が、暗くなってしまった……。

すると、モモ先輩が……。

優しく、犀川の背中を撫で始めた。


「ごめん……。私さ、デリカシー無いから……。ムカついたら、ボコボコにしていいからね?」

「ボコボコにはしませんよ……」

「じゃあ、ベコベコ?」

「ベコベコにもしません」

「そのおっぱいで包み込んで、呼吸をできないようにするとか……」

「しません!」


全く反省してないな。この人……。

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