第360話 子供達の思い・・・

ツトムとミサトが家に帰るとお通夜のように暗かった、

「どうしたの?練習してきたんじゃないの?」

母のマリナが二人に聞いてくる。

二人は母に説明した。

「酷いと思わないか、なんで治してくれないんだ!」

ツトムは落ち込んだ後、怒りがわいてくる。

好きなサッカーでプロになる夢があった。

それを否定された。

そして、治る道があるのに治してくれない、その事が腹立たしかった。


「ごめんなさい・・・うちの家にそんなお金はないわ・・・」

マリナは、ドイツ代表になるような人を一年拘束するお金は到底出せないと思った。

「なんで母さんが謝るんだよ、アイツが治せばいいだけじゃないか!」


「報酬も無しに治してくれる人がどこにいるの?リョウさんとの繋がりなんてお父さんが車で送っただけでしょ?

練習を見てくれただけでも破格なのにこれ以上求めるの?」

マリナの言葉にみんなが黙る。


そして、リクが帰宅したのでツトムはリクに相談したが・・・

「それは図々しいお願いだ、他人の子供、しかも、生活には支障がないケガを治すのに一年棒に振ってくれなんて、どうやって頼んだらいいんだ。」

「でも、俺がプロになれるかどうかの瀬戸際なんだよ。」

「ツトム、よく考えなさい。うちにそんな金があると思うのかい?」

リクの家は良くも悪くも普通の家だ。

リョウを雇うには何千、いや何億の金がいるだろう。

そんな金は出せる筈がない。

「父さん・・・」

「不甲斐ないと笑ってくれてもいい、だが無理なものは無理なんだ、プロの道はあきらめてくれないか?」

ツトムもそれ以上強く求める事は出来なかった。


一方、ユウヤと四人の少年は意気投合して、ファーストフード店で話し合っていた。


「出会いを祝して乾杯。」

お互いサッカー少年同士、話が弾む。そこでユウヤはポジションについて相談してみることにした。

「なあ、俺ボランチを薦められてるんだけどどうしたらいいと思う?」

「それゃボランチやるべきじゃね?」

「ああ、リョウさんの見立てが間違っている可能性は低いだろ。」

シンジとタツヒコはあっさりリョウを肯定する。


「いや、俺は今までFWしかやったこと無いんだ、今更ボランチで代表目指せと言われてもなぁ。」

「てめぇ嫌みか、俺なんてなぁ!」

「よせシンジ!すまん、シンジはそこまで評価されなかったんだよ。」

タツヒコはシンジを止めつつ、ユウヤに説明する。


「えっ?」

「動きはいいと誉められたけど、リョウさんから見たら才能が足りないんだろう。」

「それなら何で此処に?」


「そりゃサッカーが好きだからだよ、リョウさんの指導で少しでも上手くなって上のカテゴリーを目指せるなら少しでも上に行きたいじゃないか。」

「シンジは強いね。」


「みんなはいいよ、僕なんてケガの影響でフルで動けないんだから。それに才能については何も言って貰ってないよ。」

ヒカルは悲しそうにいう。


「ヒカル泣くなよ、まあ、俺達も色々抱えているって事だよ。」


「そうなんだ・・・」


「それにな、俺達全員が代表入りしたらリョウさんに恩返しになると思わないか?」


「シンジそんな事考えてたのか?」


「そりゃ、俺達教えて貰っても何もリョウさんに返せないじゃないか、それならリョウさんが誇れるような選手になって、記者に言ってやるんだ、俺達を育てたのはリョウさんだって!」

ユウキは少し笑いながらシンジの話にのる。

「面白いね、俺はのるよ。でも、僕はバロンドールになってから言いたいかな?」

「てめぇ嫌みか!」

シンジがユウキに突っ込む!

「いいな、シンジ以外で代表入りして、シンジを悲しませてやろう。」

「タツヒコ、鬼な事を言うなよ!」

「僕も早く治して、みんなに追い付くよ。」

「ヒカルも頑張れよ。」


四人の思いを聞いて、ユウヤも決断する。

「じゃあ、俺がボランチでチームを支えてやるよ。」

ボランチとして、みんなと共に代表を目指す覚悟をしたのであった。

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