モモ先輩のアシスト

怒った犀川は、部室を出て行ってしまった……。

付き添いで、文月先生が向かったので、多分大丈夫だと思うけど。


残されたのは、俺とモモ先輩の二人だけ。


「ねぇ歩夢」

「なんですか?」


いつも通り、やたら近い距離感で、モモ先輩が話しかけてきた。


「歩夢さ、犀川ちゃんのこと、好きでしょ」

「……ぶぇっ?」


図星すぎて、変な音が出てしまった。


「やっぱりそうなんだ~! 歩夢わかりやすいなぁ~!」

「い、痛いです。先輩」


モモ先輩が、バシバシと俺の肩を叩いてくる。

まだ、俺と犀川のやりとりを、少ししか見てないはずなのに……。


俺、そんなに顔に出てたのかな。


「具体的には、どこでわかりました?」

「私がさ~。犀川ちゃんの胸をボインボインしてる時? それを見る目が、ただの変態じゃなくて……。なんか、愛のある変態の目線だった」

「なんですかそれ……」


変態であることに、変わりはないらしい。


「あはは! ねぇ歩夢。手を繋がない?」

「えっ。なんでですか?」

「い~から! ほら!」


モモ先輩に、手を握られてしまった。

先輩の手……。小さくて、柔らかいなぁ……。

って、おいおい。

武藤歩夢。お前、それは浮気だぞ。浮気。


「なんで急に、手を?」

「これ、犀川ちゃんのおっぱいを揉んだ手だよ? つまり……」

「……俺は今、犀川のおっぱいを揉んでいる。ということですか?」

「その通り! 賢い!」

「いや、アホなこと言わないでくださいよ」

「急にマジレス?」


モモ先輩が、ため息をつきながら、手を離した。


「でもさぁ~歩夢。可愛い可愛い後輩に、好きな人ができたっていうのはさぁ~。すっごく喜ばしいことだし、ちゃんと応援したいって思うんだよ。私」

「……本当ですか?」

「な~にその目! せっかく、童貞で、交際経験の無い歩夢を、手助けしてやろうと思ったのに!」

「どっちも決めつけじゃないですか。俺は……」

「……俺は?」

「……確かに、どっちも無いですけどね」

「でしょう?」


なんか悔しい。事実なんだけど。


「だから、私がさ……。早速今日から、色々手伝ってあげるから! 恋のキューピッドってやつ?」


言いながら、モモ先輩が、弓を引く動作をした。


「ほら。私、一人暮らしじゃん? 今日泊まりにおいでよ。明日は休みだし。ね?」

「良いんですか? そんな。女子が一人暮らししてる家に……」


しかも、男女配分は……。

男、俺一人。

女、犀川、モモ先輩。


こんなハーレム状態、許されるのか?

青年の教育にうるさい団体から、苦情が来るんじゃないのか?


「そもそも、犀川がオッケーしますかね。それ」

「あの子、アレで結構ちょろいから、治療の一環で~す! って言っちゃえば、多分来てくれるよ」

「先輩……」

「で、どうするの? 可愛い可愛い後輩を想う、先輩の優しいアシスト……。黙って受けとく方が、きっとハッピーになれるよ?」


俺は……。


静かに、首を縦に振った。

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